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産経新聞 2004年5月28日より転載

     
 
性善でも性悪でもなく
 
 
 
  from  


 年金未納問題がいつしか「政策論議」ではなく「政局の道具」と化してしまったことを、とても残念に思うナミねぇですが、年金って、貯金や保険のようなものなら「払った人だけが受け取れる保障であるべき」やし、税金のようなものなら「収入のあるすべての人からきちんと徴収し適正に配分すべき」ものやないでしょうか。

 ちなみに私自身は十数年前にバツイチになり、重症児の娘を抱えて働くことも難しかったので、保険料の減免という恩恵を受けたことがあります。今は自分の将来のために納付しているんですが、サラリーマンは「自動的に納付」しており、その他の人の中で自発的に納付しているのは、「自分の将来を不安に思う人」だけかもしれんなぁ、ということです。

 つまり、自分の生活が現在安定しており、将来の不安も少ないという人が、不安を持つ第三者のためにきちんと納めなければならないなんて思ったりはしない、という極めて人間の本音の部分があからさまになった騒動だったわけです。公開を求められない「政治家ではない人たち」の多くも、同様の感覚ではないでしょうか。

 日本の社会保障制度は今や崩壊しかかっているといってもいい状況ですが、日本がよくお手本にするスウェーデンでは、日本と同様の時代を経て、「すべての人が支え合って構築する社会保障」という方向に政策を転換しました。今や消費税25%という国です。

 しかし、それによって国民が国家転覆を図るかというとまったく反対で、総選挙の投票率は90%近い数字。「税金はきっちり払うけど、使い道についてもきっちり発言させてもらいまっせ」という国になっているわけです。

 今回の騒動を経て、スウェーデン方式などにも学びながら、まっとうな議論がなされることを切望します。性善説でも性悪説でもない「みんなで支え合うことを前提とした制度」に生まれ変わってほしいものです。

 

写真:ナミねぇ竹中ナミ
(たけなか・なみ=プロップ・ステーション理事長)




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