暴走検察 郵便不正初公判
村木厚子元局長無罪主張 ここでも崩れる!? 検察側ストーリー

週刊朝日 2010年2月12日号(2月2日発売)記事

 またも検察の暴走ぶりが明らかになった―。厚生労働省から実態のない障害者団体に偽の証明書が発行され、郵便割引制度が悪用された郵便不正事件で、証明書の発行を部下に指示したと、虚偽有印公文書作成・同行使の罪に問われた村木厚子元厚生労働省局長(54)は、1月27日の初公判後の記者会見で、検察の捜査に不満をあらわにした。

 「自分が供述したとおりに調書をつくってくれない。当時は毎日多くの人に会っていたので、倉沢邦夫被告に会ったかどうか『記憶にない』と言っても、『会ったことはない』にされる。検事は虚偽のストーリーをつくり、署名を求めてきた」

 初公判では完全無罪を主張し、弁護人も冒頭陳述で検察の主張するストーリーを"でっち上げ"だと批判するなど、全面対決の様相を呈している。

 検察の描く構図はこうだ。
  村木被告が障害保健福祉部企画課長だった2004年当時、自称障害者団体「凛の会」元会長、倉沢被告(74=同罪の共犯などで公判中)から口添えを頼まれた民主党の石井一参院議員(75)が、村木被告の上司だった当時の障害保健福祉部長に郵便割引制度の適用団体であることを認める証明書の発行を要請。部長から指示された村木被告が偽の証明書を発行するよう部下であった上村勉被告(40=同罪の共犯で起訴)に指示した―。

 しかし、弁護側は、
  「上村被告が偽の証明書を作成したのは、フロッピーディスクの記録によれば、04年6月1日未明となっている。被告人が6月上旬に部下であった上村被告に証明書作成を指示した、とする検察の主張は破綻(はたん)している。また、石井議員と親しく、被告人に証明書発行を指示したとされる元部長が、共犯者として起訴されていないこともおかしい」
  と矛盾点をいくつも指摘した。

 さらに、強引な取り調べは村木被告に対してだけではなかった。偽の証明書発行を受けた「凛の会」元幹部で、同罪の共犯で起訴された河野克史(ただし)被告(69)の供述調書についても、
  「検察官のストーリーどおりに供述すれば、保釈保証金100万円で保釈してやると持ちかけてきたり、検察官がテーブルをたたいたり『逮捕するぞ』と脅したりして虚偽の内容の供述調書にサインさせた。本件関係者の供述調書はこのような検察官の脅しや懐柔により作成されたもので信用性がない」
  と村木被告の弁護側は主張した。実際、河野被告の事件に詳しい関係者もこう証言する。

 「河野さんは、Hという検事から『最初から証明書は偽物だと知っていたんだろ?』と聞かれ、『虚偽とは思わなかった』と答えたにもかかわらず、『知っていた』という調書に署名を強要されたそうです。あらかじめH検事のつくった調書と違う供述をすると、河野さんが取り組んでいたピアノパラリンピックの支援をできなくしてやる、などと脅されたため、H検事のつくった供述調書にサインせざるをえなかったと言っていました」

 河野被告の弁護人は強引な取り調べ、署名の強要をしないよう、抗議の内容証明を09年5月、大阪地検に送った。だが、半年が過ぎた今も地検からの回答はないという。

 さらに驚くことに、このH検事、現在、小沢一郎民主党幹事長の政治資金規正法違反事件の捜査のため、大阪地検特技部を代表する"デキる"検事として、東京地検特技部に応援に来ており、ゼネコンの捜査を担当しているという。

 無罪を主張する村木被告の"悲劇"は繰り返されるのか。

今西憲之/本誌・大貫聡子

(PDF 972KB)

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