ファイナンス 8月10日より転載

「チャレンジド(障害のある人)をタックスペイアにできる日本!」の実現をめざす

竹中 ナミ (ニックネーム:ナミねぇ)

[写真]竹中ナミ

 皆さんこんにちは、ナミねぇ@プロップ・ステーションです。
 プロップ・ステーション(略称プロップ)は16年前に発足し、 ICT(情報コミュニケーション技術)を活用してチャレンジドの 自立と社会参画、とくに就労の促進を目標に活動してきました。
 スローガンは「チャレンジド(challenged)をタックスペイア に出来る日本!」です。

 プロップでは「障害者」というネガティブな呼称ではなく「挑戦と いう使命やチャンスを与えられた人を表す米語=チャレンジド」とい う言葉を使うことによって、すべての人が「支え合うという誇り」を 持って生きられる「ユニバーサル社会(共生・共助社会)」の実現をめざしています。
 プロップの米国におけるカウンターパートは、最先端の科学技術を駆使して、最重度の人までも を政府官僚や技術者に育て上げる「米国防総省電子調整プログラムCAP(Computer/Elec- tronic Accommodations Program)」という組織なんですよ。
 プロップで学び、働くチャレンジドの多くは、日常生活を営む上で何らかの介助や介護を必要と していますが、ICTが彼等・彼女らの潜在的な力を社会に引き出す大きな役割を果たしてきまし た。
 コンピュータは、手指以外に、足、口、瞼、舌など、身体のどんな部分であっても、僅かでも自 分の意思で動かせたなら「入力装置」を接続することが出来るからです。また最近ではパソコンの ハードとソフトが発達したために、身体障害以外のチャレンジドにとってもICTは重要な道具に なっています。プロップでは、知的ハンディあるいはLD(学習障害)や自閉症や精神障害のチャ レンジドもICTを学び、それぞれの個性と能力を発揮しています。

 私の娘は34年前に重い脳障害を持って生まれ、現在もなお「ナミねぇを母親と認識できない状 態」の重症心身障害ですが、彼女から私は「色んな人が居る。それが社会なんや!」「人の成長の スピードは、一人一人違って当たり前。」ということを心底学びました。ですから彼女は私の恩師 であり、同時に私の宝物です。娘は「日本の非行少女のハシリというようなワル」であった私を現 在の私に育て上げた人です。したがってプロップの活動は、娘の支えによって続けられているとい って過言ではありません。私は自分にとって誇らしい存在である娘を、「可哀想」と呼んで欲しく ないと強く思っています。
 そしてそんな私の究極の願いは、私が娘を残して安心して死んで行ける「ユニバーサル社会(共 生・共助社会)」の実現なんです。

 自分の個性や能力を社会で生かすためには、個人の努力だけではなく、社会全体が「障害などの マイナス部分のみを見るのではなく、一人一人の可能性の部分に着目し、それを引き出す技術や制 度を生み出すこと」が欠かせません。人は「誰かから期待されている時」自分に誇りが持てます。 マイナスだけに着目する福祉は、いくらそこに「慈愛」が込められていても、人の誇りを奪うこと に繋がります
 人が、自分や社会に挑戦する意欲を持つためには、社会全体の意識の転換と同時に、その人が  「支えられる存在」であるだけではなく「支える側にもなれる」柔軟なシステムが必要です。小さ くてもそのモデルを創造したいと考えて、私はプロップの活動を続けてきました。  一人でも多くの方が「人のマイナス部分ではなく可能性に着目し、それを引き出す行動」を起こ して下さることを願ってやみません。  プロップの活動の詳細を、公式サイトhttp://www.prop.or.jpでご確認戴けたら幸いです。

(たけなか・なみ 社会福祉法人プロップ・ステーション理事長)

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