厚子さん、第14回公判傍聴記 by ナミねぇ

2010年3月19日

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厚子さん第14回公判傍聴のため、大阪地裁に向かう。今朝は昨日までと、うって変わったように寒い!
今日の出廷は倉沢、河野両氏を取り調べた坂口英雄副検事(51)と、 河野、北村、村松、塩田の各氏を取り調べた林谷浩二検事(34)の二名。う〜ん、緊張するなぁ! 
今日は江川紹子さんも傍聴に。心強い!!

大阪地裁201号法廷で、紹子さんと合流。
紹子さんは、東京から早朝の新幹線で(なんとTVのレギュラー番組を蹴って!)日帰りで来られたという。感謝!!

10時開廷。倉沢被告を取り調べた坂口副検事が入廷、証人席へ。
氏名、役職を述べた後、宣誓。

今日は、結論から書こう。
坂口副検事の尋問で、石井議員の関与や企画課長(厚子さん)から倉沢被告が直接証明書を受け取った日時などの証拠は、いずれも倉沢氏のあやふやな供述と、不確実な本人の手帳のみ。検察は裏取りしてないことが判明。「なぜ裏付け捜査をしていないのか?」弘中弁護士の問に 坂口氏は「長期間、長時間、倉沢氏を取調べ、誠実な人柄だと分かり、信頼関係も出来ていたからです。最後の取調べの日は、いつものジャージではなくスーツで応じ『貴方に取り調べてもらって嬉しかった。ありがとう』と言ってくれた。」と述べる。
それって、逆ストックホルムシンドロームみたくない??

坂口副検事は、取調べに使ったメモを全てシュレッダーにかけて破棄したのだが、その理由を弘中弁護士に聞かれ「自費で買ったノートだった。家族のことも書いていた。破棄は倉沢氏のプライバシー保護と名誉のため。」と証言。「メモだけでなく、調書を残していない日もあるが。」との弘中弁護士の問には「メモ帳に必要事項を書いてたので、取調べに支障はなかった」と語る。メモと調書を補完的に使っていながら、メモだけをあえて破棄したことの意味が傍聴者には伝わらない。

「録音、録画をしたことは? あるいはその必要性を(組織として)検討したことは?」との弘中弁護士の問い掛けには「「メモしたことは自分の頭の中にあるので、それで良い。」と、あまりにも素直な(?)答えに傍聴席は唖然。「取調べメモは証拠開示の対象と知ってますか?」と、弘中弁護士が厳しい声で聞く。「は?・・・あの、よく知りませんでした。注意も受けていませんし・・・」と困惑する坂口氏。取調べの可視化が問題になっていることなど、どこ吹く風という感覚に、呆然。

年配の坂口副検事は、(大阪府)堺支部から「身障低料第三種郵便制度を悪用した企業がらみの事件」の捜査応援で駆り出されたそうだが「虚偽有印公文書作成事件」の取調べ責任者と、どちらも共通の検事だったという。「したがって、時々他の検事と取調べを交代した。」と証言。「あなたが他の検察官に取調べを交代した日は、供述調書が残って無いが、それはなぜなのか?」と弘中弁護士が問う。「自分のノートに記載したり、口頭で引継ぎを受けたので、取調べに支障はなかった。」と、坂口副検事。

つまり「取調べを行う側だけが、取調べ側に必要な事実を把握すれば、それで良し。被疑者の立場など考慮する必要は無い。」と言うに等しい答えに、目が点になりそう!
「あまりにも正直で(上に◯◯がつくほど)実直(?)に答える」坂口副検事の、やや寂しい後頭部と、決して高価ではなさそうな背広の後ろ姿に、「組織の歯車」という言葉が胸に浮かぶ。

弘中弁護士の、昨日の記者会見での言葉「検事はシレッと嘘をつく」から、狡猾な検事の出廷を予測していた私は、拍子抜け。あまりにも正直に答えた罰で、坂口氏はどこかに飛ばされるかも・・・と思ってしまったりする。いやいや、同情してる場合やない。 この人が倉沢被告から「公的証明書を、厚子さんから直接受け取った」という証言を引き出した張本人なんやから。

弘中弁護士の尋問が続く。「倉沢氏は、4回も村木課長に会ったことになってるが、倉沢氏の押収物に村木さんの名刺は無かったんですよね?それについて倉沢氏は何と?」「名刺交換したかもしれない、しなかったかもしれないと言ってました。」と坂口副検事。「追及しなかったんですか?」「追及しました。でも倉沢氏は記憶が定かでないと・・・」「じゃぁ名刺交換してない可能性もあるんですよね!どういう理由でしなかったか追及しましたか?」「さぁ・・・村木さんから戴かなかったのじゃないかと・・・」「その程度の説明だったんですか!?」さすがに弘中弁護士の声が荒くなる。坂口副検事の返答は「はい」。

「平成16年6月のはじめごろに倉沢氏は、公的証明書を受け取りに村木課長のところに行った、と証言していますよね。この裏付けとなるものは?」弘中弁護士が聞く。「裏づけは・・・特にないです。」「裏取りをしましたか?」「あくまで倉沢氏本人の行動で、しかも5年前のことなので、非常に難しくて裏付けは取れませんでした。もしこうすれば裏が取れるということがあれば、やったんですが・・・」と困惑したように話す坂口副検事。「河野から連絡があり、証明書ができたので急いで取りに行ってと頼まれ、当日もしくは翌日、遅くとも翌々日には受け取りに行ったようです。」

おいおい、厚子さんのこの事件への関与は、今や倉沢の「受け取り証言」しか無いんやでっ!! 何アバウトなこと言うてんねん、坂口!!

「当日か、翌日かって・・・相手(厚子さん)のスケジュールもあることだし、それは追及してないんですか!?」弘中弁護士が迫る。「追及しました。そしたら倉沢氏が、河野氏に急かされたので、間を空けずにすぐに行ったと言ったのですが、もしかしたらすぐには行けなかったかもしれないと思って、私は当日、もしくは翌日、遅くとも翌々日と、幅を持たせた調書にしたんです。」あまりの回答に、傍聴席は爆笑!・・・と言いたいところだが、静粛を求められる法廷なので、みな笑いをこらえて肩を震わせている。私は思わず声を出して笑ってしまったが、これって笑ってる場合ちゃうやん!!
こんな証言と調書で、厚子さんが「主犯」にされたなんて、アホらしくて涙が出そう。

坂口副検事の証言からは、供述調書が毎回一から書かれたのではなく、証言が変わらない(と思われる)部分は先に入力しておき、聴取時に書き足す方式がとられていたことも判明。
また裁判官からの尋問では「厚子さんが、郵政公社の森という人に電話した」件も、あやふやな倉沢氏の記憶と発言が、検事の誘導によって「確定的なものとして調書に記載された」ことも明らかに。「調書に記載するかしないかは(検察官にとって)必要かどうかで判断され、一時的に(被疑者が)否認したことは書く必要を感じなかった」と、坂口氏は悪びれることなく語った。

あまりのことに裁判官が「本件は、取調べの正当性が疑われているのだが、そのような注意を受けたことは無いのですか?」と厳しく坂口氏に問いかける。「はい」と小声で答える坂口氏。
こうして「ホンマにこれが検察官!?」と言いたくなるような坂口副検事の尋問が終わった。

午後2時半。二人目の証人、林谷検事が入廷。
柔道家のようなガッチリ、ずんぐりした体格、短く刈った髪、黒縁のメガネで、坂口副検事より17歳若い。平成19年4月に、大阪地検特捜部に配属されたという。
坂口副検事とは対照的な外見だが、証言がはじまってすぐ、性格も二人は真逆と判明。
高めの声で、氏名、職責を名乗った後、裁判長の「宣誓を」の声に「宣誓しま〜す」と、少し語尾を伸ばして答え、宣誓文を読み上げる。体格もデカいが、態度もめちゃデカい。

先ず驚いたのは、坂口氏と同じく林谷氏も取調べメモを全て廃棄したのだが、同僚であるはずの公判担当検事から「なぜ?」と聞かれて「必要ない」と、きっぱり言い放ったこと。
「被告人の一人である村木さんは、犯行を否認していますよね。そうすると他の関係者の取調べ内容などが必要になることもあるのでは? 手元に取っておこうとは思わないのですか?」と聞かれ「残す、残さないは自分の判断です。」と言い切る。
「証拠開示の対象になるのは知ってましたか?」と聞かれると、高い声で「当然! 残っていれば対象になりますね。」「(あなたのメモは)対象にならないとでも?」「はい。重要なものなら残してますよ。」う〜む、まさに傲慢、まさにこれぞ特捜検事の面目躍如!?

弘中弁護士が言った検事像そのもののように、林谷検事は、供述調書を否定した証人たちの証言をすべて切って捨て、事情聴取の正当性を滔々と語る。高い声、早口でまくしたてるので、殆ど聞き取れない。記録を取る書記官が眉をしかめる。公判担当検事が「もう少し、ゆっくり話して下さい。」「もう少し短めに話して。」と何度も呼びかけるが、聞く耳を持たない。喋る、喋る、喋る、林谷検事。
しかしよく見ていると、さかんに水を飲む。もしかして緊張してる? もしかしてホンマは小心者??

自分が担当した4人の被疑者(凛の会:河野、北村元課長補佐、村松元係長、塩田元部長)の「調書は作文」「誘導されたもの」「利益誘導や恫喝が有った」「他の人がこう言ってる、あぁ言ってると話して証言を引き出した」「嘘の証拠を提示」などをガンガン否定し、聴取の正当性について喋り続ける。
塩田元部長に「(石井議員への報告の)4分数十秒の電話交信記録がある」と言って証言を引き出した、とされる件については「塩田氏のほうから、通話記録があるなら教えて、と言い出した。自分は通話記録があるとは一切言っていない」と強調した。

林谷検事の尋問中に5時となり、裁判長が「次回、3月24日も林谷検事に出廷を求めます。では今日はこれで。」と閉廷を告げ、取調べ検事尋問の1日目が終わった。

二人の全く違うタイプの検事の証言を間近で見聞し「どこの組織にも、どっちのタイプも居てるなぁ・・・検察も、普通の組織やん! でも強大な権力を持つ検察が、普通の組織ではアカンやろ! 自浄作用を働かせて、ホンマの正義を追求してくれい!! 」と、強く強く思いながら、大阪地検を出る。

そして、江川紹子さんと顔を見合わせ「今日はなんか、精神的に疲れたねぇ・・・」と、異口同音に話しながら、大阪駅に向かったのでした。

<文責:ナミねぇ>

 

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