産経新聞 1996年9月26日より転載

チャレンジドの風

非営利組織法の制定を

平田篤州

うめ吉は32歳。プロップ・ステーション(代表、ナミねぇ=竹中ナミさん)のスタッフ。高校1年の成人式の日、ラグビーの試合中にけい椎を損傷した。自宅は宝塚市。

車いす生活だが「車いす専門」はきらいだ。阪急電車の西宮北口駅。エレベーターには「車いす利用の方、それ以外の方もお使いください」とある。
「お年寄りや妊婦さんも使っています。それが自然なんじゃないですか」

北欧に、うめ吉の思いにぴったりの言葉がある。

<ハンディキャパテ>

ベビーカーを押すママがバスに乗る時、ママはハンディキャパテである。おじさんが、パソコンの前に座る時、その多くがハンディキャパテ。つまり、人間はその折々に、ハンディキャパテになるのだ。
ナミねぇたちの言うチャレンジド(挑戦すべきことを神から与えられた人々)は、この概念と通じる。プロップの明るさと厳しさは「障害」を特別な目で見ていない点にある。

うめ吉は坂上正司さん。プロップの会員たちのパソコンネットの責任者で、ネットの通称名が「うめ吉」なのだ。
ナミねぇは、うめ吉について「私の漫才の相棒です」。もちろん、歩く広告塔のナミねぇが突っ込み。
そのコンビの「売り出し中のネタ」がNPO(非営利組織)法の制定だ。「任意団体では、契約を結ぼうとしても企業は相手にしてくれない。まず、非営利の団体に(法人格)を与えてほしい」

NPOには力がある。非営利の旗印のもとにさまざまな個性が集まる。異業種の交流ができ、ライバル同士でも情報を交換する。
「1日30万円も払わなくてはいけないような専門家にも、無報酬で話が聞けます」とナミねぇ。
プロップの法人格が認められれば、チャレンジドの在宅勤務の道も広がる。そんな漫才の筋立てだ。

24日夕、寝屋川市の女性から電話をいただいた。
「息子が(障害)を持ってます。プロップの連絡先を教えてください」
大阪市北区同心1-5-27 (TEL06-881-0041)。ホームページのアドレスは「http://www.prop.or.jp/」
最後に、チャレンジドを持つ、京都の水口克子さんが、プロップネットに寄せた一句を。

我が国も インターネットの 風薫る

ページの先頭へ戻る