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いわてグラフ2002年より転載


 

障害者の自立を目指した 「第8回チャレンジド・ジャパン・フォーラム 2002 in いわて」が去る8月27日と28日の2日間、盛岡市を会場に開催されました。障害者が自己実現に向けて挑戦し、夢をかなえている事例として、ITを活用して就労を果たしている県内の取り組みが紹介されるなど、障害のある人も、障害のない人も、みんなが住みよい真の「イーハトーブ(理想郷)づくり」を岩手の大地から発信しました。

 

2日間で1,000人以上が参加した「チャレンジド・ジャパン・フォーラム」

 


「チャレンジド」はすなわち「挑戦者」

 8月27日から2日間、盛岡市を会場に開かれた「第8回チャレンジド・ジャパン・フォーラム 2002 in いわて」には、県内外から延べ1,000人以上が参加。講演やセッションに加え、本県の取り組み事例などを紹介しながら、障害者が誇りを持って自立できる社会づくりについて話し合いました。
 「チャレンジド」とは、「障害者」を言い換えた言葉で、「神から挑戦する課題とチャンスを与えられた人」という意味です。障害のあることを前向きにとらえた考え方で、アメリカで使われ始めました。
 IT技術が急速に進展している近年、この技術を活用することによって障害のある方々も自立しようという意欲が高まっています。
 このような背景のもと、「チャレンジドを納税者にできる日本」を目指し、障害者の新しい生き方を提案しようと、民・産・学・官が連携し、1996年から始まったのが「チャレンジド・ジャパン・フォーラム」(通称CJF)で、今年は8回目を迎えました。

 


真のイーハトーブ(理想郷)を目指して

 岩手大会のイメージは「イーハトーブ(理想郷)・by・チャレンジド〜熱い思いと巨(おお)きな力〜」。このテーマには、ITによって自身のハンディも、物理的な距離の大きさも乗り越えるチャンスを得た今こそ、それを活(い)かし、チャレンジド自らが主体になって、宮沢賢治の理想郷「イーハトーブ」を建設していこうという気概が込められています。
 フォーラム当日には、車いすの方や県内の養護学校の生徒、中学生や高校生も多数参加し、中には制服姿で活躍するボランティアも多く見られました。
 オープニングで村田知己(ともみ)実行委員長は、「ITを使うことによって障害者の道が開かれようとしている。人間はみな同じ欲求があるのに、障害者の当たり前の願いがかなえられないのは社会の問題。どうすれば多くの問題を解決できるのか。イーハトーブの実現に向け、新しい時代の提言をしていきたい」と力強くあいさつ。増田知事は、「今、自治体にも自立が求められている。チャレンジドもITを使うなど、自分たちのやれることは何かを考え、これからの展開につなげていただきたい」と激励しました。

 


ヤスミ代表取締役社長の八角明伸さん
デジタルディレクターの高橋俊肥考さん
もりおか障害者自立支援プラザ所長の大信田康統さん
「ナミねえ」こと竹中ナミさん(プロップ・ステーション理事長)は、司会、セッションのコーディネーターなど大活躍
岩手のチャレンジドの発信に感動の拍手

 講演やセッションなど多彩な内容が繰り広げられる中で、とりわけ注目されたのが、岩手の取り組み事例を紹介する「地元からの発信」です。
 岩手の チャレンジドとしてセッションに参加したのは、もりおか障害者自立支援プラザ所長の大信田康統(おおしだやすのり)さん、デジタルディレクターの高橋俊肥考(としひこ)さん、ヤスミ代表取締役社長の八角明伸(やすみあきのぶ)さん。フォーラムの創始者である社会福祉法人プロップ・ステーション理事長の竹中ナミさんをコーディネーターに、時にはユーモアを交えながら、それぞれの生き方や仕事、提言が披露されました。
 大信田さんは、「県内に4ヵ所ある障害者自立支援プラザには多岐にわたる相談が寄せられており、特に就職の相談が多い」と話し、「ドイツの授産施設では政府から仕事が定期的に降りてくるシステムになっている」という例を挙げながら、障害者の自立を進めていくためにも、行政と民間が協力し合い、就業の場を広げていく必要があることを力説しました。
 高橋さんは、今大会の実行委員の1人。仕事は知的障害者の授産施設でのパソコン指導とソフトの制作で、北上市の自宅から一関市の職場まで障害に応じて改造した車で通勤しています。
 「ITはチャレンジドの強力な支援材料。例えば、知的障害者にパソコンを教えるのは無駄だという人もいますが、それはチャンスを奪っていること。インターネットで自分の興味のあることを調べながら文字を覚えたチャレンジドもおり、驚くべき能力が発揮されることもある」と話し、これからはどんどん新しい仕事を開拓していきたいと意欲を述べました。
 八角さんは、盛岡市でコンピュータのシステム販売会社を経営しています。
 「今は十人十色から十人百色の時代。ニーズの多様化に追随して仕事も増えているはずで、そこにチャンスがある。高齢社会が進めば、障害者だけでなく不便さを感じる人が多くなり、そこにも仕事の発想が生まれると思います」と将来に向けた展望を提起。結びに、「現在の岩手は、福祉・経済などの面で、全国から見れば進んでいるとは言えないが、これから発展の速度を体験できる楽しみがあり、私たちが、この時期に存在していることに意義があるのです」と会場に呼びかけ、温かい感動の拍手が寄せられました。

 


「大会宣言」に署名する増田知事
障害者による理想郷づくり!
知事セッション「日本を地域から変える」には、増田寛也知事をはじめ浅野史郎宮城県知事、北川正恭三重県知事、太田房江大阪府知事、木村良樹和歌山県知事が参加た
上/2日目のオープニングは盛岡市民福祉バンクの牧野立雄(たつお)さんによる講演で「雨ニモマケズの基本理念」
下/筑紫哲也さんなど各界から温かいメッセージが寄せられた
5府県知事も参加して熱いトークを交わす
会場には制服姿の高校生ボランティアも活躍。「とても勉強になりました」

 2日目の28日は、岩手県立大学の西澤潤一学長をはじめ、ジャーナリストの筑紫哲也さん、櫻井よしこさん、高知県の橋本大二郎知事などから特別メッセージが寄せられたほか、増田知事をはじめとする5人の知事によるセッション「日本を地域から変える」が、ファイナルステージを盛り上げました。
 2日間の熱気も冷めやらない中、最後に、これからも新しい社会づくりにまい進していく決意を表明する「CJF2002いわて宣言」が高らかに提唱され、5府県知事をはじめ主な参加者が署名して、大会は幕を閉じました。

 


「チャレンジド・ジャパン・フォーラム 2002 in いわて」実行委員会委員長
村田 知己さん
参加者とともに閉幕のあいさつをする村田委員長。
次回のフォーラムは千葉県で開催される予定
 「チャレンジド」という前向きな考え方を私が最初に知ったのは幼いころで、私が可愛がってくれたアメリカ人の人たちと両親から教えられたものでした。人間として大事なことを周りのみんなに知ってもらいたいから、神様は一人の子を選んだのだと。それから私は積極的に生きていく希望を持つことができました。フォーラムを機に、この言葉を皆さんに知っていただき、社会に定着してほしいと思っています。
 チャレンジドという言葉と一緒に、変わってほしいのは社会の意識です。そして、障害者自身も変わって社会や地域に貢献していかなければなりません。そのために、今回のテーマには「For チャレンジド=障害者のための」から「by チャレンジド=障害者による」理想郷づくりへと、より積極的な精神と願いを込めました。
 チャレンジドには保護が必要な人もいます。一方で能力も意欲も知力も備えた人もいるのに、今までは「障害者」という言葉でひとくくりにされてきました。保護の必要な人には手厚い配慮を、働きたい人には「平等なチャンス」と「選択の自由」をぜひ提案したいのです。
 移動が困難なチャレンジドにとって、ITは大変有効な手段です。ITの発達によって私は障害者を消し去ることができました。あたかも車のように自分で運転ができ、距離を越えて積極的にコミュニケーションが図れるのと似ています。広大な面積を有し、移動が不便な岩手でも、逆手に取れば新しいコミュニティーの創造ができるかもしれません。
 今回のフォーラムには、障害者ばかりでなく、みんなが幸せになるためにはどうしたらいいかという社会づくりに向けて活用できるものがたくさん含まれています。高齢社会への対応も、障害を持っている私たちだからこそ提言できるものが多々あります。
 年を取れば多少不便になるけれども、必要なものがいつもそばにあり、夢や希望を捨てなくてもよい真に豊かな社会、バリアフリーからユニバーサルデザインの社会へ、今回のフォーラムはそのスタートなのです。

「チャレンジド・ジャパン・フォーラム 2002 in いわて」についての問い合わせ先
県社会福祉事業団  TEL019−662−6851 FAX.019−662−8044
県庁障害保健福祉課 TEL019−629−5447 FAX.019−629−5454

 


チャレンジド(障害者)の自立を支援しています 県では、就業が困難なチャレンジドの皆さんが働く場と機会を確保できるように、その特性に応じたきめ細かな支援を行っています。

◆ 障害者就労支援センターの運営費を補助
 障害者就労支援センターは、関係機関と連携を図りながら就業面と、生活面の支援を一体的に行うことで、障害者の自立や雇用促進を目指しています。
 水沢市にある胆江障害者就労・生活支援センターに続き、平成14年7月31日、宮古市山口の知的障害者授産施設・第一わかたけ学園内に宮古地区チャレンジド就労支援センターが開所しました。
 同センターでは、雇用、保健福祉、教育などの関係機関と連携し、障害者の特性に応じた就労をきめ細かくサポート。健康管理や生活面での相談にも応じています。また、就労支援ワーカーを配置し、求職登録や職場実習のあっせん、仕事場の開拓・調整など、就職から職場に定着するまでを支援するとともに、障害者を雇用する事業主も安心できる環境づくりに努めています。
◆ 障害者の職場実習費を補助
 チャレンジドの皆さんが就業に向けて職場実習を行いやすいように、宮古地区チャレンジド就労支援センターや胆江障害者就労・生活支援センターが実施する職場実習を支援しています。
◆ 身体障害者の委託訓練
 民間が保有する訓練ノウハウや地域の情報などを活用しながら、チャレンジドが働くことによって自立できるよう、就業に必要な職業能力開発を実施しています。受入校は宮古高等技術専門校ですが、チャレンジドの皆さんがなるべく自分が住んでいる近くで訓練できるように宮古職業訓練協会、水沢職業訓練協会、岩手中央職業訓練協会、久慈職業訓練協会の県内4ヵ所に委託し、IT活用の職業訓練を行っています。
【問い合わせ先】県庁労政能力開発課 
TEL019−629−5588

 


 



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