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神戸新聞 2003年1月10日より転載

     
  人活 リストラ全盛の時代に  
 
ハンディを逆手に
 
 
事業と社会参加を両立
 
 
障害ゆえの新しい感性もある
 
 
 

写真
ソフト開発現場では、車いすがハンディにならない。むしろ障害があるから、顧客のニーズをつかめる

 「収益を上げる。企業なら当然でしょう」
 社会福祉法人向けのソフト開発、アイシーエス姫路市ウェルフェアー。年商は3億円。従業員13人のうち障害のある6人が、開発を担う。自身も車いす生活の取締役、奥田善衛(45)の自負がのぞく。
 地元企業と市が1984年、障害者雇用のモデルを目指し設立した。第三セクター方式だが、開拓した顧客は四国地方にまで広がる。福祉の現場に明るいからこそ、ソフトやアクターサービスにきめの細かさが生まれる。これが顧客に受ける。
 神戸の車いすメーカー、カワムラリサイクル。昨年10月、開発部門の社員が1人加わった。同社は「車いすはまさに足。乗り心地や使い勝手など、健常者では気付かない点が開発に役立つはず」と期待する。
 障害は、健常者と違うメリットにもなる。

☆  ☆  ☆

 そうした考えの企業は、まだ少数派だ。
 障害者雇用促進法は、一定規模の民間企業に障害者雇用率1.8%を義務づけている。しかし兵庫県内の雇用率は、それを0.11ポイント下回る。求職者は7,000人台を大幅に超え、過去最悪となった。
 「長引く不況のしわ寄せ」と兵庫労働局。だが、そればかりではない。
 「採用されるか、だめなら、仕事を持てないか。選択肢が2つしかないのが問題」
 神戸の社会福祉法人、プロップ・ステーション理事長の竹中ナミは説く。企業が雇い入れるこれまで形自体が制度疲労を起こしている。

☆  ☆  ☆

 「チャレンジド」。仕事を持ち、積極的に社会参加していこうとする障害者をこう呼ぶ。
 この言葉を広める竹中は、障害者にIT(情報技術)関連の能力を習得してもらい、その上で在宅就労の機会を提供している。この仕組みは昨年から三重や熊本に広がり、行政、ボランティア団体が協力する新しい就労システムとして始動した。
 兵庫でも今月から、県と神戸市、カタログ通販のフェリシモ、プロップの4者が、プロジェクトを始める。
 共同作業所などの福祉施設でつくられる雑貨類をカタログに載せ、全国の消費者へ。掲載希望の商品は公募するが、あくまで「売れる」商品を厳選する。
 「障害がある人こその新しい感性がある」。同社社長の矢崎和彦(47)は確信する。利益度外視ではない。「世の中にいいことをして、もうからないはずがない」からだ。
(敬称略)


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