internet@ASCII 1997年6月号より転載

インターネットとChallenged

インターネットは打ち出の小槌。重度障害者の社会進出を支援するナミねぇのパワフルエッセイ開始!

竹中ナミ(nami@prop.or.jp):コンピュータネットワークを利用することで障害を持つ人々の社会的自立を目指すNPO「プロップ・ステーション」を'92年4月に設立。会員から「ナミねぇ」と慕われる組織の大黒柱。

vol.1 世にもおかしな!?NPO

はじめまして!ナミねぇです。大阪でプロップ・ステーションという「これぞコンピュータネットワーク活用法じゃ!」というNPOをやってます。今月からコラムを書かせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いします。

さっそくですが、NPOってご存じですか?NPOというのは「非営利組織」のことで、お金儲けが目的でない事業をする組織です。お金儲けが目的やないので、運営は「たくさんの人の自発的かつボランタリーな参加」で支えられております。

で、そのNPOプロップ・ステーション(以下プロップと略)のボランティアさんはどんな人かというと、「コンピュータ好き」あるいは「コンピュータの達人」、「DTPの専門家」はたまた「ネットワーク技術者」など、趣味や仕事でコンピュータを使ってる人たち。それはもうたくさんの老若男女。障害のある人、ない人が入り交じって活動しています。

え?障害のある人は「ボランティアしてもらうんでしょ」って?いえいえ、ボランティアするんです。プロップのchallenged(チャレンジド:障害を持つ人を表わす新しい米語です)には、「自力ではベットから起き上がるのも無理だけど、コンピュータネットワークを使って<在宅で>仕事とボランティア・スタッフをやっている」という人が何人もいます。「仕事とボランティアもどっちもできるchallenged」というのは、プロップでは、なぁんも不思議やないんです。

そのchallengedを含むボランティアさんたちが「コンピュータという不思議の箱」を媒体に「あーだ」「こーだ」「そーだ」「ほんでどうした」「ほやから言うてまっしゃろ」「かないまへんな」などと、ガヤガヤ、ワイワイ言いながら「コンピュータネットワークで日本が変えられるか」という実験をやってるのがプロップというNPOなのであります。

日本を変えるって、そないな大層なことが目的ですのんかって?はいな!!プロップのキャッチフレーズは「challengedを納税者にできる日本」っていいますねん。えらいたいそうなNPOでしょ。なんでこんなキャッチフレーズをつけたか、というのはおいおいお話しするとして、そういう目的のために何をしているかをまず、紹介します。

  • その1 challengedが、コミュニケーションや仕事のためのコンピュータ技術を身につけるセミナー
  • その2 身につけた技術を生かすためのコーディネイション(分かりやすく言うと企業への営業活動や、仕事の創出)
  • その3 在宅就労のシステムづくり(さまざまな企業との実験プロジェクト)
  • その4 主旨をアピールするための活動(機関誌の発行やホームページの開設。産官学の枠を越えたフォーラムの開催。ナミねえの「どさまわり講演」など)

大きく分けるとこの4つです。詳しくは,ぜひぜひホームページ(http://www.prop.or.jp/)を見てほしいと思います。何せスタッフの多くが外出の困難なchallengedなので、運営会議をはじめ、機関誌の編集会議、原稿集め、レイアウト作業、またセミナーのフォローアップなどなど、日常活動のほとんどにコンピュータネットワークを駆使しています。だから冒頭に書いたように、「これぞコンピュータネットワーク活用法じゃ!」という次第。

プロップのchallengedは、マルチメディアやインターネットを「打ち出の小槌」と呼んでるんよ(^^)技術の進歩が人間をより幸せにするためにあるとしたら、「五官や五感や脳みその延長線」として、技術をchallengedが有効に使うっていうのは、いちばん「生きた」使い方と言えるんやないでしょうか。それに、challengedが在宅でも仕事ができる社会って、女性や高齢者にもきっと仕事のチャンスがいっぱい生まれるんやないかとナミねぇは思います。もちろん「通勤できる人もみんなで在宅で」なんて言うてるわけやないので、念のため。

日本は、なんぼお金があっても足りへんような超高齢化社会に近づいています。1人でもたくさんの力で支えあう仕組みを一刻も早く作らんと大変なことになる!とみんな言うけど、「ほな、どないしたらええのん」というと、う〜ん・・・・・・と腕組み。これこれ、のんびり腕組みなんかしてる場合ちゃいまっせ。これだけ発達したコンピュータネットワークを、そのためにこそ使ったらええんちゃいますのん!?高齢社会に役立つ仕組み、イコール、challengedの社会進出という発想は、結構コロンブスの卵やないかしらん?

さて、<しゃべり>は大の得意で「口から生まれたナミねぇ」と皆に言われる私ですが、<書く>のはまだまだ修行中。でも皆さんにお伝えしたことがいっぱいあるので頑張って書きます。次回からは、NPOプロップの活動が、どんな人たちと一緒に、どんな風に広がって来たか、インターネットはそれにどんな力を与えたか。ほんまにキャッチフレーズのような日本を作ることができるんか?・・・・・・などなどを現在進行形の形で書いていきたいと思います。

ご意見、ご感想など、どしどしちょうだいね。待ってます。

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