朝日新聞 1993年12月12日より転載

先生 教団復帰もう大丈夫

海遊館でパソコン授業

重度障害越え 女性教諭

事故で重度の障害を負いながら、教壇復帰を目指してリハビリに励んでいる兵庫県尼崎市立若草中学の理科教諭、曽我部教子さん(49)が11日、港区の海遊館で開かれたサタデースクールで授業をした。音声認識装置のついた最新式パソコンを使って、小学生たちに「生物の繁殖」について話した。久しぶりの授業は満足のいく内容ではなかったというが、「現場に戻りたい、という気持ちはどんどん強くなります」。新たな1歩を踏み出した手ごたえを感じていたようだった。


海遊館のサタデースクールで、ビデオ映像を見ながら授業をする曽我郎教子さん(右)

「焦点ぼけ」と自己採点


曽我郎さんの指導で、プランクトンを顕微鏡で観察する児童ら=いずれも港区の海遊館で

サタデースクールは、学校が休みの第二土曜日に開催。普段は海遊館の職員らが講師を務めているが、この日は特別講師として曽我部さんが登場した。

海道館の大水槽を眺められる「ビューイングルーム」で行われた授業には、小学校高学年の児童と父母計約20人が参加。曽我部さんの声に反応して大型モニターに映し出された図や写真が切り替わるパソコンを使って、視覚的な授業を試みた。

タラコ1グラムの卵の数を実際に数えて、魚がいかに多くの卵を産むかを実感させたり、鳥やサルは親の保護があるから出産数が少なくてすむことなどをビデオ映像を交えて説明。介護者の助けも借りて約一時間半、生命の厳しさと貴さについて話した。

曽我部さんは四年前、旅行中のアフリカで、乗っていた気球が落下して首の骨を折る大けが。首から下がまひ状態になり、休職していた。今年二月に復職が認められたが、まだ授業には出られず、研修を積む毎日だ。ワープロやパソコンで教材が作れるようにと練習に励んでいる。体力をつけていくのも課題だという。

この日の授業後、児童たちは「学校では教えてもらえないことがわかって、面白かった」と話したが、曽我部さんは「焦点がぼけてしまって。話の流れが悪かったかなあ」と、厳しい自己採点。だが、「信じたことに向かって努力すれば、必ず実現すると信じています。早く教壇に立ちたい」と熱意を語った。

パソコンの指導など曽我部さん復帰を支援しているボランティア団体「プロップ・ステーション」の竹中ナミ代表は「まだ機械の扱いにとまどいがあるようだが、慣れれば問題ない。中学校なら生徒の方から授業を支えてくれるはずだし、教室に帰るのは可能だと思います」と話していた。

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