教育家庭新聞 2009年2月7日より転載

「The challenged」を納税者に

特別支援教育 東京電機大学で講演

"支えられる"から"支え合う"存在に

プロップ・ステーション 理事長 竹中 ナミ氏

 社会福祉法人プロップ・ステーション理事長の竹中ナミ氏による講演会「チャレンジドを納税者にできる日本に」が、1月30日、東京電機大学神田キャンパスで行われた。チャレンジドとは「障害を持つ人」を表す米語「The challenged」から生まれた言葉。挑戦するという使命、チャンスや資格を与えられた人、という意味だ。当日は約200人の聴衆が参集した。

 プロップ・ステーションは19年前、パソコン通信を使った活動をおこなう草の根グループとして発足。働く意欲を持つ障害者が仕事をして納税する社会、すべての人が持てる力を発揮し、支え合って構築する「ユニバーサル社会」の実現を目指す。「ICTを駆使してユニバーサル社会を目指す」、「社会に支えられる人ではなく、社会を支える人になろう」という方針で活動している。

 プロップ・ステーションでは、チャレンジドがプロとして仕事ができるようになるために、一流のデザイナーやクリエータの人々に技術を教えてもらう活動を20年前から進めている。

 昨年からは、東京にも拠点ができた。「あともう一歩の技術を身につけたら、プロとして仕事ができるようになる」人を対象に、技術を学ぶ講習会を開催している。

 48年前、チャレンジドを納税者にする、というアプローチを明確に主張したのは、J・F・ケネディだ。すべてのチャレンジドを納税者にするために、ADA法(=Americans with Disabilities Act アメリカ障害者法)が1991年に制定された。障害を持つアメリカ人は、障害を持たない人と同じように地域で働き、暮らし、活動し、税金を納める権利がある。

 プロップ・ステーションのカウンターパートナー(提携先)は、国防省の中にあるCAP(Computer/Electronic Accommodations Program)だ。CAPは連邦政府職員と障害をもつ軍人に対し、最新のハードやソフトなどを利用して仕事ができる環境を整備している。

 竹中氏は、「日本には、事故などで全身障害になり退職せざるを得ない人が多くいます。一方アメリカに行くと、どの省にも全身障害がありながら電動車椅子で働いている人がたくさんいます。日本はアメリカのこういう部分をほとんど知りません」と、その違いを指摘する。

 プロップ・ステーションでは、昨年、『神戸スイーツ・コンソーシアム』(KSC)の取組を開始した。これは、お菓子作りのプロを目指しているチャレンジドに一流のプロに教えてもらい、一流のスイーツを作るプロを目指すというもの。チャリティーとして買ってもらうのではなく、美味しいから買ってもらえることを目指した取組だ。

 本取組は、日清製粉の協力を受けて、神戸工場の料理場が提供された。講師も、八木淳司氏(オーストリア政府公認マイスター・モロゾフ株式会社テクニカル・ディレクター)が買って出た。三つ星レストランのスイーツのレシピを提供、特別な材料を使うなどすばらしいスイーツを作ることができたという。

 現在、流通メーカの協力を得て、開業支援、商品の販路の開拓を進めており、今年はKSC in東京を実施する。

 「『かわいそう』から、『そんな可能性があったんだ』、『彼らに期待しよう』と思う人が1人でも増えてくれるといいですね」と竹中氏は述べる。

プロップ・ステーション
http://www.prop.or.jp/

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