産経新聞 1995年12月22日より転載

重度障害者の在宅勤務を支援へ インターネット活用

野村総研と大阪の民間団体 半年かけ実験事業

民間ボランティア団体のプロップ・ステーション(大阪市、竹中ナミ代表)は野村総合研究所と共同でインターネットを活用した重度障害者の在宅勤務のための共同実験事業を開始した。

在宅の障害者とオフィスとの連絡などにインターネットを活用、障害者が情報アクセスを行う実際の業務を通して、障害者にリモートワーキングを依頼する場合の可能性や問題点などを探るのが狙い。

実験事業は仕事の指示や実務作業、報告などのすべてを原則としてインターネットを通して行っており、期間は来年五月までの六カ月間。
実験事業は、野村総合研究所が堺市と尼崎市に住む二人の重度障害者の自宅に通信機器などの接続環境を提供したほか、通信費も負担。障害者側は自分が所有しているパソコンとソフトウエアを使用してインターネットにアクセスして作業を行っている。

具体的には、障害者がさまざまなホームページを見物する“ネットサーフィン”を行い、インターネット上で公開されているオンラインショッピングやオンラインビジネス、地方自治体などに関するホームページだけを抽出。
該当するホームページを開設している企業などに対して、オンラインショッピングの商品やサービスの注文や支払い方法、業種、開始時期などの質問事項をインターネット経由の電子メールで送り、回答の結果などをリポートにまとめ、同総研に報告している。

実験に参加している堺市の山崎博史さん(三一)は「インターネットを使ったことがなかったので、当初は戸惑った。しかし、画像によるインタフェースが多いので、慣れれば作業しやすい。障害者の在宅勤務にはメリットが大きい手段だと思う」と感想を述べる。

インターネットなどの電子ネットワークを活用したリモートワーキングはオフィスへの出勤を前提としておらず、通勤手段の不備や居住する地域に適切な勤務先がないなどの要因で仕事の場を与えられていなかった障害者に在宅での仕事を可能にする雇用形態として注目を集めている。
竹中代表は今後の課題として「インターネットを活用した在宅勤務は日本の場合は通信回線や通信費用が高いなどの課題も多く、行政の助成が不可欠」と話していた。

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