「ゴンタクレな10代を送って…」という竹中さん。誰もが呼ぶという愛称「ナミねぇ」の笑顔は、豪快で、大草原の少女のようで…。
理事長を務める「プロップ・ステーション」は、チャレンジドの就労支援をする組織。“チャレンジド”って、聞きなれない言葉ですが。「阪神・神戸大震災の時、この言葉に出合い、これこそ“障害者”を表す言葉やと思うたんです」
正式には「ザ・チャレンジド」。「神から、挑戦という使命や課題、あるいはチャンスを与えられた人々」という意味が込められているといいます。
「障害者の“障”は、さまたげる、さしさわるって意味でしょ。そのうえ“害”という字までついて、マイナスの意味ばかり…」
ナミねぇには、重い脳障害を持って生まれてきた30歳の娘がいます。「彼女を授かったおかげで、私は勉強もしたし、いろいろな道が開けてきた。ちっとも『差し障りがあって害になる存在』やなかったよ」
昨日まで元気にしていた人でも、いつ事故で体が不自由になるかもしれない。そうなってもその人であることは変わらないのに、“障害者”とひとくくりにされてしまう。重度のチャレンジドであっても、できることはいっぱいあるのに、世の中は、介護や身辺サポートが必要な人の「働きたい」という願いを「そんなの無理!」と封じ込めてしまっている。「保護と救済」がセットになった福祉観の押し付けば、“障害者”を、いつまでたっても“かわいそうな人”にしてしまう…。
「これっておかしいでしょ。障害を持った子の親は、『私が死んだらこの子は、どうなるのだろう』と死んでも死に切れない。それで私は障害があっても働ける仕組みを作って仲介役をしよう!と決意したんです」
12年前に立ち上げた「プロップ・ステーション」の活動は今や全国規模に。インターネット上でもチャレンジドの就労を目的にしたパソコンセミナーを行い、これまで1000人以上が受講し、約100人の在宅就労が実現。今も、働く意欲を持つ誰もが、身の丈に合った働き方ができる世の中づくりを目指し、講演等で東奔西走中。
「私は、“良い子”やなかったから、自分の物差しでやってこれたんやね。みんな“良い子”やめて、新しい自分の物差しを持ったらいいやん。そしたら世の中、きっと変わるで!」
文・ 森川恵子
写真・ 中村公彦
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