ASAhIパソコン 1995年12月1日号より転載

支えられる人から支える人へ
大阪プロップ・ステーションの挑戦

中和 正彦

日本は、急速に高齢化社会を迎え、なおかつ少子社会。手厚い福祉を必要とする人が急増していき、それを支える層の負担が過酷なものになっていくことが懸念されている。こうした状況を見据えて、「障害を持つ人々を『支えられる側』から『支える側』へ」をテーマに活動を広げるNPO(非営利民間組織)がある。大阪のプロップ・ステーションだ。

代表の竹中ナミさんは、設立の趣旨を次のように語る。

「障害者手帳を給付されて福祉の対象とされている人でも、就労や社会参加に意欲的で、適切なサポートさえあればそれが可能になる、という人がたくさんいます。彼らは自立を実現することは、本人の生きがいにつながるだけでなく、彼らが納税者になって社会を支える側に回るということにもなるんですよ」

昨今、「障害者」という呼称は「障害になる人」という語感も与えることから、それに代わる呼称を模索する動きが出ているが、プロップ・ステーションでは「障害を持つ人」を表す新しい米語「チャレンジド(the challenged)」を使っている。そして、その社会参加のための格好の道具として、コンピュータと通信に着目した。

活動の大きな柱は、就労技術を身につけるためのパソコン・セミナーの開催、通信ネットの運営、会員障害者のための仕事の受注活動の場「プロップ・ウィング」の三つとなっている。

セミナーは、「98コース」と「Macコース」がある。いずれも期間は半年で、現在6期目。機器やソフトは最新鋭のもの。約80人が修了した。その資金源や企業の支援について竹中さんに聞くと、「いま企業は、単に『社会貢献』を考えるだけでなく、『社会責任』として障害を持つ人の雇用を考える必要に迫られています。でも、仕事ができない人では困りますよね。そこで『あなたの会社で欲しいような人材を育てるから、まず育てるところから応援してほしい』と頼んで回った。そうしたら、いろんな企業が支援してくれたのです。」という。

受講者には障害の重い人も多く、通学するのは週1回が限界。そこで、まずパソコン通信を教え、以後は草の根BBS「プロップ・ネット」で講習を補えるようにしている。同ネットは、この他、会員相互のコミュニケーション、機関誌「フランカー」の編集、組織の運営会議などにも使われる。阪神大震災の時には障害者の安否情報の媒体としても大活躍した。いまはインターネットにも接続し、情報交換の幅を広げている。

また、通信ネットに関しては、これとは別に、マッキントッシュやウィンドウズ・マシンの通信ソフト「ファーストクラス」を使ったマルチメディア対応の通信ネット「プロップ・FCネット」があり、さらにインターネットにホームページも開設している。セミナー修了者の在宅勤務の手段・窓口となる。その業務の受注活動を行うために設置した事務所が「プロップ・ウィング」というわけである。

問い合わせ先 :

プロップ・ステーション

TEL&FAX 06-881-0041
〒530 大阪市北区同心1-5-27
大阪ボランティア協会内

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