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毎日新聞 2006年10月6日より転載

 

年年歳歳

 
 

すべての障害者を納税者に

 
 

竹中 ナミ

 

竹中ナミの写真

 ナミねぇです。チャレンジドの就労をバックアップする法律は昨年まで障害者雇用促進法の「企業における法定雇用率の義務化」しかなかったんですが、プロップのように、在宅で介護を受けながらもアウトソーシングされた仕事を請け負うというチャレンジドが増えて来たことから障害者自立支援法と改正障害者雇用促進法では、多様な働き方を創出することに力点が置かれています。

  プロップでは「チャレンジドを納税者にできる日本」というスローガンを掲げています。これは、第35代米大統領に就任したジョン・F・ケネディが1962年に「私はすべての障害者をタックスペイヤー(納税者)にしたい」という内容の教書を議会に提出したことからヒントを得たものです。

  ケネディは、妹のローズマリーさんに知的ハンディがあったので、「障害者は働くことが難しい、ましてやタックスペイヤーになるのは不可能だ、と決めつけることこそが<差別>である」と直感し、「国家が彼らをタックスペイアーにするという強い意思を持たなければならない」と考えたそうです。そして米国の障害者自身も自立運動の中で「私たちはタックスペイヤーになる権利がある」という言葉を掲げて、雇用と就労の道を開拓して来ました。

  プロップの米国でのカウンターパートは、ペンタゴン(国防総省)のCAPという組織ですが、CAPでは最先端の科学技術やITを駆使して、最重度のチャレンジドであっても社会で活躍できるように、技術開発や教育を行っています。

  昨年5月に私はワシントンDCの米政府機関を視察したんですが、どの省でも当然のように全身まひで電動車いすを使ってる人、盲導犬を連れている人、手話のできる秘書を従えた人が幹部として働いていました。

  電動車いすで介助犬で連れている男性が「数学教師」と聞いた時は、ぶったまげたけど、「教材はパソコンで作るし、板書が必要な時はサブ教師がつくから問題ないよ」と聞いて納得。要は、チャレンジドが働くことが当たり前の国と、そうでない国の違いなんや!と痛感させられました。こういうところをこそ、米国から学ばなアカンと思ったナミねぇです。

(たけなか・なみ=プロップ・ステーション理事長)

 




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