作成日 1998年12月吉日

 
 
 
(4)セッション3ケーススタディ「企業・組織における就労創造への取り組み」(17:40〜18:45)
  • オープニングムービーは、プロップ・ステーションの吉田幾俊さんも参加している「プロップ・バーチャル工房」の制作によるもの。
     
  • ナビゲータ・プレゼンテータ紹介。(司会)
     
-------------------------------------
  • それでは、セッション3ケーススタディ「企業・組織における就労創造への取り組み」について始めたいと思う。
     
  • チャレンジドの人が仕事を受ける、チャレンジドに仕事を依頼する、そしてその間に立つ人が壇上に上がっている。
     
  • 一番目は「VCOMジョブ・マッチング・システム」の紹介である。(田中)
     
-------------------------------------
  • 「VCOMジョブ・マッチング・システム」の慶応大学のプロジェクトについて説明をする。(ホームページを見ながら)
     
  • この中の「CWF」は、チャレンジドの就労を支持するもので、プロップ・ステーションや東京コロニーなどと一緒に行っている。企業の雇用担当やチャレンジドのフリートークの場、チャレンジド就労の情報提供など、いろいろなコーナーがある。求職者や企業の人の求人データを登録してもらい、それをデータベース化しているのが「ジョブ・マッチング・システム」だ。VCOMでは、職業斡旋はせず、自由にマッチングをしてもらう情報広場を提供しているということだ。これまで実験運用してきて、いろいろな方からコメントをもらい、それらをまとめ、この9月末までにはシステムを改訂する予定だ。現在のシステムは、富士通から一年間国内留学制度を使ってVCOMにきてくれたボランティアの人が中心に作った。日本オラクルからは、データベースソフトウェアを提供していただいているが、システム管理やシステム改訂にたくさんのボランティアに来てもらっている。(宮川)
     
-------------------------------------
  • 日本オラクル社員ボランティアが「VCOMジョブ・マッチング・システム(JMS)」に関わったきっかけは、それまで中心的に動いていた富士通からのボランティアが仕事に戻ったので、オラクルからだれか「ボランティアでやってくれないか」と金子さんから話があり、社内でボランティアを募集するメールが流れた。1名の募集だったが、それに10余名集まってきた。やる気のある人が多かったので、社内に「VCOMクラブ」を作り、JMSだけでなくいくつかのプロジェクトに自発的に参加している。・ジョブ・マッチング・システムのオラクルの取り組みは、「JMSのメンテナンス」と「次期JMSの開発」だ。
     
  • 現在のJMSシステムの基本的な目的は、チャレンジドと企業とを結びつけることである。非営利的なもので、JMS利用について料金は一切とらない。
     
  • 仕事を探している人の登録では、資格や経験や「例えばこんなことができる」ということを登録してもらっている。
     
  • 求人情報を登録している企業としては、日本オラクルの他に日本ヒューレット・パッカード、マイクロソフト、ニフティ、や慶応大学など現在12社、団体が登録している。一方、求職希望は250件以上ある。
     
  • 会社の概要と求人内容は誰でもこのように(ホームページを見せながら)見ることができる。
     
  • (ホームページ上で「人材の項目」を見ようとした時、その画面がなかなか出なかったことについて)これは求職の登録の方が多いからだ。それに比べて企業の登録は少ないので、企業の方々にはもっと協力していただきたい。
     
  • 人材登録を見ると、資格やどんなコンピュータを使っているのかがわかる。ただ、ここでは求職者の個人を特定するような「個人データ」は見られないようになっている。個人情報の一部は、企業・団体登録をしてくれた企業や団体にのみ見せるようになっている。
     
  • 企業側から自分の会社で求めるスキルを持つ人の検索をすることもできる。求職者も企業の検索ができる。
     
  • 次期のJMSでは、求職・求人だけでなく、業務請負/業務委託というカテゴリーを作ったり、知的障害者の施設などによる雇用希望の登録などにも対応したい。また、利便性の向上を図りたいと思う。(藤本)
     
-------------------------------------
  • 「ジョブ・マッチング・システム」は、研究というかたちで自発的に登録された情報提供サービスを行っている。しかし、今のままでは、登録された情報の信頼性ということについてあまり厳密なシステムにはなっていない。
     
  • 例えば、企業が仕事を委託しようとして登録情報を見た時に個人が「自分はこれがしたい」というデータだけでは、企業側としてはいまひとつ不安だろう。「○○の紹介です」「プロップ・ステーションで講習を受けた」というような(具体的な)情報が掲載されていれば企業側も安心する。JMSにおける情報の信頼性をどうやって高めるかということについては、個人認証システムをきちんと導入することを含めて、研究レベルでも実施レベルでも現在検討中だ。(宮川)
     
-------------------------------------
 大袈裟に言うと、大学と企業が一緒になって職安をやっているみたいだ。職安との違いはどういうところか?(田中)
 
-------------------------------------
  • 動くことが不自由な障害者でも在宅であれば仕事はできる。職安は自分から(その場所へ)行かなければ情報を得ることができない。そのバリアがとれるという点で、職安にはないメリットがある。
     
  • 一方、「ジョブ・マッチング・システム」では、仕事の紹介や斡旋はしていない。この点で職安とは違う。情報を登録してもらい、それを見たり探したりしやすくしているだけで、雇用主や求職者へのコンタクトはお互いに自己責任で取ってもらっている。(宮川)
     
宮川祥子さん・大野麻理さん・藤本広治さん・田中克己さん (17.jpg 9,726Byte)
左から 宮川祥子さん・大野麻理さん・
       藤本広治さん・田中克己さん
-------------------------------------
 「VCOM」に登録されている情報の全体的な傾向を聞きたい。今、どういうふうな仕事が求められているのか。どういうスキルを持った人がいるのか。傾向はどうなのか。(田中)
 
-------------------------------------
 その点ではナミねえの方が詳しいのでは…。(宮川)
 
-------------------------------------
 仕事の全体の傾向を教えてほしい。(田中)
 
-------------------------------------
  • 情報関係、コンピュータだけでなく、インターネットを使った、新しい仕事が生まれてきている。
     
  • 今までは仕事を探すのに職安に行かなければ情報を得ることができなかった。しかし、「ジョブ・マッチング・システム」、これは画期的だと思った。(竹中)
     
-------------------------------------
(仕事の依頼は)ソフトウェアの開発、ホームページを作って下さいというものが多いのか。(田中)
 
-------------------------------------
現状ではコンピュータ関係の仕事が多い。今後はそれ以外の分野も増えて行って欲しいと思う。(宮川)
 
-------------------------------------
  • スキルや仕事は、ホームページ上で登録するのか、それとも、メールで送ると掲載してくれるのか?(田中)
     
-------------------------------------
登録画面をつけてあるので、ここで(ホームページを見せながら)受け付ける。注意書き、同意書があり、一定の条件に同意してもらえれば、必要なデータを入力することで登録していただける。(藤本)
 
-------------------------------------
会場の方から質問はあるか。(田中)
 
-------------------------------------
  • (JMSは)NPOを事業にしたすごいものである。
     
  • 先程、同意書を開かなければ登録できないということだったが、日本では大丈夫だが、ドイツのマルチメディアでは違法である。斡旋業をしなければ良いが…。
     
  • 信頼性が大切である。認証システムが立ちあがって、構築されるべきだろう。法律を勉強してほしいと思う。(会場 須藤・東京大学助教授)
     
-------------------------------------
  • もう半歩踏み込んだら危ない面もでてくるかもと思う。犯罪者にならないように十分注意すべきであると考えている。(笑)
     
  • 法律は守るが、法律の方からも歩み寄ってきてほしい、そういうきっかけにもしたいと思う。(宮川)
     
-------------------------------------
  • また、明日にでも議論として挙げたいと思う。
     
  • 2つ目は「チャレンジド自身による就労事例発表」をしていただく。もうすでに仕事をされているが、どんな仕事をしているのか、こんなこをしたいが何か問題があるとか、そういうことについて話をしていただきたい。(田中)
     
岡本敏己さん・吉田幾俊さん・松田あきらさん・大木隆さん・竹中ナミさん (13.jpg 9,048Byte)
左から 岡本敏己さん・吉田幾俊さん・
松田あきらさん・大木隆さん・うしろは竹中ナミさん
  • また、明日にでも議論として挙げたいと思う。
     
  • 2つ目は「チャレンジド自身による就労事例発表」をしていただく。もうすでに仕事をされているが、どんな仕事をしているのか、こんなこをしたいが何か問題があるとか、そういうことについて話をしていただきたい。(田中)
     
-------------------------------------
以前は、印刷業をしていた。その後、プロップ・ステーションで講習を受け、(コンピュータの)講師ができると思った。多くの人に覚えてほしいと思う。また、裾野を広げていくようなことをしたいと思う。(岡本)
 
-------------------------------------
講師はどのくらいのペースで行っているのか。(田中)
 
-------------------------------------
ポートアイランドの国際交流会館で、週1回2時間だ。受講生のレベルがいろいろで大変だ。吉田さんや石田君たちグラフィックコースOBと手分けをして教えている。(岡本)
 
-------------------------------------
プロップ・ステーションからお給料が出ているのか。(田中)
 
-------------------------------------
お給料は低くないのか。(田中)
 
-------------------------------------
高いが、(勉強をするための)書籍の購入にお金がかかる。(岡本)
 
-------------------------------------
勉強はしないといけない…。(竹中)
 
-------------------------------------
(人に)教えるとなると自分が勉強しなければならない。でも、そのための書籍が、ビデオの中でもあったが高い。岡本さんは、自分で勉強をしているのか。(田中)
 
-------------------------------------
そうだ…。(岡本)
 
-------------------------------------
岡本さんは、一点集中型ではなく、いろいろなことを広く学びたいと思っているタイプ。また、そういう人(生徒)に教えたいと思っている。(竹中)
 
-------------------------------------
吉田さんは?(田中)
 
-------------------------------------
一点集中型だ。(竹中)
 
-------------------------------------
課題は、セミナーで習ったこと以外にスキルアップしなければならないことだ。(吉田)
 
-------------------------------------
一つの作品にどれくらいの時間がかかるのか。(田中)
 
-------------------------------------
一か月くらいだ。(吉田)
 
-------------------------------------
すごい。私が作ったら10年かかってもできそうにない。(笑)(田中)
 
-------------------------------------
仕事としては遅いほうかもしれない。仕事となるとやり直しも必要だ。しかし、時間がないために、今までに創ったものの中から選んでもうらうしかないという時もある。自分が満足できないものを出したくないが、そうばかり言っていられないという厳しさもある。(吉田)
 
-------------------------------------
将来ハリウッドに行って「ゴジラ」の次のものを創るとか、または吉本興業に行くとか…、将来の夢は?(田中)
 
-------------------------------------
やはり、笑いの取れる作品をつくりたいと思う。(吉田)(会場 笑い)
 
-------------------------------------
松田さんは?(田中)
 
-------------------------------------
システム作りをやっている。サブ講師という形で参加している。講師という業務が仕事として可能性があるのではと言われた。(松田)
 
-------------------------------------
MS-ACCESSコースの通信講座か。(田中)
 
-------------------------------------
はい。(松田)
 
-------------------------------------
ボランティア講師にセミナーで教わって技術を身につけたら、今度は自分がボランティア講師を努める、きちんと人に教えられるようになったら仕事(お金を稼ぐ)という順番だ(竹中)
 
-------------------------------------
  • 大学の先生はボランティアなしで先生になっている。
     
  • ワープロや表計算は馴染みがあるが、「データベース」を使う人は少ない。敷居の高いソフトだと思う。(田中)
     
-------------------------------------
自分自身のスキルアップだと思っている。生きた実務を行っていきたい。(松田)
 
-------------------------------------
  • ありがとうございました。
     
  • 次にNTTの方から「チャレンジドに対する発注事例」を発表していただく。(田中)
     
-------------------------------------
(NTTのプレゼンテーション資料を見ながら)
 
  • タイトルには「発注事例」となっているが、マルチメディアのビジネス開発部ということで、プロップ・ステーションと共同事業を行っている。
     
  • NTTでは「World Nature Network」というコンテンツに関する取り組みを行っている。マルチメディアというと企業中心に動いているが、マルチメディアの大衆化というか、いろんな方にマルチメディアを普及させていこうという観点で、当社としては持ち出しでも長い目でみてビジネス性のあるものにしていければと考えており、「A to Z」と称していろんな形のネットワークを作ろうとしている。「WNN」は、マルチのメディアであり、インターネットに限らず音声・FAX・OCR等でもやっている。月に3,500万ヒットで世界的になってきた。IP5,000、登録会員10万人。そのうちのひとつとして「ハローねっと・ぼらんてぃあ」を位置付けている。NTTの中の仕事をプロップにお願いするのではなくてプロップ・ステーションと一緒に「ハローねっと・ぼらんてぃあ」というページをつくり、皆様に評価を頂いた。ここでは、ボランティアの情報支援、就労機会の支援を行っている。チャレンジドにとって就労を実際にもらえないと意味がない。その中で情報支援、チャレンジドの就労機会の提供などを組み合わせながら行っており、そのプロセスとしてはステップアップを図るべくやってきた。最初はハイパーリンクの調査をしながら、次にホームページの作成をお願いしている。そして、その次にCGやエッセイ等の、チャレンジドの夢を実際にホームページ上でアップしている。(チャレンジドの方に)いろいろ作成してもらっている。
     
  • また、仕事のやり方としては、「距離」を克服するというマルチメディアの利点をフルに使って、空間移動にマルチメディアを利用して行っていきたいと思う。ネットワークを利用して仕事を依頼し、ネットワークを利用して仕事を納品するというように…。動画系については光ファイバとか必要かもしれないが、現在の静止画中心のコンテンツであれば、銅線を利用したデジタル伝送をフルに利用することで十分にマルチメディアコンテンツをネットワーク上で納品できるシステムができると思う。
     
  • プロップ・ステーションの人(チャレンジド)はクオリティが高い。高スキルの人がたくさん出てきている。ホームページの依頼では、文字ベースのホームページ、画像を入れたホームページといろいろな仕事を依頼できる。チャレンジドの習熟度に応じた仕事を発注することができる。
     
  • マルチメディアをうまく利用することによってチャレンジドの就労の機会が増えていくだろう。我々は支援の立場ではなくジョイントしていきたいと考えている。(大木)
     
-------------------------------------
プロジェクトは何年くらいつづくのか。(田中)
 
大木隆さん (10.jpg 7,550Byte)
          大木隆さん
-------------------------------------
「WNN」の取り組みは社会貢献的意味合いもあるので、会社が倒れるまで続けたいと思う。(大木)
 
-------------------------------------
会社が分割しても続けてほしい。(田中)
 
-------------------------------------
私、会社の分割の担当もしておりますので、それなりに頭においている。(大木)
 
-------------------------------------
このセッションでは重要な問題提起がされていると思う。まず、仕事を受ける人と出す人をつなぐ仕組みの問題が重要だろう。従来型の斡旋業とは違うようにしてほしいと思う。信頼できることが大切である。次に重要なのは、情報技術の教育/自己啓発であると思う。チャレンジドの仕事として、情報技術の講師の仕事は重要。情報教育の裾野は広く、需要も増えるのではないかと思う。また、チャレンジドが、(講師も含めた)情報関係の仕事をするためには、情報技術分野の進歩は急速であり、絶えず自己啓発/自己研修が必要となるだろう。この場合、チャレンジドが最新の情報技術の習得ができるような環境を、社会システムとして作ることも重要だ。研修のコストの問題もばかにならない。一企業の社会貢献として行うのではなく、ジョイントして、チャレンジドの情報技術の取得/向上を図る仕組みが必要だと思う。(田中)
 
 
 
  [up]  [next]  [previous]

TOPページへ