日本経済新聞 1997年7月1日より転載

社会へ味方はパソコン

障害者(チャレンジド)の就労支援へ講座

「同じ土俵」目指して集まる

パソコンやインターネットの急速な普及が、障害を持つ人たちの社会参加を後押ししている。

脳性マヒで手足が不自由な中村亜矢子さん(25)はキーボードをあごと鼻先で操作する。2年前、15社の就職試験を受けたがすべて不採用だった。「やはり通勤や会社での生活は無理、パソコンを使った在宅勤務の仕事で自立したい」。中村さんはシステム開発など短期の仕事を時々受けているが、安定した長期の仕事が欲しいという。


「パソコンは世界を広げてくれる道具。手足は使えなくてもキーは打てます」
と在宅勤務をする中村亜矢子さん(東京都町田市)

大阪市内に本部を置く、障害者の就労を支援する市民団体「プロップ・ステーション」では、6年前から障害者向けのパソコンセミナーを開いている。受講希望者は年々増え、前回は定員40人の募集に78人の募集があった。卒業生の1割がパソコン教室講師、ホームページ制作などの職についている。


パソコン教室講師の岡本敏巳さんは足で巧みにマウスを操作して教える
(神戸市中央区)

同団体では障害者と言わず「チャレンジド」という言葉を使う。試練に立ち向かう人たちという意味だ。


多くのボランティアがサポートする「プロップ・ステーション」の障害者向けパソコンセミナー
(大阪市中央区)

「同じ土俵に立たせてもらえば、健常者に負けないチャレンジドはたくさんいる」と同代表の竹中ナミさん(48)。今ではIBM、日本電信電話(NTT)、マイクロソフトなどの大手企業と業務提携している。


駅員に車いすを持ち上げてもらい通勤するパソコン教室講師の吉田幾俊さん
(JR大阪駅)

日本IBMの奥野裕志プロジェクト担当は「企業は障害者との接点が不足していて、どこまでの仕事が可能かつかみにくい。プロップのよう調整組織は不可欠」という。

障害者にとって、パソコンの向こう側に広がる世界は厳しいが、明るい。

写真部 小園雅之

プロップ・ステーションのホームページ。アドレスは http://www.prop.or.jp/

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