産経新聞(朝刊) 1996年4月10日より転載

大阪の研修会に50社

インターネットで仕事できる

心身にハンディをもつ人の雇用を進めようと、大阪市北区西天満の梅田公共職業安定所でこのほど「障害者雇用促進研修会」が開かれ、在阪企業約五十社が参加。新しい雇用スタイルとして注目される在宅雇用の可能性などに関心が集まった。

障害を持つ人の就労については「障害者の雇用の促進等に関する法律」によって、一般の民間企業で1.6%以上という雇用率が定められているが、労働省の調べによると、約5割の企業が未達成のまま、重度障害者の就労については「まだ周知の段階」(同職業安定所)というのが現状だ。

その背景にあるのが、重度障害を持つ人の通勤の困難さや、トイレやスロープなど企業設備の改造にかかる費用。新規に障害者を常勤労働者として雇用する場合、障害者一人について450万円を限度に、施設整備費用の3分の2を支給するなどの助成金制度はあるが、積極的な障害者雇用に結びついているといえない。

そうした中で最近、注目を集めているのが在宅雇用の試み。大阪では、5年前にコンピューターネットワークを活用して重度心身障害者の就労支援に取り組む非営利団体『プロップ・ステーション』が発足。同団体が主催するコンピューターセミナーの卒業生から、コンピューターで受注、納品する重度障害者の在宅就労第1号も生まれている。

研修会では、プロップ・ステーションの竹中ナミ代表が、昨年12月から野村総合研究所と合同で行っているインターネットを使った重度障害者の在宅雇用実験などについて報告。

「インターネット接続にかかる経費や電話料金、マシントラブルへの対処といった課題はあがっていますが、従事者に障害があるという意味での問題は、何ひとつでていません。企業は障害を見るのではなく、個々の能力や技術にもっと目を向けてほしい。」と述べた。同時に知的障害があっても、入力だけなら間違いなく速くできる人を例に、個々の能力を把握して、障害を持つ人と企業のニーズをコーディネートする中間機関の必要性を指摘した。

また、研修会を主催した梅田公共職業安定所は「組織と個人との関係が能力主義に変わりつつある今、時間や場所に制約されない在宅雇用は、働く意欲と能力をもつ人材の発掘という意味でも、今後の障害者雇用の有力な形態になるのでは」とはなしている。

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