[up] [next] [previous]
  

NEW MEDIA 2002年9月号より転載

     
  The Challenged とメディアサポート  
  「Forチャレンジド」から
「Byチャレンジド」へ!

―――「CJFいわて大会」を語る
 
     

 

 チャレンジド(障害者)が誇りを持って生きられるIT社会を目指す「チャレンジド・ジャパン・フォーラム」(CJF)が、8月27日〜28日に岩手県で開催される。
 開催テーマは、「イーハトーブ by チャレンジド〜熱い思いと巨きな力」。イーハトーブとは、地元出身の作家・宮沢賢治が名付けた理想郷のこと。チャレンジド自身がその作り手になるという決意を示している。
 どんな会になるのか。今回のCJFを岩手県に誘致した増田寛也知事。CJF副座長の清原慶子・東京工科大学メディア学部長。そして、CJF創始者の竹中ナミ・社会福祉法人プロップステーション理事長。3人に語ってもらった。

 (構成:中和正彦=ジャーナリスト、写真:多羅尾牧洋)


中高生も参加の“新しい結づくり”

―― 知事はCJFの岩手県での開催を、どのように捉えておいでですか。

CFJには多くの中学・高校生にも参加してもらう考えです。
岩手県知事
増田寛也

増田 岩手県では、昔から「結(ゆい)」という地域の相互扶助のつながりがありました。冬場の気候が大変厳しいので、高齢者も障害者も含めて、皆で支え合って生きてきたわけです。
 いま私たちは、時代に即した“新しい結づくり”に取り組んでいます。CJFの「チャレンジドを納税者にできる日本」というそもそものテーマ、つまり「IT時代には障害者も社会を支える側に回れる」という考え方は、私たちにとって非常に新鮮です。この新しい風を、私たちの新しい地域づくりに取り入れるのと同時に、県外の各地とも共有していく、そういう大会になればいいと思っています。

清原 新しい考え方を柔軟に取り入れていく増田知事の姿勢に、私はほかでも出会ったことがあります。昨年度、盛岡市立北松園中学校の生徒さんたちが、まちづくりの提案をして日本計画行政学会の計画賞を受賞しましたが、増田知事はその生徒さんたちに会って「いい考えは取り入れますから、私のところにも提案しに来てください」とおっしゃったそうです。とても感動したと、生徒さんたちから聞きました。こういう、まちづくりに自ら参加する生徒さんの目で見たら、チャレンジドの姿も大人が見るのとは違って見えてくるのではないか。いい提案が出てくるのではないかと思いました。

増田 実は、今度のCJFには中学生・高校生にもたくさん参加してもらおうと思っています。いま実行委員会の方から呼びかけているところです。

竹中 それはいいですね。私は中学のときから不良でしたけど(笑)、そのときの気持ちはと言うと、「何でこんな子供扱いされなアカンの」と、すごくムカついていたわけですよ。あの年頃って、実は何かいいテーマを与えたら、もう自分たちで考えて動いて、大人以上のことだってできるんです。そのパワーを出すべき方向を見せてやるのが、大人の役割やと思います。


役割が人の意識を変える

―― 開催テーマの「イーハトーブ by チャレンジド」について。

「For」から「By」へ意識を変えるチャンス。チャレンジドの人たちも、それ以外の人たちも。
CJF副座長/東京工科大学メディア学部長
清原慶子

竹中 最初は「岩手をチャレンジドのイーハトーブに」だったんですけれど、「私は『チャレンジドが岩手をイーハトーブに』というぐらいの会だと思っている。forじゃなくてbyでしょう」とお話しすると、皆さん、「そうだ」とわかってくださいました。それで「イーハトーブ by チャレンジド」になったんです。

増田 「for」と「by」とでは、全然違いますよね。

清原 そうですね。「チャレンジドを納税者に」という動きは、まさにforからbyへの転換だと思います。チャレンジドの人たちも、それ以外の人たちも、意識を変えるチャンスが必要です。

増田 岩手県では、合計特殊出生率は全国より高いのですが、若者が都会に出てしまうので、年配者が残ります。しかし、高齢者も障害者も、地域の担い手としてカウントして役割を与えていけば、お互いに支え合ってやっていく動きが出てきます。「結」というつながりも、そういうものです。

清原 そういう意味では、今度のCJFでは、「チャレンジドを納税者に」の都市型のあり方ではなく、中山間地域を含めた地域のあり方を発信できそうですね。全国のより多くのチャレンジドをカバーする提案ができたらいいと思います。


岩手県人の誇り高き柔軟性

―― 竹中さん。今回のCJFの準備をされてきて、岩手県のチャレンジドの方々にはどんな印象を持ちましたか。

単に税金の話ではなく、「誇り」の問題として訴えていきたい。
社会福祉法人プロップステーション理事長
竹中ナミ

竹中 とても失礼なんですが、私は岩手県というと「ガンコな人が多そう」という先入観を持っていたんです(笑)。ところが、実際にお付き合いしてみてビックリ。すごく柔軟なんです。
 それはきっと、厳しい土地で「皆で力を合わせて何とかしなければならない」という体験を積んできた、その蓄積から生まれたのではないかと思います。「私たちはこんなことではメゲない」という思いをお互いに交換しながら前進してきたような、誇り高き柔軟性を感じました。

―― 竹中さんは最近のCJFで「誇り」の問題を強調されていますね。

竹中 人間は、自分が何かの役に立ったときに誇りを持てる。そこに根源的な喜びを感じると思うんです。「働かなくてもいいよ」「何もしなくていいよ」と言われている状態では、その誇りや喜びが持てないと思うんです。今回も、「チャレンジドを納税者に」は単に税金の話ではなく、「誇り」の問題として訴えていきたいと思っています。

増田 今のお話は、「税金を払えば権利がある」というのとは、またちょっと違う、もっと根源的なものを感じました。

清原 日本人は「誇り」という言葉を、あまりストレートに使いません。そういうものは、あったとしても、なるべく隠しておくのが謙虚でいいという感覚があります。でも、真の謙虚さというのは、自分に「誇り」を持っていてこそ持てるものだと思います。他者の「誇り」を尊重できるのが、真の謙虚さだと思います。
 私は、それがIT社会でますます求められていると思っています。「チャレンジドが誇りを持って生きていける社会」を考えることを通して、私たち一人ひとりの「誇り」の問題も再確認できたらいいと思います。

―― ありがとうございました。

 


[up] [next] [previous]



プロップのトップページへ

TOPページへ