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産経新聞 2004年4月18日より転載

 

 
 

需要拡大すれば仕事が増加

 
 
障害者の自立目指す
 
 

竹中ナミさん「健常者も交換を」

 
 

 

点字名刺 普及の活動とは

読者から

 産経新聞朝刊の連載コラム「from」でプロップ・ステーション理事長の竹中ナミさん(55)が点字名刺について書いていたのを興味深く読みました。点字名刺を普及させようということですが、詳しい活動内容を教えてください。

女性読者(57)=神奈川県厚木市

写真:点字名刺
「チャレンジド」の雇用を
促進することになる点字名刺

「カッコいい」

「おしゃれ」

‥‥新しい価値も

 竹中さんは自立と社会参加を目指す障害者を「チャレンジド」と呼び、主宰する社会福祉法人「プロップ・ステーション」(本部・神戸市)で「チャレンジドを納税者にできる日本」の実現を目指して就労支援活動を展開しています。周りからも助けてもらう存在から、障害者も仕事があれば自立できるという考えからです。

 そうした考えから竹中さんが点字名刺を初めて作ったのは約3年前です。当時は点字名刺を視覚障害のチャレンジドとの名刺交換にだけ使用としていましたが、1年前からはすべてを点字入りに切り替えました。

 竹中さんによると、新しく点字名刺を注文すると100枚で2,000円−2,500円程度。普通の名刺に点字を彫刻すると加工料は100枚で1,500円程度です。これから諸経費を差し引いた分が作業をした人たちの賃金となりました。

 現在は全国の障害者たちの作業所で、点字名刺を作っているところは1割程度。普及が進んでいないのは、「点字を習得するための研修の手間や点字印刷の機械を購入するなどかなりの設備投資が必要なため」(竹中さん)だそうです。

 このため、竹中さんは点字名刺を一般の人たちにも使ってもらうことで、需要を拡大し、「チャレンジド」の雇用創出を目指しています。

 点字を読める人は全盲の人の中でも少数派になってきているという課題もあります。糖尿病や白内障などの病気で点字の習得の困難な大人になってから視覚障害者になる人が増えていることも背景にあります。このため、竹中さんは障害者に限定せず、一般の人たちが点字名刺を使うことは点字の価値の見直しにもつながると考え、点字名刺を障害者に限定しないで広げることに力を入れています。

 「バリアフリーというと、障害者の社会に入れるようにすることばかりを考えがちですが、健常者が障害者の世界を共有するのにも障壁があることが問題なのです」

 竹中さんはこのように訴えます。

 とはいえ、点字名刺を一般の人たちに義務づけたり、押し付けたりして普及させることは望んでいません。あくまでも個人の意思を重視する立場をとっています。

 そして、名前や電話番号などを点字化するのではなく、好きな言葉を点字で入れ、メッセージを込めるなどの方法を提唱し、「持つとカッコいい」「オシャレ」という流れをつくりたいとしています。

 この支援に賛同し、点字名刺をつくったなかに財務省国庫課長の岸本周平さん(47)がいます。

 「点字名刺を相手に渡すと話題となり、初対面の人とのコミュニケーションもスムーズにいくことが増えた」と思わぬ効果に喜んでいます。岸本さんは昨年9月に200枚注文し、残りが少なくなってきたので、追加注文する予定といいます。

 竹中さんは講演で全国各地を回ると、そこで出会った人たちに点字名刺を薦めていますが、岸本さんのような人が増えると、「チャレンジドの仕事が増え、チャレンジドが健常者と同じ土俵に立てる」社会に近づいていきます。

 点字名刺の入手方法、問い合わせ先はプロップ・ステーション(TEL078−845−2263)。

(特集部 浅見英二)