村木元局長「早く無実明らかに」 郵便不正、判決9月

日経新聞 2010年6月29日記事

 障害者団体向け郵便料金割引制度の悪用事件で、虚偽有印公文書作成・同行使の罪に問われた元厚生労働省局長、村木厚子被告(54)の公判が29日、大阪地裁(横田信之裁判長)であり、最終弁論で弁護側が「被告が証明書の偽造を指示した事実はなく、検察側のストーリーが成立しないことは明白」などと改めて無罪を主張、結審した。判決は9月10日に言い渡される。

 最終意見陳述で村木元局長は「一日も早く無実が明らかになり、社会復帰して普通の暮らしができる日が来ることを願っている」と述べた。

 弁護側は、村木元局長が元同省係長、上村勉被告(40)=公判中=に偽造証明書を発行させたとする検察側主張について「最終決裁権者の元局長が、自身の決裁を省略して、あえて偽造を指示しなければならない理由はない」と指摘。「検察側ストーリーは不合理きわまりない」と反論した。

 偽造証明書は「団体側から督促された元係長が、上司に報告することなく作成した」と述べ、村木元局長の関与を否定。村木元局長らが証明書発行を国会議員の要請による「議員案件」と位置付け、偽造に至ったとする検察側主張を「犯罪の動機として薄弱で、常識外れ」と批判した。

 その上で「検察官は潔く『被告は無罪』と認めることが、公益の代表者としての職責にかなうはずだ」と締めくくった。

 村木元局長も最終意見陳述で「『議員案件』に対し役所が善悪を考えず、結論ありきで法律や規則を曲げて処理することは、行政の実態とかけ離れている」と批判した。

 これまでの公判で、証人出廷した上村元係長は「証明書偽造は独断」「供述調書は検事の作文」などと、捜査段階で認めた村木元局長の関与を否定。横田裁判長は5月の公判で、検事による誘導の可能性を指摘し、元係長の捜査段階での供述調書すべてを証拠採用しないことを決めた。

 有罪立証の柱を失った検察側は、懲役1年6月を求刑した論告で「証明書が村木被告の指示なしに発行されたとは考えられない」などと、推論の積み重ねに終始した。

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