スタイルアサヒ 2011年4月号より転載

等身大のワタシが社会を変える
チャレンジドが元気に働ける国に

社会福祉法人プロップ・ステーション理事長 竹中 ナミさん

等身大のワタシが社会を変える

人の持つ力を最大限に生かし母親として社会づくり

 "ナミねぇ"の愛称で誰からも親しまれる竹中ナミさんは「チャレンジド(障害者)を納税者にできる日本を!」をスローガンにプロップ・ステーションを立ち上げ、チャレンジドの就労促進を柱に活動する。日本の福祉の考え方を変えようと、目の前に立ちはだかる壁を大胆に突き破って前進するパワフルな関西人だ。

 「そもそも私は元不良で、重症心身障害の娘を持つオカン。世のため人のためというよりも、オカンとして、娘を残して安心して死ねる社会を作りたいという思いで取り組んでいます」

 日本の福祉の考え方に疑問を持ったのは、娘に障害があると分かったころ。「私の父が思いつめて『ナミが不幸になるから孫を連れて死ぬ』と言ったことがありました。生まれてきたのに、いないほうが幸せなんておかしい。障害を持つ人は可哀想、そんな意識から始まって、仕事も出来ない、結婚も出来ない、だから社会で面倒をみてあげる、そんな"ないない"づくしの生き方しか示すことが出来ない社会制度は、根っこから変えなあかん」

 働く意欲のあるチャレンジドから「コンピューターの仕事なら出来る」と聞き、持ち前の度胸と得意な話術で企業や支援者らに協力を願い、コンピューターで仕事が出来る環境を整えた。「娘を育てる中で様々なチャレンジドに出会い、個々に能力を持っていることを教わりました。人の持つ力を生かせないなんて、もったいない。得意なことをつなぎ合わせると何かが生まれます」

 チャレンジドには「挑戦する使命を与えられた人」の意味があるという。「言葉には大きな力があって、チャレンジドと聞いて当事者やその家族らで元気になった人がいっぱいいます。視点を変えることは大事です。そのためには"気"と"苦"の違いを意識すること。気にするといろいろなアイデアが生まれるけど、苦にした瞬間から考えが浮かばなくなる。"苦"を"気"に変えて、チャレンジしていこう!」

岡本講師の写真
コンピューター・セミナーの様子。
左から2人目は足の指でマウスを扱う、講師の岡本敏己さん。 同セミナーの第1期卒業生でもある

竹中ナミの写真

名前
たけなか・なみ(1948年兵庫県生まれ)
趣味
人に会うこと。歌うこと
好きな食べ物
ピーマン以外なら何でもOK
大切にしている言葉
元気と誇り
Person's career
24歳の時に重症心身障害の長女を授かり、障害児医療・福祉・教育を独学。ボランティア活動に携わった後、1991年にプロップ・ステーションを設立。98年に社会福祉法人格を取得し理事長に
メッセージ
私と同世代の60代の皆さん、あなたは若い! 私も若い! 私がプロップ・ステーションを始めたのは42歳。40代は何でもできる時やでぇ

★社会福祉法人 プロップ・ステーション

 ICT(情報とコミュニケーション技術)を活用して就職相談やパソコンの技術指導、在宅ワークのコーディネートなどを行い、チャレンジド一人ひとりが持っている能力を生かせる社会制度の実現を目指す。2008年から日清製粉株式会社と協力して一流のパティシエから製菓技術を学び、将来の就労に役立てる「神戸スウィーツ・コンソーシアム」を展開。

神戸ネットワークセンター
神戸市東灘区向洋町中6-9 神戸ファッションマート6E-13
TEL078-845-2263 http://www.prop.or.jp/

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