朝日新聞 2012年6月26日より転載

[写真]ナミねぇ

教えて! 消費税 パート2

働く場創出、もっと関心を

社会福祉法人プロップ・ステーション理事長 竹中ナミ氏

 

消費増税関連法案が26日、衆院本会議で可決される見通しだ。政府はこの法案で、税と社会保障を一体改革したいと言うが、うまくいくのだろうか。経済・財政や社会保障にくわしい人たちに問題点を聞いた。

 (聞き手・伊藤裕香子)

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「社会保障」というと、強者が弱者を救うことと思われがち。でも、弱者ができるだけ弱者でなくなるようにしていくことが本来の姿だと思う。増税するからといって、所得が低い層に「手厚い給付をしよう」という考え方には、どうしても矛盾を感じてしまう。

与えるだけの福祉は、人の誇りを奪うと思う。重度障害を抱える39歳の娘と、認知症の85歳の母の2人とも、病院などにかかる費用の9割は社会保障に助けてもらっているけれど、「助けてもらうのが当たり前」という発想はありません。

娘の介護で若い頃に働くことができず、悔しい思いをした時期がある私にとって、社会保障は働く場をつくり出すこと。「税と社会保障の一体改革」であるなら、創業支援や教育など、人の力を引き出し、働く場づくりにもっと関心を払うべきではないでしょうか。

日本は高齢化が進み、誰もがいつ社会保障が必要になるかわからない。国の財政がぎりぎりの中で、社会保障を継続させ、一歩前に進めるには、税と社会保障を一体として考えざるを得ないと思う。ただ、消費増税が政治のかけひきに使われてしまっているのは非常に残念です。

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