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● プロップ・ステーション
プロップ・ステーションは、1998年に社会福祉法人として認可され、コンピュータと情報通信を活用してチャレンジド(障害者)の自立と社会参画、特に就労の促進と雇用の創出を目標に活動している。
ホームページ
http://www.prop.or.jp/
● 竹中ナミ氏
通称“ナミねぇ”。社会福祉法人プロップ・ステーション理事長。重症心身障害児の長女を授かったことから独学で障害児医療・福祉・教育を学ぶ。1991年、プロップ・ステーションを設立した。現在は各行政機関の委員などを歴任する傍ら、各地で講演を行うなどチャレンジドの社会参加と自立を支援する活動を展開している。近著に『ラッキーウーマン 〜マイナスこそプラスの種!』(飛鳥新社)がある。
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昨年7月から始まった国内初のチャレンジドによるテレワーク就労を採用した「デジタル地図バーチャルファクトリ」(本誌10月号にて紹介)が、順調な滑り出しを見せている。チャレンジドをはじめ、介護や育児で通勤困難な人にとって就労のチャンスが広がる画期的構想として、内外から注がれる視線は熱い。
全国に在宅就労を
「デジタル地図バーチャルファクトリ」とは、NTTネオメイトグループ等が提供する全国共通のデジタル地図「GEOSPACE」を作成、メンテナンスする仮想工場のこと。スーパーバイザ(指導役)が常駐する「デジタル地図センタ」(熊本市)と、地図を作成するクリエータが集まる「デジタル地図工房」(熊本市・神戸市)を結んで構成されている。センタと工房はNTT西日本のブロードバンド(BB)回線によって結ばれ、会議システム「ミューティングプラザ」を利用して互いの顔を見ながら、リアルタイムに作業が進められる。
また、「サーバ・ベースド・コンピューティング(SBC)」という先進技術も導入されており、高いセキュリティを実現するとともに、作業画面の共有機能により円滑な指導も可能だ。
「通勤困難な人が在宅就労できるチャンスであるとともに、ユニバーサル地図作成の可能性にも関心があります。たとえば、携帯端末で地図情報をスムーズに取り出せれば、チャレンジドが外で自律的に活動できます。そこで新たな出会いや仕事の広がりが生まれれば、まさにユニバーサル社会への一歩です」(ナミねぇ)。
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――構想が生まれた経緯は。
西村●NTTが電話サービスのために作成した地図の版権を承継し、グループや一般企業に地図とアプリケーションを更新、提供していました。しかし、コストダウンと品質向上のために、西日本8ヶ所の工場を一つに統合したいという思いがありました。そこで、BBや各家庭にパソコンが普及したことを背景に「分散型オフィス構想」が誕生しました。在宅で仕事ができればチャレンジドや育児、介護で通勤困難な人にも働く機会を提供でき、また企業としても社会貢献したいという願いがありました。その裏付けとしての技術がBBであり、高いセキュリティを確保するSBCです。
――ナミねぇとの出会いについて。
西村●私がNTT西日本の広島支店長時代、勤務時間外にボランティア活動をしていた熱心な女性社員がいて、ナミねぇの本を紹介され読んでいました。一方、熊本が品質の高い地図を作成するという理由で工房の拠点として有力視していたところ、潮谷義子熊本県知事もチャレンジドのテレワーク構想を推進されており、ちょうど拠点が生まれたんです。その後、知事からナミねぇを紹介されたのですが、出会うべくして出会った感がありますね。熊本だけでなく神戸市にも工房を作った理由は、全国に在宅就労という夢を広げたいという思いからです。ITをビジネスにしている私たちこそ手本にならなければ、という使命感です。
新ビジネスモデル創出へ
――チャレンジドの仕事への評価は。
西村●当初、技術陣からはチャレンジドのスキルを心配する声も聞かれましたが、実際に現場を見て、彼らからも「ぜひやりましょう」と声が上がったときはうれしかったですね。スタートから半年過ぎた現在、チャレンジドのみなさんの大変な努力もあって、単位面積当たりの作業時間が20時間から2.5時間へと、個人の習熟度の差も35時間から3時間へと、飛躍的に能率が上がりました。これも、新しい技術の導入で、画面上で顔を見ながら丁寧なサポートを受けられたためではないかと思っています。
――課題と可能性について。
西村●発注側のスケジュール管理や在宅での稼働調整をどうマネジメントするか、また分散型オフィスでも安定した作業と品質を維持できるかという点が課題です。可能性については、地図に限らずさまざまなことに応用できる点です。たとえば、コールセンターの在宅就労などにも活用できます。このようなシステムを内外に示すことで、事業として新しい雇用の創出やビジネススタイルが生まれる可能性は大きいでしょう。
――チャレンジドに期待するところは。
西村●先般、国会でナミねぇが「チャレンジドの働く世界を制限しているのは周囲の人間だ」と述べましたが、今回のプロジェクトでは、最後まで彼らの能力を信じてよかったと実感しています。なぜなら、仕事に慣れるまでは大変ですが、いったん乗り越えてしまえばどんどん効率が上がるということを実証できたからです。今後も粘り強く、恐れずチャレンジしてほしいと思います。それはチャレンジドだけでなく、仕事を依頼する人も同様で、粘り強くチャレンジできる環境を創出すべきですね。
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チャレンジドの就労を後押しする法定雇用率の制度は「通勤・フルタイム」が原則で、在宅で働きたいというチャレンジドへの支援はなかった。
プロップはITを活用することで、チャレンジドが優秀な働き手になることを示してきたが、国もようやく雇用率制度以外で企業や自治体が仕事をアウトソースできる仕組みを検討し始めた。
「NTTネオメイトのような影響力の大きい企業が、トップの強い決断で本格的にチャレンジドの在宅就労支援を始めたことは、世の中の動きを的確につかみ取る企業に、大きなインパクトを与えたと思います。私たちも新しいビジネスモデルとして一緒に取り組んでいきたいと思います」(ナミねぇ)
※CJF 「チャレンジド・ジャパン・フォーラム」のことで、情報技術の活用によるチャレンジドの自立、就労を支援を目的に開催されるイベント。2005年はプロップの地元である神戸で記念すべき10回目を開催する予定だ。
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