[up] [next] [previous]
  

神戸新聞 2003年6月5日より転載  (第3回)

     
 

随想

 
 
スウェーデンのサムハル
 
 
―――――竹中 ナミ
 
 

 

 「社会福祉の先進国」というと、北欧、とくにスウェーデンを思い浮かべる人が多いと思います。でもこの国が、プロップのスローガンである「チャレンジド(障害を持つ人)を納税者にできる日本」というミッションのお手本である、というと驚く人が多いんちゃうかな。

 スウェーデンにサムハルという企業があります。国内ベスト10の業績をあげているんですが、32,000人の社員のうち28,000人がチャレンジドです。30年前、チャレンジドが納税者になることを目指す国策企業として設立され、膨大な税金が投入されて技術訓練に力を入れてきたけど、今では投入される税の何倍もの利益が社会に還元されています。

 サムハルの特徴は、重度の人から優先的に雇用し、出来る限りその人の「やりたい仕事」を創出する点です。すべての人が力を出して国を繁栄させるんや! という国家戦略がそこにあります。

 例えばパソコンを使った在宅ワークで10万円の収入を得る人も、障害を持たない就労者と同じ28%の税金を支払います。でもそのチャレンジドは「税金を払うのは私の権利だ」というのです。なぜなら働く国民全員が支払う税金の総体で彼が働ける環境整備がなされるシステムになっているからです。

 スウェーデンは100年前には貧困の極みにあり、高齢者や障害者などを殺戮(さつりく)するという歴史を経験しました。その国が180度の政策転換をしたことで世界一の福祉国家と呼ばれるまでになったんよね。世界一のスピードで少子高齢化が進む日本に生きる私たちが学ぶ事はいっぱいあるで! とサムハルとの連携を推進しているプロップです。

(たけなか・なみ=社会福祉法人プロップ・ステーション理事長)