公明新聞 4月15日より転載

ユニバーサル社会の実現をめざそう

すべての人が持てる力を発揮

日本を元気にする"基本法"の制定を

ユニバーサル社会の実現をめざして―公明党の太田昭宏代表と浜四津敏子代表代行(「与党ユニバーサル社会形成促進検討プロジェクトチーム」副座長)は先ごろ、都内で開かれたシンポジウム(主催=社会福祉法人プロップ・ステーション、略称・プロップなど)に出席し「ユニバーサル社会形成促進基本法(仮称)」の早期法制化に全力を挙げるとの決意を示しました。ここでは改めて同基本法の意義と重要性などを、プロップの"ナミねぇ"こと竹中ナミ理事長に解説していただきました。

 

竹中ナミの写真
竹中 ナミ
社会福祉法人プロップ・ステーション理事長

 「すべての人が持てる力を発揮し、支え合うユニバーサル社会の実現をめざそう!」というのが私たちプロップ・ステーションの目標ですが、「ユニバーサル社会って、よう分からへん」というのが、多くの人の率直な気持ちやないでしょうか。実は「よく分からない」最大の理由は、日本が、残念ながらユニバーサル社会をめざして来なかったことにあります。

 プロップは17年前から、チャレンジド(障害のある人)がパソコンやインターネットなどを駆使して、在宅で介護を受けながらも働ける社会を実現するために活動を続けてきましたが、私たちの考えは活動発足当時、社会全体からみると全く異端なものでした。たくさんの人から「重度障害者が働くって、何言うてんの。そんな人は社会が優しく助けてあげるべきで、働けなんて言うのは大間違いや!」と言われました。

 でも、プロップでは「重い障害があって家族の介護を受けてるけど、働いて稼いで社会に貢献もしたいんや!」というヂャレンジドが集い、それを実現する道筋を自分たちで開拓してきたのです。

 今では「障害者が働けない社会って、おかしいんちゃう」「作業所であんな低収入しか得られへんのは、どうやのん」といった言葉が日常的に交わされる時代になりました。私は時代がユニバーサル社会を求め、そうした方向へ近づきつつあると実感しています。

「自分が持てる力を発揮し、誰かから(あるいは社会から)期待される存在」である、というのは、生きる誇りにつながることです。人は誰でも、他者に影響を与えうる存在なのに、それを周りから無視され続けたり、唯からも期待を寄せられない時、誇りを失います。

 つまり、ユニバーサル社会というのは「どんな人の力も尊び、生かすことのできる社会」と同義語です。

 私は35年前、重症心身障害の長女を授かりました。娘は「生後3カ月未満の精神発達」という判定を受け、今もまだ私を「母親」とはきちんと認識できない状態です。でも、彼女を授からなければ元ワルで非行少女のハシリとまで言われていた私″が、″プロップのナミねぇ″に育つことはあり得なかったわけですから、「私は娘のおかげで更生した!」といっても過言ではありません。そんな私にとって娘は「かわいそうな存在」ではなく「誇らしい存在」です。

彼女を通じて出会うことのできたたくさんのチャレンジドが、娘よりずっとずっとできることがあるのに、障害を理由に「働けない人」「かわいそうな人」と決めつけられていることに、私は疑問を感じずにはいられませんでした。

 「どうしたら一緒に学べるか」「一緒に働けるか」「支え合えるか」という視点を持ち、「そうしたシステムを作り上げることこそが、ユニバーサル社会構築の一歩や」と気づいたことが私のプロップ活動の出発点になっています。

 そんな私の究極の目的は「一人でも多くの人が、誇りを持って社会を支える側に回れるシステムを築き上げたい。私自身も娘を残して安心して死にたい!」ってことです。

 ユニバーサル社会の具体例を挙げてみます。例えば、学校にスロープを付けることはバリアフリーです。そこにチャレンジドが入学して生徒になるだけではなく教師になれる、校長先生にも、経営者にもなれる″チャンスとシステムがある、というのがユニバーサル社会です。

 先進諸国では20年前くらいから既にこのような考え方で法律が整備されていますが、日本はまだ緒に就いたばかりです。でも、私は「日本人はきっと、その気になったらどこよりも優れたシステムを創造することができる!」と信じて、「ユニバーサル社会基本法」の制定を提案しています。

 同基本法は、個人を元気にし、地域と職場や学校を元気にし、そして日本という国を元気にする法律だと私は考えています。けれども、人々の意識が醸成され、多くの人たちの期待と支持が得られなければ、新しい法律は生まれませんし、そのようにして生まれた法律でなければ定着もしません。

 一人でも多くの方が「ユニバーサル社会基本法」に期待し、賛同してくださることを祈っています。みんなで、力を合わせて、日本を元気にしようではありませんか!

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 ユニバーサル社会の実現をめざすプロップ・ステーションのさまざまな活動は、チャレンジド・スタッフが制作するホ−ムページの公式サイト(http://www.prop.or.jp/)で公開しているので、ぜひご覧ください。

シンポジウムの写真
ユニバーサル社会の実現をめざして開かれたシンポジウム
(右端が浜四津代行、左端が竹中さん)

 

「ユニバーサル社会」とは

「ユニバーサル」とは「普遍的な」「すべての人の」などと訳され、ここでは「誰もが〜しやすい」「誰もが〜できる」という意味で使われています。「ユニバーサル社会」とは「誰もが暮らしやすい社会」 「誰もが参加できる社会」という意味です。年齢や性別、障害の有無などにかかわりなく、誰もがその個性や能力を十分に発揮し、支え合う社会のことを指します。

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