NPOの新段階 − 市民が変える社会のかたち

市民は変化した価値観を新たな方法論で行動に移しながらお任せ民主主義の時代を卒業し、政府・行政も広聴の能力の向上に努力する。市民・政府・行政が相互に敬意を払い影響しあいながら、社会の質を向上させる。そんな時代の到来といえるのではないでしょうか。
(「おわりに」より)
2005年度大阪経済大学オープンカレッジ春学期に、「チャレンジドを納税者にできる日本へ」と題して行われたナミねぇ講義の模様を収録。
編著者末村祐子さんによる講義解説
原点は母親としての情熱
理事長の竹中ナミさん(以下、ナミさん)に会われた方は、全員がそのエネルギーに引き込まれそうになります。『プロップ・ステーション』のメッセージは「チャレンジを納税者にできる日本へ」ただひとつ。日本の社会福祉政策に代替的な考え方を提案していることが、素直に伝わるわかりやすいメッセージです。
ナミさんの著書『ラッキーウーマン』に、「日本ではなぜ障がい者を隔絶するのでしょう? チャレンジドという言葉を使うことで日本に新しい価値観を生み、社会の仕組みを変えたい!」とあります。マーケテイングでいうところのトリガーを直感的につかみとり、このようにシンプルに表現していることが、情報発信における『プロップ・ステーション』の一番の特徴です。
代弁者に終わらないグレートアジテーター
ナミさんご自身は健常者ですが、障がいをもつ方々の声を代弁し、独特の個性をもって強烈なパワーでその声を社会に発信しています。また、発信する以上は、味方をたくさんつくるわよ! という迫力があります。代弁者としてだけでなく、偉大なアジテーターとしてのナミさんの姿がそこにあります。
多数のファンの存在と今後に向けて
現在『フロップ・ステーション』で実施されている事業は、「仕事に就くための技術講習」、「既存制度の改善や新たな制度づくりのための提言」、「社会の意識変革のための企画実施」、そして「相談受付と調整」、と使命と事業の関係もわかりやすく明快です。これらの一つひとつは、ナミさんが重い障がいをもたれたお子さんの母親になったことで経験したことや、同じく障がいをもつプロップの中心メンバーの原体験から生まれたものとのこと。この原体験とナミさんの個性が、多くのファンの輪をつくり上げてきました。年間予算に占める寄附と後援会費の割合が約三割を占めていることや、社会福祉法人の法人格を取得するに当たり必要な基金が企業からの出資であることからも、賛同者の多さがわかります。
概念や発想の転換には、強烈な個性が必要ですが、ナミさんの個性にだけ委ねているわけにはいきません。今後「チャレンジドを納税者に」の現場を社会に示せる団体がより多く活躍することが期待されます。
書籍データ
編著者 末村祐子
発行 法律文化社 2007年1月30日初版第1刷発行
価格 1,575円(本体価格1,890円)
サイズ 13cm×18.6cm、モノクロ149ページ
ISBN ISBN978-4-589-02989-8
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目次
はじめに
序章 転換期にある日本◆社会の新たな担い手たち/末村祐子
世界的な潮流であるNPOの台頭
日本のNPOのあゆみ
小泉政権における構造改革とNPO
真の構造改革に向けて―新たなビジョンの必要性
講義編
CASE1 市民の目覚め◆自律する市民・行動する市民/松浦米子
『市民グループ見張り番』の誕生
住民監査請求権、情報公開請求権の行使を市民の力に
継続は力―様々な事例から
市民である醍醐味
講義解説@見張り番
CASE2 チャレンジドを納税者にできる日本へ/竹中ナミ
チャレンジドという言葉との出会い
震災とパソコン通信
ある青年の物語
情熱を後押しするもの
専門家も万能ではない
福祉の概念の転換を
講義解説Aプロップ・ステーション
CASE3 情熱とマネジメントの融合◆ニーズから政策へ/石川治江
地域で生きるために
たまたま性からの脱却
介護保険制度制定の背景と制度の概要
制度の狭間で―やわらぎの経験から
介護はプロに、家族は愛を
講義解説Bケア・センターやわらぎ/にんじんの会
CASE4 自立・自律と共生のコミュニティをめざして/中村順子
NPOの可能性・おもしろさと現状
考える・判断する・実行する―『CS神戸』の理念と成り立ち
組織を支える多様なスタッフ
『CS神戸』の直轄事業
『CS神戸』を通じて立ち上がったグループたち
中間支援組織としての役割
NPOと経済活動
コミュニティ全体の幸せをめざして
講義解説CCS神戸
終章 社会におけるNPOの役割/末村祐子
市場メカニズムとNPO
政府・市場・NPOそれぞれの役割
成長分野とNPO
NPOの組織特性
日本のNPO制度
おわりに―講義のふりかえりとともに
講義一覧
(法律文化社ホームページより抜粋させていただきました)