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読売新聞 2009年6月30日より転載

企業の技術 障害者に伝授

厳しい雇用 能力向上支援

 不況で障害者の雇用が厳しさを増すなか、「雇用」の形ではなく、施設やノウハウなど、企業が持つ「資源」を、障害者の職業能力向上に役立てる試みが相次いでいる。

(梅崎正直、写真も)


野沢孝彦シェフ(右)に技を学ぶ障害者(東京都中央区、日清製粉小網町ビル)

パティシエから

 おそろいのエプロン、緑色の三角巾(きん)を着用すると、満面の笑みがこぼれた。

 今月中旬、東京・日本橋小網町の日清製粉社内施設を開放して行われた「神戸スウィーツ・コンソーシアムin東京」(主催・社会福祉法人プロップ・ステーション)。作業所などで菓子作りに励む知的・精神障害者たちに、菓子職人(パティシエ)たちが一流の技を伝授する試みだ。

 この日は全6回のうちの初回。書類審査で選ばれた受講生8人が集まった。講師は、洋菓子店「モロゾフ」のテクニカル・ディレクター、八木淳司さんら4人だ。

 マドレーヌの材料を計量し、合わせる。型に入れオーブンへ。みんな同じ形や焼き色になるはずが、うまく生地が膨らまなかったり、焼き色にムラがついたり。

 受講生の1人、森田栄一さん(39)は「出来栄えはちょっと残念でした。普段作っているお菓子とは、手順が全然違う。すごく勉強になります」。横浜市のウィーン菓子店「コンディトライ・ノイエス」の野沢孝彦シェフは「参加者が持つ特性に合わせて作業を工夫すれば、将来、菓子店としても十分にやっていける」と指導した手応えを話す。

 受講生たちは、ここでプロの技術を学び、作業所などで作る菓子の質の向上、販路の開拓に役立てる。それを支援するのが日清製粉(東京都)、日東商会(大阪府)などの協力企業だ。

粉や会場は日清製粉、その他の材料や製品の販路に関しては日東商会が受け持つ。本業の力を障害者の能力向上につなげる形で、社会貢献を行っている。

 

◇神戸スウィーツ・コンソーシアムDVD「美味しいお菓子のつくり方」 2枚組みで税別5000円。作業所、授産施設などは半額。問い合わせはプロップ・ステーション(電話 078・845・2263)。

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