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公明新聞 8月28日より転載 |
「第9回チャレンジド・ジャパン・フォーラム2003」から |
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だれもが誇りを持って働ける
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「
ユニバーサル社会」の実現を
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IT(情報技術)を活用して、障害を持つ人の自立と社会参加を促進する社会福祉法人「プッロプ・ステーション」(竹中ナミ理事長)が21,22日の両日、千葉市の幕張メッセで「第9回チャレンジド・ジャパン・ホーラム」を開催した。障害を持つ人とともに、政・財・官・学の各界から多くの協力者が出席し、障害の有無や年齢にかかわらず、だれもが誇りを持って社会参加できる「ユニバーサル社会」をテーマにしたパネルディスカッションなどがおこなわれた。 |
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「チャレンジドを納税者に」
プロップ・ステイションでは、障害を持つ人のことを、「挑戦すべき使命を与えられた人」という意味から「チャレンジド」とよぶ。そして「チャレンジドを納税者に」というスローガンを掲げている。 チャレンジドの多くは、働く能力も意欲も持っているが、日本ではどうしても“社会に与えられる側”に追い込まれがちで、働くチャンスが与えられていない。 一方、最近のパソコンやインターネットの発達は、チャレンジドの能力を引き出す事を容易にし、就労のチャンスを大きく広げている。職場環境さえ整えば、障害を持っていても働くことができる。そして、納税することで“社会を支える側”に回れる。「納税者に」というスローガンには、こうした思いが込められている。 プロップ・ステーションでは、10年以上前から、チャレンジドのためのパソコン講座を開催し、これまでに受講生の多くが就労を勝とってきた。 こうした運動に連動し、連立与党は、だれもが参加できる社会をめざす「ユニバーサル社会の形成促進検討プロジェクト・チーム」(座長=野田聖子・自民党衆院議員、副座長=浜四津敏子・公明党代表代行、参院議員)をたちあげている。 米国には、障害を持つ人が平等に社会参加できるように、環境の整備を事業者などに義務付けるADA(障害を持つ米国人法)がある。同プロジェクト・チームでは、ADAの理念を生かした「ユニバーサル社会形成促進基本法案」(仮称)の法案化を検討している。
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日本版ADA 初日の21日には、「ユニバーサル社会」をめざす法制をテーマに、パネルディスカッションが行われた。 パネリストとして、与党の「ユニバーサル社会の形成促進検討プロジェクト・チーム」の野田聖子座長と浜四津敏子副座長、堂本暁子千葉県知事、視覚障害者で社会福祉法人「愛光」専務理事の高梨憲司氏、介助犬を利用して働く千葉市職員の山口亞紀彦氏が参加した。司会は竹中ナミ理事長が勤めた。 その発言の要旨を紹介する。
野田聖子 与党プロジェクト・チームでは、「ユニバーサル社会」をめざし、具体的に何をしたらいいのか、何が不足しているのかを明らかにして、その後押しを法律や制度でできるように取り組んでいる。 浜四津敏子 公明党は、一人ひとりのニーズ(要望)に合った政治の実現をめざし、「一人の声を大切に」をモットーにしている。だれもが平等に参加でき、一人ひとりが素晴らしい人生を送れる質の高い国にしたい。そのための「ユニバーサル社会形成促進基本法案」(仮称)をつくる努力を、皆さまとともにさせていただきたい。 堂本暁子 障害があろうとなかろうと、一人の人間として、どうあるかが基本だ。千葉県では、縦(たて)割り行政の中で人を分類するのではなく、一人ひとりの側からみて、行政を行う努力をしている。 高梨憲司 障害は、一つの個性にしかすぎない。男性か女性かという違いは問題にされないが、障害を持つ人は、ちょっと違うとみられる。そういう意味で、幾つかのバリアーがある。私は、この問題に教育の分野で取り組んでいきたい
竹中ナミ 今年6月、米国の教育省を訪ねた時、全盲の方や身体障害を持つ方がスタッフとして当然のように働いていた。介助犬を伴い電動車イスに乗っている教員もいた。「米国はすごいな」と思った。そして、「ADAという法律のうらずけがある」という話を多くの方から聞いた。法律は必要だ。 山口亞紀彦 身体障害者補助犬法が昨年、施行され、公共機関と交通機関で介助犬を利用できるようになった。今年10月からは病院やスーパーでも利用できるようになる。2000頭以上の介助犬が活躍している米国では、介助動物はADAの中にふくまれている。日本でも、そうした法律が早くできればいい。 野田 わたしたちは「与党女性議員政策提言協議会」(女堤協)をつくり、そこで子育て支援や夫婦政別性などのテーマにとりくんでいる。そのテーマの一つとして「ユニバーサル社会」を浜四津さんから提案していただき、勉強会を始めた。 しかし、「これは女性問題ではなく、社会構造改革という大きなテーマだ」ということで、与党全体のプロジェクト。チームで取り組むことになった。 プロジェクト・チームが発足したことで、試案を公的なものにしていくステップが始る。 浜四津 これまでの日本の障害者法制や施策は、障害を持つ人たちは“福祉サービスを受ける側”という位置付けだった。 一方、ADAには、機会の平等、完全参加、自立という理念がある。そして、「障害を持つ人が社会にあわせるのではなく、社会が障害を持つ人に合わせる、社会を変える」という理念が根底にある。 プロジェクト・チームが法案化をめざす「ユニバーサル社会形成基本法」は、ADAの理念をもとに、社会全体を変えていくという大きな夢を持った法案だ。 「障害者基本法があるのに、なぜ別の法律が必要なのか」という議論が与党内でもあった。しかし、障害者基本法は、これまでにも、いい方向に改正されてきたが、どうしても個人的側面という域(いき)を出ていない。それはそれで必要だが、「社会対全体を変えよう」ということから、与党のプロジェクト・チームが設置されることになった。 堂本 国会で「ユニバーサル社会」をつくる法律をめざし、地方自治体からは、それぞれの声を国に上げていくことで、両方からサンドイッチにして、国の制度を変えるために積極的にとりくみたい。 高梨 かつて、わが国の考え方「この子らに世の光を」だった。障害の重い人に光を当て、社会に出られるようにするものだ。そうではなく、「この子らを世の光に」だと思う。障害を持つ人が世の光になることで社会が変わっていく。社会の意識改革の懸(か)け橋になることが、私たちの役割ではないか。 |
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車イスの革命 褥瘡(じょくそう)、体の変形、疲れを防止
今回のフォーラムでは、車イスの質を向上させる「シーティング」技術についての講演が話題を呼んだ。 講演したのは山崎泰広・株式会社アクセスインターナショナル代表取締役社長。自身も車イスの利用者で、自立支援機の輸入販売業を営むとともに、シーティングの普及をめざし全国各地で講演活動を行っている。 山崎氏は、体の骨格や障害の状態に合わせて設計された車イスや、上質のクッションを利用する事で、体の変形、褥瘡(じょくそう)(床ずれ)、疲れなどの2次障害をなくすことができると協調。 シーティング技術で車イスを長時間利用できるようになれば、就労できる可能性は大きく広がると訴えた。 また、利用者を立ち上がらせる事ができる車イスを使い、歯科医師などが職場に復帰した例も紹介された。 講演では、利用者が通っている医療機関の指定業者が、シーティング技術を施した車イスを扱っていなければ入手が難しいことや、公費助成の対象にならない場合があるという問題点も提起された。 | |||||
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