竹中
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成毛さんは社外取締役のような形になって、ご自分で新たに会社を作られるそうですけど、それはどんな会社なんですか。 |
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成毛
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会社というよりも事務所的なものですね。金融テクノロジーを駆使してファンドマネージメントをするような、せいぜい10人ぐらいのグループです。 |
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竹中
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IT産業とは関係ないんですか? |
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成毛
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直接関係はありません。皆さんからお預かりした投資資金を株で運用するのを投資信託と言いますけど、われわれが今度やるファンドは株への投資ではなくて、事業への投資です。それも古い産業への投資です。
たとえば、昔から自動車のある部品だけを作り続けてきた町工場とか、地元だけで続いてきた学習塾とか。こういう人たちには、だいたいものすごく真面目に仕事をしてきた人たちで、中には「このことにかけてはピカイチ」という人もいるんです。
ところが、世間的には「もうこのご時世では古いし、トシもとってきたので」と見られて、新しいことをしたくてもなかなか銀行からお金を貸してもらえない。だから、最新のコンピュータ設備を入れることもできないし、それを駆使する人材を雇うこともできない。ヒト・モノ・カネが手に入らないわけです。
それを提供していこうというのが、いま考えている新しい仕事です。とりわけ、コンピュータを使った取り引きに進出してもらうのを支援するような、そういうタイプのファンドマネージメントです。
ある意味では、プロップの仕事と似ていると思います。 |
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竹中
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えっ、そうですか? |
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成毛
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ヒト・モノ・カネがなくて新しいことができないというのは、ビジネスにとって非常に重い障害なんですよ。なかなか自力では乗り越えられない。でも、何か一ついいものがあれば、再生はできる。それを支援しようという仕事なんです。 |
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竹中
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そう言えばこの前、神戸でIT関連のシンポジウムがあって、ITがもたらす可能性について非常に話は盛り上がったんですけど、最後に会場から質問を受け付けた時に一人のオジサンがこうおっしゃった。
「ウチは金型の技術では絶対に負けへんけど、いま経営は沈んでいくばかりで、これから私はどうしたらいいのでしょう」。会場は「うわっ、暗い質問が出てしまいましたね」という感じで盛り下がってしまいました。でも、すごく大事な問題ですよね。 |
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成毛
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金型にもいろいろな分野がありますけど、恐らく日本でそれぞれの分野で優秀な会社を100 社集めたら、世界最強の金型メーカーになると思います。
ぼくらはインターネットなどを駆使して、そういう仕組みを作ったり、海外への情報発信をしたりすることをお手伝いできると思います。
たとえば、10人でやっている小さな金型工場だけど、この分野ではすごい技術を持っているという会社があるとします。しかし、いかに「この分野ではすごい」と言ってもその会社がこれから最新のコンピュータ設備を入れて、それを駆使できる技術バリバリの人や英語バリバリの人を雇って世界に打って出るというのは、非常に難しい。そういう企業が再生できるビジネスモデルを作って行こうという
のが、ぼくらの狙いです。 |
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竹中
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いつ頃から、そんなことを考えていたんですか。 |
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成毛
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もう1年以上前からです。先ほどのネパールの話ではありませんけど、へそ曲がりですから、人のやっていることはやりたくないんです。
インターネットの世界ではバカ儲けしている会社がすでにいっぱいありますから、そういうのと同じことをやっても絶対に勝てない。いまからそういう会社相手のベンチャーキャピタルをやってもソフトバンクの孫さんに勝てる見込みはまずない(笑)。
じゃあ、そういう人たちがやらないことをやってナンバーワンになろうと。誰もやってないことをやる限りにおいては、必ずナンバーワンになれるわけですよね(笑)。 |
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竹中
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プロップの始まりも、まさにそうでした。そういうところで気が合ったんでしょうかね(笑)。 |
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成毛
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お互い、誰もやらないことをやって没落しないようにしましょうね(笑)。「あんなこと始めたけど・・・・・・」 |
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竹中
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「やっぱりダメだった」なんてことにならないように(笑)
そうならないように頑張って行きますので、どうか今後ともご支援をよろしくお願いします。今日は本当にありがとうございました。 |
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(text 中和正彦)
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