愛・地球博(愛知万博)瀬戸会場で、目の不自由な人が周りの建物や地形の情報を音声で知ることができる新システムの実験が行われている。国土交通省が実用化を目指す「自律移動支援プロジェクト」の一つ。障害者だけでなく、一般の人もモニターとして体験することができる実験に目隠しをして参加した。(坪井 千隼)

白いつえと情報端末を手に会場内を歩く坪井記者=瀬戸会場で
「正面は50段の上り階段です。ゴンドラの方向です」。路上の黄色い誘導ブロックに白いつえをかざすと、手のひらサイズの携帯端末から音声が流れる。
ブロックに埋め込まれたIC(集積回路)タグに記録された位置にかんする情報を、約1.3メートルのつえの先端のセンサーで読み取る。読み取った情報は携帯端末に送られ、その情報を音声で利用者に伝える。
誘導ブロックとつえを頼りになんとか前には進める。が、目が見える時にはすぐ分かる数メートル先のトイレや階段の位置がつかめない。そのうちどこを歩いているのか分からなくなる。
「左側、約5メートルにトイレです」「まっすぐ3メートル歩くと、エレベーターがあります」などの音声で、周囲の状況をおぼろげながら知ることができた。
トイレの中でも、思いもかけないことが視覚障害者を困らせる。このシステムだと、トイレットペーパーや洗浄ボタンの位置など、かゆいところに手が届く情報を声で教えてくれる。

車いす利用者用の情報端末には、バリアフリーで移動できる道順が矢印で表示される
車いす利用者が会場のスロープの位置などを知ることができるシステムの実験も行われている。視覚障害者向けのシステムとほとんど同じ仕組み。車いすの下に装着したセンサーで、路面などに埋め込まれたICタグから情報を読み取る。
モニターの対象は障害者が中心だが、日程によっては一般の人も参加できる。事前に申し込みが必要で、登録された参加者は、本人と介添人一人の万博入場料が無料となる。申し込みは同プロジェクトのホームページhttp://www.jiritsu-project.jp/で。
