郵便不正公判 「作文調書に署名要求」 村木被告 改めて無罪主張

読売新聞東京朝刊 2010年4月15日記事

 郵便割引制度を巡り、自称障害者団体「凛(りん)の会」に偽の障害者団体証明書を発行したとして、虚偽有印公文書作成などの罪に問われた厚生労働省元局長・村木厚子被告(54)の被告人質問が14日、大阪地裁で始まった。検察側は、村木被告の当時の同僚ら関係者の捜査段階の供述を根拠に、村木被告の有罪に自信を見せるが、同僚らは公判で供述を次々と覆しており、供述調書の「信用性」が大きな焦点となっている。

 弁護側の質問で、村木被告は「昨年6月の逮捕直後の取り調べの際、検事から『あなたは20日間の拘置後、起訴される』『私の仕事はあなたの供述を変えることだ』などと言われた」と説明。「組織として私を有罪にするという(検察側の)方針を感じた」と当時の心境を語った。

 村木被告によると、逮捕から数日後、取り調べ検事から「執行猶予が付けば大した罪ではない」などと言われ、自白を迫られたという。「私にとっては、公務員として30年間やってきた信用を失うかどうかの問題。その時も泣いて訴えた」と言葉を詰まらせた。

 「言ってはいないことが書かれた調書を見せられ、署名を求められたこともあった」といい、署名を拒否すると、検事が「これは作文です。筆が滑ったところがあるかもしれません」と言って書き直しに応じたこともあったという。

 一方、検察側は、当時、村木被告の上司だった塩田幸雄・元障害保健福祉部長(58)(13日、香川県・小豆島町長に無投票当選)や凛の会関係者が、村木被告の関与を認めた捜査段階の供述調書を証拠請求。来月にも、地裁が採否を決定するとみられる。

 被告人質問は15日も行われる。

 ◆公判証言巡り攻防 

 検察側は事件の発端について、凛の会元会長・倉沢邦夫被告(74)が2004年2月25日、かつて秘書を務めていた石井一・参院議員(75)を議員会館に訪ね、証明書の発行を依頼し、石井議員が塩田元部長に電話をかけて対応を頼んだことにある、と主張する。

 しかし、石井議員はその日、ゴルフをしていたことが証明された。塩田元部長も「議員から電話を受けた記憶はない」とした。

 捜査段階で村木被告からの指示を認めていた元係長・上村勉被告(40)も「証明書は独断で発行し、凛の会の別のメンバーに渡した」、同被告の前任係長も「指示は記憶にない」と証言した。

 弁護側は証明書の作成日も問題視している。検察側の描いた構図では、〈1〉倉沢被告が村木被告と面会して証明書の発行を依頼〈2〉村木被告が上村被告に発行を指示〈3〉村木被告が倉沢被告に証明書を渡した〈4〉時期はいずれも6月上旬―としており、起訴状でも、証明書の作成日を「04年6月上旬」と認定。

 ところが、証明書を記録した上村被告のフロッピーディスクの日付は「6月1日午前1時20分」。この記録が正しければ、検察側の構図と矛盾することになる。加えて、倉沢被告も、手帳を確認したうえで「(6月1〜10日の間は)厚労省に行っていない」と証言している。

 それでも検察側は、「迫真性がある」として、倉沢、上村両被告らの捜査段階の供述は公判証言より信用できると主張している。

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