朝日新聞 1996年4月5日より転載

幅広い活動を守って

障害者支援の任意団体

大阪の任意団体「プロップ・ステーション」は、障害者がコンピューター技術を身につけることで仕事を確保している。その先駆的な活動は注目され、代表の竹中ナミさん(47)が国の各省から研究会の委員や講師に招かれ、調査研究の委託もされるようになった。だが、企業との共同事業や官庁の委託事業を受けていこうとしても、法人格がないため、契約に面倒な手続きが必要だ。

交通事故による頸髄(けいずい)損傷という重い障害のある堺市の山崎博史さん(31)は、毎日約4時間、自宅のパソコンに向かい、NTTに新規登録されたホームページを検索する。
仕事の目的は2つ。インターネットを使った商品販売システム「サイバーモール」(電子の商店街)の開発と、障害者の雇用開発。こんな共同実験を去年12月から野村総合研究所との間で続けている。

重度障害者の母親である竹中さんを中心に1992年に設立。障害者向けのコンピューター・セミナーを週2回開き、ホームページやデータベースなどソフト制作の仕事も請け負い、すでに卒業生10人が仕事に就いた。
だが、昨年度の収入は会員250人の会費と受講料、寄付など約370万円で、機材の購入でほとんど消える。活動そのものは、竹中さんやセミナー講師をつとめる約60人の技術者の無料奉仕と、メーカーからの機材やソフトの無料提供で成り立っている。

竹中さんは「法人格がない現状では活動の拡大は無理」という。たとえば、ある官庁から委託された「通信ネットワークづくり」は、いったん傘下の財団法人に委託され、それをプロップが下請けする形をとらざる得ない。
活動は福祉、雇用、コンピューター技術の開発など各官庁の守備範囲にまたがっている。

竹中さんはいう。「お役所にはない機能を発揮することが私たちNPOの持ち味です。行政機関の価値判断で活動が規制されると、その意義が半減してしまう。そうならないような法人制度をつくってほしい」

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