対談講演 「ナミねぇとレモンさんに聞いてみよう!元気の秘訣は何ですか?」
(その1)

主催:千代田区男女共同参画センターMIW(ミュウ)

2007年5月22日 於:千代田区役所区民ホール

(テープ起こしは徳島市の在宅チャレンジド・スタッフ、後藤田勇二さんが担当しました)

 

主催者の紹介に引き続いて。

レモン: ナミねぇの本(注:ラッキーウーマン)、ものすごい生き様ですね。

ナミ: 今は更生しました(笑)。

レモン: 今日は最終的には僕らは元気をプレゼント、ですよね。皆さん、ナミねぇの本、これで元気になります!

ナミ: 本はいいけれど、しゃべって元気になってほしいな、と思ってるんで。

レモン: レモンさんのPTA爆談」、小学館から出ております。(印税)全額寄付しております、子供たちのために。こちらもよろしくお願いします。
そんなわけで、今日はナミねぇ、僕、一応進行役仰せつかったんで。

[写真]左 ナミねぇ、右 被り物のレモンさん

ナミ: ずっとそれ(注:レモンの被り物)被ったままですか?

レモン: 一応最初のほうだけ・・・、暑いです。はっきり言うて。

ナミ: 暑いやろうなー思って。

レモン: 7年被ってるんです。小学校のPTA会長5年やって、いま顧問2年目です。

ナミ: 被りもの取りはって、男前ですやん!ジュリーとキムタクと掛けて金八先生で割ったみたいな・・・(笑)。

レモン: そういえば、あなたのそれは(髪型)阪神タイガースですか?

ナミ: この髪型に関しては弁解させてください。この写真、皆さんお手元にある。今日のために写真を提出してくださいって言われたんです。それでホームページでこの写真使ってるんでこれを送ったら、その後、シュウさんこの写真です言われて、「悔し〜!」。

レモン: 何が悔しいん。

ナミ: はじけ方が。それでそれから散髪屋行ったんです。

レモン: 散髪屋!

ナミ: これともう一つはね、普段見いひん深夜のテレビ、しかもNHKの教育テレビ見てたんですよ。それに(レモンを)被ったまんまで出てきたんですよ。

レモン: 放送禁止ですよね、こんなもん被って。

ナミ: それ見て、わたしがこんなんで出てきたら勝負にならへんがな。

レモン: 何を勝負したいんですか!(笑)勝負することじゃないでしょ。

ナミ: 勝負に来たんですよ、勝負に。

レモン: 人生勝負ですからね!
   ナミねぇの人生、だいたい聞いたことがあるという方、手を上げてもらえますか?皆さんご存じない、そっから話さなあかんのちゃいますか。

ナミ: 日本の非行少女の走りと呼ばれておりまして、さんざん親不孝をして。

レモン: ありえないですよね、何ですか?タバコ吸うたり、中学生で。

ナミ: 中学のときはもう、酒飲みすぎて胃壊して。

レモン: 14歳の時にはストリップ小屋にも見学に行ってる。

ナミ: 映画に出えへんかって言われて、女優を目指していたんで。行ってみたらそれがなんと、タイトル『鞭打つ女教師』(笑)

レモン: よう聞いてみたら、ロマンポルノ系。

ナミ: ま、昔のですから、今みたいなことはないけど。

レモン: それに、よくスカウトもされてたでしょう、夜の街うろうろするから、14歳で。ヒール履いて、ボーとしたとこに声掛けてくる、魔の手が伸びてくるわけですよね・・・「お嬢ちゃん何してんの?」。この中に書いてあったのは、お店紹介されたんですね?

ナミ: 寄ってきはった。ところがね、当時神戸で一番有名なキャバレー、すごい巨大キャバレー。そこのトップ張ってた「椿さん」、そのお姉さんのところに、私を引っ掛けた兄ちゃんは私を預けた。

レモン: 頼むで椿。

ナミ: ちょっと仕込んだってくれ。
   その人が、すごい人やったんですよ。キレイなんて言うモンやない、ゾッとするくらい綺麗。それでね、うちの母ちゃんはわたしが不良で悩んでましてね、「水商売の女というのは、ホステスというのは」と見下して、その世界のことをね。
ところがね、その椿さんでびっくりしたのは、私のうちよりも家の中ぴかぴかに磨いて、めちゃキレイ。で、朝早うに起きたら自分で朝食作って、新聞
読まはるんやけど、新聞何紙か全部読んでその中には英字新聞も。それで、食事食べ終わったら毎日髪結行かはんねん。

レモン: 髪結い!

ナミ: 和服やからね。クローゼット開けたらダーッとドレスも掛かってんねん。帰ってきはったらまた綺麗!

レモン: ナミねぇ、そんな詳しく話してたら今日一日中話さんとあかん(笑)。

ナミ: それでそのとき、母ちゃんが言ってたことは違うと、世間の主婦のほうがよっぽどだらしない、という話。

レモン: それを聞きつけてお母さんらが迎えに来て。

ナミ: 救出に来たん。

レモン: 本読んでてね、ギリギリのところでね、守護霊がいてますよ。スゴイ、ギリギリのところで救われた。そういう危ない世界で、命とられてもおかしくないようなハッチャケかたをしてるのにね、今やその、娘さんを授かって。

ナミ: そうです、もう34歳。

レモン: 34歳の娘さん。ところが、生まれた時の件(くだり)は。

ナミ: 34歳なんですけどね、いまだに私のことをお母ちゃんとは分かってへん。重症心身障害児なんです。ゆっくりゆくり、何かちょっと出来るようになるのに、ごっつい年月かけてね。で、それまでね、自分が授かるまで障害児なんか可哀そうな人で、そういう障害児がいる家庭も可哀そうで、気の毒やなというマイナスのイメージしか持ってなかったんですよ。

レモン: なるほど。たぶん日本中がそうやったんやないですか。

ナミ: ところがね、自分が授かって分かったんは、メチャ可愛い!人がなんと言おうと、自分の子供がかわいい。で、ちょっとずつチョッとずつしか変化しいひんのやけど、そのちょっと変わった、例えばちょっと笑うようになった、ちょっとご飯ちゃんと飲み込むようになった、ちょっと身体がこう動くようになった。そういうものすごい愛しさが半端じゃない。
自分ほど道外れた人間に、こんなに世間のルールというか世間の赤ちゃんと違う育ち方をする子が授かった、これはあたりまえのことやなと思って、これで二人で徹底的に外れたと思いました。もっとはじけてもいいなあと。

レモン: なるほど。まずナミねぇは10代から世間のルール、そしてレールをはずれて生きとった。ところが子供を授かった。そしたらそういう個性を持った、世間の標準といわれるのがどこにあるのか分からないけれど、そこから外れた子を授かった。これで“堂々と”レールを外れて行ける! ―ここポイントですからね。

ナミ: ポイントですか(笑)。

レモン: 考え方は色々で。何が元気になるってね、なんかいたるところに「こう考えるかっ」ていうね、いわゆるプラスのマインドコントロール。

ナミ: 私は重症児授かって、それからね障害児のお父さんお母さんとようけつきおうたけど、子供が障害児や言うて泣いてる人、連れて死んだる言う人、こっそり隠してる人やいっぱい会うて、世間の人も何やあの子はいうたら隠さなしゃあない時代やし。
わたしその感覚がはっきり言うてゼロ。

レモン: 最初っから。

ナミ: なかった。

レモン: 時代背景はあったはずなんですけどね。

ナミ: 時代背景はいま言うたみたいにみんな可哀そうな中の。で、わたしかって人のことは気の毒なんで。自分の子供授かって考え方変わったのが、これが両親からもらったもんかな、と。でそこから娘がわたしを更生させてくれた。こんなとこでえらそうに前に座ってね、しゃべってるっていう。

レモン: そういう時代、今なんか子供を捨ててるじゃないですか、親が。そういう時代でしょ。それで例えば不良やってて、親なんか!言うてて、自分のことでせいいっぱいワガママに生きてて、子供できたら手かかるぞって思ったときに、今の時代やったら知るか!いうて置いていってる可能性ありますよね。そやのに、ナミねぇは最初っから。

ナミ: 私自身はね、それもねすごいきっかけがありまして。

レモン: 何ですか?

ナミ: わたし自分の娘授かってもう、かなり重症やったからね、生後わずかしてお医者さんがすごい重い脳の障害があるって言いはって。脳の障害がある子ってどうやって育てたらいいかってぜんぜん分からへんから、連れて両親のところへ相談にいったんですよ。どないふうに育てたらええのってね。

レモン: 家出繰り返して、都合のええ時だけ。

ナミ: 都合のええ時だけ。この際はやっぱり親たよらなしゃあないと。

レモン: 行った、そしたら。

ナミ: そしたら、その話を聴いた瞬間に父ちゃんが顔真っ青になって、わたしが抱いてた娘ガバーっとひったくって「わしがこのまま連れて死んだる!」とか言うて。ビックリしました。どうやって育てるかって相談に来てんのに、「わしが連れて死んだる」って、あんた何言いまんの。聞いたらどう言ったかっていうと、「こういう子を育てていくのは、おまえがつらい目におうて大変な目におうて不幸な目にあうんや。わしはお前が可愛いいさかいに、おまえがそういう目にあうんはよう見とらん」いうて、親としての子供に対する親切ちゅうか、それが親の情や言いました。
ビックリしました。

レモン: びっくりして。ちょっと待ったー!

ナミ: わたしその頃になったときには、さすがにね、父ちゃんに反抗って気がしてたのはたぶんファザコン気味があったんやと。その父ちゃんが死ぬと言いよる。で、これでうんと言うた瞬間に、もうあの顔見たらほんまに連れて死によるなと。

レモン: もう本気や。

ナミ: 本気やなっと思たわけですよ。

レモン: その時に、一升瓶出して(笑)。

ナミ: それは思いつかんかった(笑)。

レモン: これからの講演はそういうのも有りで。

ナミ: それ、やってみますわ(笑)。

レモン: 修羅場です。失礼しました、修羅場です、修羅場。そのときお父さんの眼を見た。本気や。

ナミ: そやから、これはぜったい二人を死なさんようにするというのが、その時のわたしの最大のポイントちゅうか。その瞬間、そんなつまらんこと言うな。あんたそう言うけどな、絶対わたしはこの子と一緒に、つらいことしんどいことあるかもわからんけど、面白くも楽しくも元気で生きてみせるって、言い切ったん。

レモン: 言ったー!

ナミ: で、あんた絶対そんなしょうもないこと考えんとってちょうだいな、っていう話をした。

レモン: その時のたぶんインパクトがそうとう強烈だったんですね。

ナミ: まあ、お父ちゃんの脅迫やね(笑)

レモン: そしたらこの子が、わたしが生きてるときはいいけども、わたしが死んだらこの子どないなんのや!っていうのも、ものすごいパワー。

ナミ: そうですね。究極の目標は、自分が安心して死にたい。これをテーマに活動してますね。

レモン: 特に今の活動を、皆さんにすばらしい活動を、伝えてください。

ナミ: プロップ・ステーションっていうのはですね、障害があってその障害が重くて家族の介護を受けているというような人も、コンピュータとかインターネットとか、ITとかICTとか言われてますけど、そういうものを使って社会とつながって、自分の必要な情報を自分でGETしたり、あるいは見つけたりして自分を磨いて、で自分の出来ることを今度はそういう道具を使って外に出して、稼いで!タックス・ペイヤーになろうじゃないか。

レモン: タックス・ペイヤーに! つまり?

ナミ: 障害がある、介護が要る、そんなような人は福祉の恩恵で生きていく人やと言われてる。それが「あんたの子供が可哀そうやね」みたいに言う世間の眼とかと一緒やねん。
違うと。自分は障害があるけんど、介護をしてもらわなあかんけんど、人の手助けが必要やけんど、そんなもんみんな誰かって一緒や、自分だけで生きてへんやん。その時にことさらその、何々してもうてるっていう部分だけ強調して人生を送るんか、いやわたしはこういう手助けもいるけど、これもやれる。で、しかもそれがちゃんと収入につながるような道を、日本で作る。障害者可哀そうという国から、この人は何出来るんやろ、どんな人やろ、どうやったら光るんやろ、どうやったら一緒に勉強できるんやろ、一緒に働けるんやろ、ていうような国にして、経済的にもみんなで支え合いするように、そんな国になったら、もしかしたらわたしが死んで、自分の娘のような状態の人も守ってあげるというような意識と、経済の裏づけが出来るんじゃなかろうかと。
その時に、いま一番働くの無理やねんって言われてる人らが、働けるように、まず自分たちでやろう、そういうふうにしよう、ゆうて生まれたのがプロップ・ステーション。
だから生まれは小っこいボランティア・グループで、それも16年前、日本の一般家庭にパソコンゼロ。

レモン: ゼロでしょうね、16年前。

ナミ: その時に、介護を受けてる、介護を受けて施設にいてる、そういう人らのなかの何人かでね、コンピュータを使こて働いて稼いでタックスペイヤーにって言い出したグループとかで、そんなん誰も信じへん。

レモン: 16年前。

ナミ: 訳の分からんことゆうてんのて言って、いろんなとこから、しかもタックスペイヤー、納税者みたいな言葉使こた瞬間に、バーっと石投げられて。「福祉というのはな、福祉というのは気の毒な人に税金からちゃんと取ってきてあげんのが福祉や」と。「なに言うてんのあんた、そんな身体の人に働け言うてんのか」とかね。「絶対高いコンピュータみたいなんを売りつけようとしてるに違いない」
まあ色んなこと言われて。で、ところが別にわたしコンピュータ出来るのでも何でもなくて、そう言い出したのは、そう言い出した人ら自身。そうしたいって言う人らがいて出会って、わたしはコンピュータ嫌いやから上手になりたいとは思わんけど、彼ら、障害の重い人らが自分たちが社会参加したい、働けるかもわからんなと思てるんやったら、その人らをコンピュータと出会って勉強して、プロになって、仕事を出来るようになるところまでの場を作るほう位はわたしは出来る。て言うて役割分担で、わたしはこの口と、ギネス級の心臓とで、

レモン: ギネス級の心臓ね(笑)

ナミ: ギネス級の心臓とで役割を果たすために、あんたらは集まってきたエンジニアを使って働けるようになりや。その人を口説きにいくのはわたしやと。いうような役割分担でやってきて、いまプロップ・ステーションというグループは、実はわたしらみたいな動けてしゃべれるスタッフはほんのちょっとしかおらへんで、ほとんどの人は家のベッドの上で介護してもらいながら、家のベッドの上のパソコンでプロップ・ステーションのサーバーに入って、その向こうにいてはるたくさんの人にアドレス発行して、勉強教えて、仕事振り分けて、それチェックして、あんた今月こんだけ仕事したからペイこんだけ。みたいなことをその人自身がやってる。
で、わたしは「仕事ください」いうて、いろんなとこ行って言うて回るほう。

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関連情報

レモンさんのホームページ「 レモンさん.net 」

千代田区男女共同参画センターMIW(ミュウ)のホームページ

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