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だれでもが暮らしやすい「ユニバーサル社会」の実現への期待を込めて、未来像を描いてみた。
「駅はこの先50メートルです」。繁華街を歩く視覚障害者の幸子さんの携帯端末から、こんな音声案内が聞こえてきた。付近の段差やトイレ、電車の出発時刻なども教えてくれる。すれ違う若い女性たちは、端末の液晶画面を見て談笑している。お好みのレストランを探しているようだ。込み具合まで分かるので、とても便利だ。
知りたい内容を端末に吹き込むと、道路に埋め込まれた超小型のコンピューターチップが反応。データベースから瞬時に必要な情報を端末に送ってくれる。幸子さんは、「このシステムのお陰で『行ける』場所ではなく、『行きたい』所へ行ける」とうれしそうだ。東京大学と国土交通省による実証実験も始まっており、ユニバーサルな街はもはや夢ではない。
郊外に三世代で暮らす妊娠中の智恵子さんの家庭をのぞいてみよう。智恵子さんはつわりがひどく、横になることも多い。子どもも目が離せない。しかし、気がかりな火を使う料理は、出来上がると点滅ランプが音声とともに知らせてくれるので安心だ。片手で持ち運べる調理具や簡単にびんのふたを開けられる器具も。ナイフやフォークは、めん類でも簡単につかめるので、おじいちゃんや子どもに好評だ。
「現場の進み具合は?」「先方のニーズは」−−。車いすで生活する正さんは、会社の在宅勤務制度を利用している。テレビ電話がさらに進化、三次元ホログラムによって、工事現場や職場の担当者と"会議"もできる。
レジャーもユニバーサル化が進む。例えば、ヨット。操作盤の棒を前後左右にするだけで運転できる。裕次郎で青春を過ごした世代に、ヨットブームが起きるかもしれない。
こんな社会が実現できれば、ユニバーサル社会は、もはやニュースでなくなるだろう。果たして……。
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