チャレンジド・ジャパン・フォーラムで発表された

 
     
 

就労事例

 
     

――― 松田あきらさん ―――

肢体不自由で車椅子での生活をしている松田さんは、以前5年間ほど一般企業に勤めていた。会社ではコンピュータを使って仕事をしていたので、コンピュータに関連した仕事ができればと思い、プロップ・ステーションのメンバーとなった。現在は日本電信電話株式会社(NTT)から仕事を受注している。NTTの「ハローネット・ボランティア」の、ボランティアに関するページへのリンクを張っていいかどうかということを、ページ作成者にメールで了解を得る作業をしている。

「通勤していたころは会社への行き帰りにも時間がかかり、仕事をして帰ってきて寝るだけ、という生活でした。在宅勤務のほうがはるかにやりやすいですね。仕事の作業自体はほんとうにシンプルで、生活のリズムもいいですね。マイペースでやれます」と、ネットワークの有効性を語る。現在、同じ在宅就労者4人と共同して、ネットワーク上でやりとりしながら仕事の量を割り振れるので、効率もいいそうだ。

在宅就労の有効性を語る松田あきらさん(中央)。

――― 久保利恵さん ―――

「絵本作家になるのが夢」と語る久保さん。生後6ヵ月にウエッドニッヒホフマン病が発病して以来、首から下の筋力がほとんどないという。全介護が必要で、自宅では電動車椅子を自分で操作し、屋外では手動の車椅子を押してもらって生活している。

「安定した収入を得て、経済的にも自立して、絵本作家になりたいという夢を追いかけているんですけど、副業(イラストレーター)を充実させてお仕事(絵本作家)をやりたいな、と思っています。自分は絵を描くのが得意なので、それを生かせればと思って、マックのセミナーに2年間通いました」と語る久保さん。昨年、関西電力の45周年記念事業の広報イメージイラストを描いたのが最初で、イラストレーターとしてのデビューを果たした。最近も同じく関西電力から、イラストの発注を受けている。これはプロップ・ステーションと関西電力とのつながりがきっかけだった。障害を持ったフリーにクリエーターが大企業にアプローチするのは、かなり困難がつきまとう。この問題をスムーズにしたのが非営利団体としてのプロップ・ステーションである。発注側である関西電力の絹川氏も、コーディネーターとして非営利団体の地位向上を訴えていた。絵本作家としてのデビューはまだ果たしていない久保さんだが、挑戦は続く。

絵本作家を夢見る久保利恵さん。

――― 吉田幾俊さん ―――

吉田さんはマクロメディア株式会社からの発注を受けて、ブラウザー上でアニメーションが動く「ショックウェーブ」のデータを、同社の「ディレクター」というソフトウェアを使って作成している。肢体不自由で手描きのイラストを描くのもままならないという吉田さんは、コンピュータグラフィックスの有効性を強調する。

「手が震えて、線1本もまともに引けないという状況だったんです。絵を描こうと思っても、どういう風に表現するかというその方法がなかった。それで、コンピュータというツールができたのがありがたいと思っています。「ディレクター」を使ってアニメーションで自分のイメージを持って自分で身につけることができたので、感謝しています。

「マウスだと震える手でも直線が引ける」と吉田さんはコンピュータでのメリットを強調する。「自分のやりたいことをどう表現するか、自分のやりたいことをどういう風にやるかということを、マルチメディアは可能にしていくんじゃないか」と語る。

吉田さんにとって、コンピュータは人生を変えたツールであるとさえ言える。前述した久保利恵さんとともに、関西電力の仕事を行ったこともある。

 
マウスによるコンピュータグラフィックスの可能性を語る吉田幾俊さん(中央)。