日清製粉グループ社会・環境レポート2009より転載

社会性報告 社会とのかかわり

技と心をチャレンジドに伝える

「挑戦(challenge)する使命や才能を与えられた人」を語源とするチャレンジド(障がい者)。 このチャレンジドからプロのパティシエを輩出したいという想いから誕生した神戸スウィーツ・コンソーシアム(KSC)。日清製粉(株)は、このプロジェクトの主旨に賛同し、社会福祉法人・行政・メーカー・卸売業などさまざまな支援者とともに、KSCに協賛しています。

 

日本で初めての試みがスタート

 KSCは、「スウィーツの世界で活躍するチャレンジドを生みだそう!」を合言葉に、社会福祉法人プロップ・ステーションの呼びかけのもと、日清製粉(株)、(株)日東商会(製菓・製パン原材料卸)、一流パティシエ、行政など業界の垣根を越えたメンバーがパートナーシップを組み、2008年6月に洋菓子発祥の街と言われる神戸で発足しました。

 2009年6月、開催地を東京に移し、プロのパティシエを目指す熱意あるチャレンジドを新たに8名迎えて、半年間で計6回の講習を受講する「KSC in 東京」がスタートしました。

チャレンジドと社会を小麦粉でつなぐ

 お菓子づくりには欠かせない小麦粉を扱う日清製粉(株)は、原材料を提供する以外にも、講師になってくださる一流パティシエや受講生が作業しやすい環境を整える裏方として、会場や技術スタッフを提供しています。あらゆる食品に姿を変えていく原材料としての小麦粉が、チャレンジドと社会をつなげる役割となることを目指しています。

 すでに「KSC Vol.1」を受講し終えた第一期生のなかには、将来自分の喫茶店を持ちたいという夢を抱きながら、ここで習得したお菓子をお客様に提供しているチャレンジドもいます。今後も日清製粉(株)は、KSCのパートナーシップの一員として、本業を通じてパティシエの輩出を支援していきます。


1. 7月に開催された2回目の講習では、ムースに挑戦しました。 2. サポートスタッフとして参加した社員もチャレンジドを陰で支えています。 3. パティシエ八木氏の教えのもと、熱心に実技に取り組むチャレンジドたち。

KSCに参加したチャレンジドからのコメント

 

斎藤 健さんの写真

斎藤 健さん
cafe ふれあい 店長

働きたいと願うチャレンジドを勇気づけたい

 「cafe ふれあい」(東京都豊島区)で店長をしています。シフォンケーキとチーズケーキを長年つくってきましたが、客層も変わってきたので、お菓子のレパートリーを増やしたいと思い応募しました。講習で教わったマドレーヌはすでにお客様から100人前注文が入りしゃかりきになって何回も試作しています。より多くの人に食べてもらって、自分たちの可能性を世の中に知ってもらうとともに一所懸命働きたいと願う他のチャレンジドを勇気づけたいです。

 

森田 栄一さんの写真

森田 栄一さん
cafe ふれあい 勤務

自信を持ってお客様に提供できるようになる!

斎藤さんと同じカフェで働いています。一流のパティシエが講師と知り、すばらしくて、面白そうで、本当にありがたいなと思い応募しました。受講して、いろんなパティシエの方が手取り足取り教えてくれるので、本当に嬉しいです。マドレーヌはまだ成功していないのですが、店長の斎藤さんからも教えてもらって上手になりたいと思います。今後の目標は、講習で教わったスウィーツを、自信を持ってお客様に提供できるようになることです。

 

 

KSCは、社会福祉法人・行政・メーカーなどの
パートナーシップで成り立っています

 

竹中ナミさん
社会福祉法人プロップ・ステーション
理事長

福祉の世界の意識をガラッと転換したい

KSCの受講者の選考基準は、「熱意」です。応募の際には、講習に参加する目的やお菓子づくりを通じた夢を書いてもらいます。なかには字がちゃんと書けないから、かわいい絵を送ってこられる方もいます。小麦粉がいろいろなものに加工される素材であるように、チャレンジドも一人ひとりがすばらしい素材だと思うんです。その素材をどう光らせ、その人が一番輝けるところで仕事をしていただけるようにするという意味で、日清製粉さんという「企業」と私たちが最初から一緒にKSCを計画できたことの意義は大きいと感じています。KSCが「ああそうか、こういう風に技術を身につけ、世に打って出ればいいんだ」というひとつの方向性を示し、チャレンジドだけでなく福祉の世界全体の意識をガラッと転換するようなプロジェクトでもありたいですね。

八木淳司さん
オーストリア国家公認製菓マイスター
モロゾフ(株)テクニカルディレクター

回を追うごとに成長する姿にやりがい

障がい者の自立支援施設でパティシエがお菓子づくりをチャレンジドに教えることはよくあるのですが、KSCは、従来のそういった取り組みとは根本的に違う、今までに聞いたことのないようなプロジェクトだったんです。ひとつの施設に教えにいく場合、みんなそれぞれレベルが違うので、みんなの能力を底上げすることは難しいんですね。KSCでは、そういった点などをかなり補えるんじゃないかと思っています。回を追うごとに脱皮していくかのように変わるチャレンジドの姿を見ると本当にやってよかったと思います。実技では食材にオーガニックやフェアトレードのものを使ったり、リサイクル材でつくられた器も使っています。技術だけではなく、食にかかわるさまざまな情報を提供し、リテラシーを高めることもKSCの役割のひとつです。

田子敏也
日清製粉(株) 営業本部 第一営業部 営業企画課 課長

障がい者支援のソーシャルビジネスへの挑戦

障がい者の自立支援施設の多くでは、お菓子づくりが行われ、製粉会社にとってチャレンジドはいわばお得意様です。しかし、これまで社会貢献の接点はあまりなかったため、最初は不安もありました。原材料としての小麦粉は、非常に使用用途が広く、いろいろな業種にまたがったお得意様がいるので、日清製粉は自然とKSCのハブのような役割を担うようになりました。これから修了生が実際に販売するとなれば、社会志向型商品としてのブランディング戦略も必要になり、コンソーシアムの総合力が試されるでしょう。コンソーシアムを構成するパートナーがそれぞれ魅力的だと思うメリットを享受できるようなソーシャルビジネスに育てることも私たちの挑戦のひとつだと考えています。

関 靖彦
日清製粉(株) 研究開発本部 テクニカルセンター 所長

技術者として一流パティシエの技も学びたい

田子さんが去年からKSCに協力して頑張っていることは知っていたので、共感してお手伝いしています。私たちは、普段からお得意様向けにパンやお菓子づくりの講習会や勉強会を開催していますので、いつもやっていることとそんなに変わらないと感じました。一流パティシエのお菓子づくりの場に立ち会い、その傍らで材料の扱い方など一流の技を私も覚えていきたいですね。実際に、講習でお手伝いしたマドレーヌは、自分たちが焼いているものより各段においしかった。受講生の皆さんの想いに「一緒に動いて働きたい」と思う社員がいれば、ぜひ、参加してもらいたい。

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