朝日中学生ウイークリー 12/5 より

「できる」ところ見てほしい

   竹中ナミさん(社会福祉法人プロップ・ステーション理事長)

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 「障害の障は妨げる、差し障るという意味。それに害までつける障害という言い方は、マイナス思考な呼び方だと思いませんか。われわれは障害者のことを『チャレンジド』と呼んでいます。アメリカで生まれた言葉で、『挑戦という使命や課題などを与えられた人』という意味です」

 こう話すのは、社会福祉法人プロップ・ステーションの理事長、竹中ナミさ(62)=写真。神戸市を中心に、チャレンジドにパソコンを使った在宅の仕事などを紹介する活動を続けています。

 竹中さんの長女(37)は重度の脳障害を持って生まれました。長女の障害と向き合い、大勢のチャレンジドと出会っていくなかで、チャレンジドを「かわいそうな人、気の毒な人」と見る日本の考え方に疑問を持つようになりました。

 「できないところを見るのではなく、どんな能力があるのかという視点で考えれば、チヤレンジドにできることはたくさんあるはず」

 前向きな発想を抱き、1991年に組織を設立。プロップ・ステーションでパソコンを学び、ホームページやグラフィックの作成などの仕事を手にしたチャレンジドはこれまでに数百人に上ります。

 「社会の意識を変えるためには、チャレンジドがしっかり働けるということを実際に見てもらって証明するのが一番。時間はかかるけど、それしかない」

 小中学生向けの講演などでは、チャレンジドと健常者が共に学び、働くことでチャレンジドにどんな手助けが必要で、どんなことができるのかを経験することの重要性を訴えています。

 3年前からは、パティシエになりたいチャレンジドを募集し、一流のパティシエの指導を受ける講習も行っています。

 「障害者が作ったから」ではなく、「おいしいから」という理由で買ってもらえるスイーツを作り、販売してもらうことが目標です。

 「借金大国の日本で、チャレンジドの力が眠らされているのはもったいない。福祉に使われるお金だっていつなくなるかもわからないのだから、チャレンジドも自分で働き、稼ぎ、税金を払ってもらわなくっちや。『チャレンジドを納税者にできる日本』。これが私たちの組織のキャッチフレーズです」

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