上村勉証人の被疑者ノートの内容が公開されましたので、ポイントをご紹介します。

2010年3月3日

ナミねぇです。上村元係長の、被疑者ノートのポイントを公開します。読み進むうちに、胸が痛くなる思いです。このようなことが、今の日本で現実に起きている、ということを、一人でも多くの方に知って戴きたいと思います。なお、この文章の文責は『TOM 氏』です。

<by ナミねぇ>

 

上村勉証人の被疑者ノート

2月25日午後の公判では、上村証人に対する検事の取り調べ状況について、弁護側から被疑者ノートに基づき尋問が行われました。
結論から述べると、上村さんが一貫して単独犯行を供述していたこと、検察官が村木課長指示の供述を執拗に押しつけ再逮捕などの脅かしや早期保釈などの利益誘導を続けていたこと、そして一度指示を認めた調書にサインすると後はいくら訂正を求めても検察官は全く聞く耳を持たないためついにあきらめの心境に至ってしまったことなどの経緯が明らかになりました。
被疑者ノートとは、逮捕・拘留されている被疑者が毎日の取り調べの状況や健康状態を記したノートです。その日のうち(あるいは翌朝)に書くため検事とのやりとりや感想が生々しくつづられています。公判では弁護人がこのノートの主要部分を1日分ずつ読んだ上で上村証人に質問する、というやりとりを繰り返しました。

読み上げられた被疑者ノートの内容と上村証人の証言を出来る限り忠実にご紹介します。(『 』は被疑者ノート、◎は証言)

<文責:TOM>

 

5月26日(上村証人逮捕)

 

5月28日

『「証明書は倉沢が村木から直接もらったことになっている。私の記述は浮いている」と言われた。どうしても私と村木をつなげたいらしい。』
◎何でこういう展開になっているのかわからなかった。

『だんだん外堀から埋められる感じ。私の供述さえ得られれば検察のパズルは完成か。いつまでも違った方向を見ていると拘留期間が長期化しそうで怖い。しかし、現時点で村木の関与は思い出せない。』

 

5月29日

『下に責任を押しつける厚労省の体質を改めるべき。このままいくと上村さんがうそをついていると思われてしまう。』
◎それは検事が言った言葉。「厚労省の膿を出す」と言うのが検事の口癖。
◎「うそをついていると思われてしまう」というのは自分の独断でやったという主張を貫くとぼくがうそをついていると思われるということ。

『証明書を渡したのは私、というのと、関係者の話では村木から倉沢にわたっている、がどうしてもつながらない。
◎自分の記憶と検事の話がどうしてもつながらなかった。

『偽証罪に問われるのか心配だ。』
◎法廷で村木さんが関わっていないのに関わっていると供述すると偽証罪になるのではないか、ということ。

 

5月30日

『これだけ固められると逃れられない。記憶はないけど私が村木に証明書を渡したことを認めた。凛の会側のメモや手帳という記録には記憶は勝てない。』
◎検事の話と新聞報道でそう思った。検察側の意向を認めないと拘留が長期化するという気持ち。

『弁護士さんの指示に従えなくて申し訳ない。』
◎自分の記憶に残っていることだけ話せ、というアドバイスをもらったのに検察に負けてしまった、ということ。

 

5月31日

『私が証明書を渡したことを「うそ」ということにされてしまった。私の記憶にないことを作文されている。こういう作文こそ偽造ではないか。』
『いかにも厚労省のため私のためとか言っているが信用できない。』
『冤罪はこうして始まるのかな。』
◎最初からぼくの供述なんてどうでもよくて、村木さんの関与を認めればそれでいいという感じだった。検事の口から「村木さんの指示」というのがパアァと出てきてそれを事務官がパソコンに打ち込んで署名させられる。検事のいいとこ取りで作文された。

『(訂正されなかったのは)私が村木に証明書をわたしたこと、村木から私に証明書を作るように指示があったこと、キャリアがノンキャリアを踏み台にしていること。』
『今日のことは弁護人には言うな。』
◎違いますと言ったのに訂正してくれなかった。

『自分でリークしているのに、マスコミは面白おかしく書くと言っている。』
◎自分と検事しか知らない話が翌日新聞に載っているので、検事が自分でリークしていると思った。

 

6月1日

『村木のデスクに呼ばれたところを近くの人が見ている。』
◎検事にそう言われた。

『(訂正されなかったのは)村木に指示されたこと、村木に証明書を渡したこと。(書いてもらえなかったのは)凛の会の関係者に(自分で)証明書をわたしたこと。』
◎弁護士には本当のことを話せといわれるが、一人になると負けてしまった。検察官と1個人ではとても真実を通しきれない。

 

6月2日

『当時の室長補佐の供述調書読みきかせ。』
◎自分の単独犯行なのに、3月以前に上司とか企画課の人がこういう動きをしていたことを知って驚愕の気持ち。そのころは検察官の言うことは本当と思っていた。後々疑いも持つようになった。

 

6月3日

『(訂正されなかったのは)村木からの指示、村木から渡したという点。』
◎そういう前提でいつも始まる。言い分を全く聞いてくれない。聞くだけ聞いて検察官が話し始めると村木さんの関与のことばかり。

 

6月5日

『(取調事項)1回目は塩田と村木を中心に国会議員とのつきあい。2回目は当時の政治的背景』
◎調書では政治的背景、裏事情を私が語ったことにされたがそんな話はしていない。一般論として話すとうまいことつないで犯行動機に結びつくよう作文する。

『(大きな字で)もうあきらめた。何も言わない。』
◎もう好きにしてくれという意味。抵抗する気力を無くした。

 

6月6日

『(取調官の言葉)全然覚えていないから他人の力を借りるより仕方がない。偽証罪にはかからない。』
◎検察官に言われた。他人の力とは倉沢、河野、塩田の供述のこと。

『密室での調べでは検察に勝てない。』
『調書の修正は完全にあきらめた。』

 

6月7日

『村木が倉沢の目の前で郵政公社に電話した。郵政公社の支社長と村木の夫が知り合い。』
◎こういう風につながっているからやっぱり村木はつながっていると検事に言われた。信じられない思い。検事に自分一人でやったのは違うと説得され、記憶が揺らいで抵抗をあきらめる思い。

 

6月8日

『面倒なことは先送り。責任回避の性格。相談する相手がいなかったことも原因ではと検事が言っていた。』
◎自分を分析するとこういう自覚症状。一人で抱え込んじゃったからこういう話になっちゃったと言ったら、検事がこう言った。

 

6月9日

『村木、塩田の関与について取り調べ。厚生労働省の組織的犯罪にしたいようだ。
村木から後づけの決裁は必要ないと指示という調書になっている。作文に近いが、検事の作文にのるという決断をした以上しかたがない。』
◎検事の作文にのる、というのは「あきらめた」と同じ意味。

 

6月10日

『余罪、大臣印3件の無断使用。』
◎いずれ取り調べすると検事に言われた。1回目の拘留満期に近い時期だったが、余罪についても再逮捕があると思った。

 

6月14日(村木元局長逮捕、上村証人再逮捕)

◎村木さんの逮捕を知ったのはラジオのニュースかもしれない。検事が検事総長まで了解している、と言っていた。自分の記憶と反しており、自分が偽りの供述を維持したことがかなり影響したのかな、申し訳ないと思った。

 

6月15日(裁判所の拘留質問で村木さんの関与は記憶があいまいと供述)

『裁判官に話したことは訂正しないと言ったら、検事は少し涙目になった。』
◎拘留質問の時に、村木と共謀していることは違います、と裁判官に言って書いてもらった。9時頃に裁判所に出かけて夕方までかかった。夜に取調べがあったが、検事がそれまでの取調の時は淡々としていたのに涙目になり、鬼気迫る様子で怖かった。すぐさま、今日言ったことは違います、と巻き返すような調書を取られた。もしかしたら偽の証明書が2枚あるのではないか、私が言っていることも正しいけれど検事が言っていることも正しいのかな、という気になった。

『余罪については実害が生じていないから穏便にすまそうと思っている。利益誘導?』
◎利益誘導とは穏便にすますということ、それによって偽りの供述を維持しようとしていると感じた。夜の取調で、巻き返しの調書を取られた時に出た話。

 

6月16日

『捜査の構図は当初から決められていてこれに私の証言と倉沢の証言を合わせる必要があるので、検事も上から言われて苦しんでいるのではないか、と聞いた。しかし、私は村木から指示され証明書を渡したことは記憶にない。思い出せない。』
◎検事は本当は私の言うことを信じてくれていて、でも上の人の構図にのらざるをえなくて苦しんでいるんじゃないですかと聞いた。捜査方針に沿わないことを自分が言っていると検事も周りから責められているのではと見えた。検事の顔を立ててやろうとまでは思わなかったが、組織の中で苦しんでいるように見えた。

 

6月17日

『(取調官の言葉)検事が司法修習生との懇談会に出た時、「どうしても自白しないときはどうするか」と聞かれて、検事は「拷問する」と答えて上層部から注意を受けた。
記憶にないといつまでも言っているといずれ強引な手段もあると聞こえプレッシャーを感じた。』
◎検事がそのとおりに言った。

 

6月18日

『取調べ時間が今週に入って急に長くなっている。最近は、思い出せるものならとっくに思い出している、という怒りにも似た感情がわいてくる。』

 

6月19日

『眠い。けど眠れない。弁護士接見の時に少し寝かせてもらった。』
◎接見の時に寝かせてもらうのは何度かあった。健康状態は大変悪く、食欲が無くて、40日間で6sやせた。

 

6月21日

『村木の関与について全く聞く耳を持たない。毎回毎回バカバカしい。』
◎検事は私の主張を否定して、村木が関与と言い続けていた。

『検事はいつも「ここからは想像でしか無いんだけどね」と言って私に聞いてきて、それをパソコンに打ち込み、それが調書になる。いつもこのパターンで架空のストーリーを作り上げる。「ちゃんと眠れている?」とか「心配事があったら何でも相談して」とか言うが、調書作成の時になると私の言っていることには耳をかさない。この割り切りを見ているとまるで機械のようだ。』
◎ここからは想像でしか無いんだけどね、というのは一つのパターン。調書になるときもあればそのまま終わることもある。

『睡眠薬を出すようにするらしい。強引な取調がなければ薬なんかいらないのに。』
◎結局、睡眠薬は出なかった。

 

6月22日

『今でも単独でやったと思っているかと検事に聞かれて、私の記憶では私が決断して河野に渡した。と答えると、否認するわけね。関係者全員の証人尋問だ、と言われてプレッシャーを感じた。』
◎(村木さんの関与を認めろという)やりとりは1日1回はあった。こういう風にストレートにプレッシャーをかけられたのはこの日だけ。

 

6月24日

『(取調の状況)トランプ遊び約2時間。この余裕は一体何?』
◎取調室に行ったら今日はトランプを持ってきたから一緒にやろうと大貧民とかダウトをやった。嫌だというとどうなるかわからないから応じた。こんなことしている時間があるなら早く調べて早く出して欲しかった。

 

6月25日

『村木からの指示は無く、村木が証明書を渡したのではなく弁護士会館のB1のメトロで河野に渡したのが自分の記憶である、と供述したが、調書はすでにできあがっていて署名捺印は拒める状況ではなかった。保釈という甘いえさの誘惑に負けてしまった。』
◎検事が代わっていた。(これまでの担当検事をA検事、代わった検事をB検事とする)調書はすでにできあがっているものを持ってきた。保釈の日程などの話をした後に調書が出てくるので、やっぱり違うと言って拒めば保釈も反対されると想像した。

 

6月26日

『保釈は検察庁としても反対しない。』
『留置管理係の上司が部屋を訪ねてきて、村木から指示されて証明書を作り村木に渡したというのは記憶と違うことをありのままに話した。今が一番苦しいが検察と闘わなければならない、と励ましてくれた。』
◎なぜ来てくれたかはわからない。私の記憶と違うことが調書になっていると話したら、今が一番苦しいが闘わないといけないと諭された。弁護人以外にも味方がいて嬉しかったが、このとおりできるはずがないなと思った。

 

6月29日

『(再び検事が代わり)A検事がプレッシャーをかけてきた。前日のB検事とトーンが違う。』

 

6月30日

『拘留中の調書について、精神的に不安定になって妄想を語った訳ではない、と私が語ったことになっている。悔しく不本意。余罪の自白時期について調書の訂正を申し出たかったが黙っていた。』
◎調書の明らかな間違いは直してくれるが、直したところ以外は正しいとされるので気をつけろ、と弁護士に言われた。

 

7月1日

『凛の会について組織的犯罪ではないとするならば余罪についても考え方を変えなくてはならない。再逮捕?』
◎A検事に言われた。この段階でもまだ抵抗を試みていたかは覚えていない。

 

7月2日

『裁判における反省の言葉を書けと言われた。裁判で想定外のことを言われたら困るから一筆書かせて洗脳しておけ、と言われているのかもしれない。これ以上のことは出てから考える、今は冷静になれない、と言ったら明らかに目の色が変わった。』
◎目の色が変わったのはA検事。取調が3回あったが、保釈の話と反省文の話は同じ時。

 

7月3日

『調書がたくさん取ったのはよほど不安なんだな。こんなに調書を取るとかえって裁判官に不審がられないだろうか。かえって逆効果のように思える。』
◎A検事が作ってあった調書をB検事が持ってきて確認させられた。

 

7月4日(保釈決定)

『この期に及んでトランプとは。これで私を手の内に入れたつもりなのだろうか。』
◎この日のゲームは覚えていない。2回取調べがあり、2回目はA検事がトランプを持ってきた。

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