−「プロップ・ステーション」の意味と活動を教えてください。
「1991年に障害者の就労支援を目的につくった組織で、今は就労を目指す障害者や一般人を対象にしたパソコン技能のセミナー、在宅で就労している人たちの仕事のコーディネートなどをしています」
「発足当時、どこの家庭にもパソコンなんてなかった。でも『パソコンは武器や』と思った。元ラガーマンで、けがでほとんど体を動かせなくなったり、それでも自分で作ったパソコンのプログラムを駆使して、マンションを経営する青年と出会って就労支援活動を始めました。IT業界の会社に『先行投資やと思ってパソコン提供してください』ってお願いして回りました。彼は組織の名付け親でもある。プロップは彼の現役時代のラグビーのポジションで、『支え』という意味があります。障害、老若男女に関係なく、支え合う社会にしたいと思って」
−娘さんには重度の心身障害があるそうですね。
「生後3ヵ月で脳障害と診断を受けました。目はぼんやりと光が分かるくらい。手を引けば少し歩ける。私のことをお母ちゃんやと分かっているかどうかも、分かりません。私自身は、熊本出身のお嬢さん育ちの母と、大正生まれでバンカラの父の下で、『何やってもええ』と言われて育った。でも娘の障害のことを告げたら、『わしが孫連れて死んだる』と言うんです。『おまえが絶対苦労するから』って。それで、『父と娘を絶対死なさんように楽しく生きる』と決めたんです。そのやり方をわかりたくて、たくさんの障害者と付き合うようになりました」
−どんな思いで就労支援に取り組んでいますか。
「日本では、障害のマイナス面ばかり見てる。『気の毒だから、何をしてあげよう』って。一方、障害者の雇用は『通勤できる』と『8時間労働』が前提です。もったいないですよ。パソコンを使って、在宅でも、施設でも働きたいという人がいるのに、壁を作っているんです」
「娘は今、32歳。国立療養所でお世話になっています。普通ならすぐにできることを、何年かけて少しずつ成長していく娘の姿は、ほんまに愛しくてたまらない。もしかしたら、『チャレンジドが働ける社会に』と頑張るのは、私のわがままかもしれません。私が死んでも、一人でも多くの人がいろんな手段で身の丈の仕事をして、何らかの力を発揮しながら、娘がこの社会に生きていけるようにほしい。だから、誰もが支え合えるような日本に変えていきたいんです。女性だって、男女雇用機会均等法で働けるようなしくみを、作っていく番なんです」 |