読売新聞 1994年11月29日より転載

海外と簡単に情報交換

インターネット利用広がる

150の国にまたがる情報通信網「インターネット」を使って日本のボランティアの活動内容を海外に発信したり、逆に海外のNGO(民間活動団体)の参加者募集情報などを収集したりする団体が増えている。画面上で簡単に情報を交換できるため、視野が広がり、国際的な協力体制作りにもつながるという。

国際的な協力体制充実へ大きな期待

不慣れな団体に技術指導

コンピューターのプログラム作成技術などを教えながら障害者の自立を支援している大阪のボランティア団体「プロップ・ステーション」は、今月からインターネットに参加した。「プロップ・ネット」という独自のパソコン通信ネットを持っていたが、海外の障害者とも連携して日本では得にくい情報を入手する必要を感じたためだ。

自分たちの会報の内容をインターネットで公開したり、欧米で開発された障害者のための支援機器情報などの収集を始めたりしている。労働省にも、インターネットに障害者求人情報を提供するように働きかけている。

代表の竹中ナミさんは「情報の収集だけでなく、自分たちの情報も英訳してどしどし海外に発信していきたい。インターネットを使った障害者の在宅勤務の可能性も探りたい」と話す。

コンピューターに詳しいメンバーがいないため、同じような活動がしたくてもできない団体もある。昨年4月、東京で発足した「市民コンピュータコミュニケーション研究会(JCA)」にはコンピューター関係の専門家などが加わり、コンピューターに不慣れな団体に技術的な支援を続けている。

JCAメンバーで主婦の吉村順子さんは「来年の春までには通信ネットの拠点となるコンピューターを設置して、国内のNGOの活動状況や9月に北京で行われる世界女性会議の情報などをまとめ、世界に発信していきたい」と意気込んでいる。

インターネットの事情に詳しい大阪大学工学部助教授の中野秀雄さんは、「欧米ではNGOも盛んにインターネットを活用している。日本ではまだ研究機関や企業の利用が中心だが、これからは市民グループなどがネットを通して国際的な活動を展開することも可能になるだろう」と予測している。

インターネット
世界各地のコンピューター通信網同士をつなぎ合わせた世界最大のネットワーク。現在、150か国以上、2千万人以上が利用していると言われている。

ページの先頭へ戻る