えん罪が晴れ1年4ヶ月。村木厚子さんから、支援者の皆さまへの「ご報告」が届きました

2012年2月6日

えん罪が晴れ、1年4ヶ月前に内閣府政策統括官として職場復帰された村木厚子 さんから、 『上村元係長の判決があり、国家賠償請求についても一定の結論が出ため、支援 者の皆さまへ「ご報告」申し上げます』 というメールとともに、「支援者の皆さまへのご報告」(署名付き)が届きました。

厚労省でこのような事件が起きたことを真摯に反省されるとともに、国家賠償金 については、罪に問われた知的障害のチャレンジドらが、適正な取り調べと公正 な裁判が受けられるよう、また社会復帰と自立を支援するための基金を創設され るとのことです。

村木厚子さんからの、心からの「ご報告」を、読んでいただければ幸いです。

<by ナミねぇ>

 

支援者の皆さまへのご報告

ご支援くださった皆様へ

厳寒の候、皆様にはいかがお過ごしでしょうか。
みなさまのご支援により無罪が確定し、職場復帰させていただいてから早や1年4か月が経ちました。現在、内閣府政策統括官共生社会政策担当として元気に仕事をさせていただいております。
昨年母を亡くし、みなさまには年始のご挨拶も失礼いたしましたことをお許しください。母の死は本当に悲しいことでしたが、せめても、無罪が確定し、母に安心をしてもらった後であったことが救いでした。

さて、みなさまにご報告を申し上げたいことがございます。

一つは、今回の事件に関する私自身の処分に関してです。
偽の証明書の発行に関わった厚生労働省の上村さん(元係長)の裁判が1月23日にやっと終わりました。判決は、上村さんが偽の障害者団体だと認識せず単独で証明書を発行したものと認定し、懲役1年、執行猶予3年の刑に処すというものでした。彼の行為は公務員として決して許されるものではありませんし、また、私自身の管理責任も重大なものがあり、深く反省をしております。役所においても、近く私を含め関係者の処分があるものと思います。今回のことをしっかり受け止め、自身の、また、組織の信頼を回復するべく、一層職務に精励したいと考えております。改めて心からお詫びを申し上げますとともに、今後とも厳しくご指導をいただきますようお願いを申し上げます。

二つ目の報告は国家賠償請求訴訟に関してです。
事件の後、検察の在り方については様々な問題提起がなされるようになり、その改革のための検討が始まりました。ただ今回の事件そのものの検証、なぜ私が逮捕されたのか、なぜフロッピーの改竄までして事件を作り上げたかったのか、なぜ検察は途中で引き返すことができなかったのか、そういったことの解明は進みませんでした。真相を少しでも明らかにしたいと、一昨年の12月に国及び担当した検察官を相手に国家賠償請求の訴訟を提起しました。国家公務員が国を相手に賠償請求をすることに大きな迷いもありましたが、真相解明やこうしたケースでの被害者への補償の先例を作りたいとの思いから訴訟に踏み切りました。この訴えに対し、国は昨年10月、報道機関へのリークに関する訴えを除き、当方の訴えを「認諾」、すなわち、訴えを全面的に認め、請求額を全額支払うとしました。
裁判には勝ちましたが、国が当方の訴えに対し内容を一切争わなかったため、真相を明らかにするという当初の目的は果たせず、大変残念な結果となりました。なお、国が認めなかった報道機関へのリークの問題については、裁判を継続するつもりです。
支払われた賠償金ですが、本来ならば、ご支援をいただいた皆様方にお返しをすべきかもしれませんが、それが国民の税金から支払われたものであること、また、今回のことは刑事司法の抱える問題の深刻さの一端であり、その犠牲になっている人がたくさんいることなどを考え、この問題にかかわりの深い公共的な活動の支援に使わせていただきたいと思い至りました。
具体的には、罪を犯した障害者の支援に実績のある社会福祉法人に寄付し、知的障害などハンディキャップを持った人が適正な取り調べを受け、また、公正な裁判を受けられるようにするための活動や罪を犯した障害者の方々が社会に復帰し自立することを助ける活動を支援する基金を作っていただくことになりました。皆様のご理解をいただくことができれば幸いです。

刑事司法の抱える問題の改善のため、国家賠償請求という手段は潰えてしまいましたが、私自身、法務省の法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会の委員に任命され議論に加わることができるようになりました。微力ですが、ここでの議論を通じてこの問題の解決に少しでも貢献していきたいと存じます。

皆様にお助けいただいたことに改めて心からお礼を申し上げ、また、公務員として、また、検察の抱える課題に遭遇した一市民として、今後ともできることをしっかりやっていきたいと思っております。どうか、これからもご指導いただきますよう心からお願い申し上げます。

寒さ厳しき折、どうか、ご自愛ください。

平成24年1月31日

村木厚子

ページの先頭へ戻る