竹中
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早く始めたと言えば、マイクロソフトに入った全盲の天才・細田和也君がいます。彼はこの春から、地域の視覚障害者にパソコンを教えるボランティアを始めたそうです。彼が言うには、自分はマイクロソフトでアクセシビリティ技術を担当させてもらって、技術者としての満足感を得ることができた。ところが、だんだん製品が実際に使われている現場のことが見えなくなった。そこでボランティアを始めたということです。で、やってみて、「自分が技術者として会社の仕事でやれること以外に、まだまだこういうボランタ
リーな活動で埋めなければならない部分があるなあと感じた」と言っていました。 |
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成毛
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それはNPOでやるべきか、会社でやるべきかという問題はありますね。会社でやるというのは、細田さんが自分で会社を興してやるということも含めて、視覚障害者の方からきちんとお金をいただいてやっていくという道もあるかも知れないと思うんです。また、地域特性や障害の特性に合わせてやるということにかけてはNPOのほうが効率がいいんですけど、全国的に展開していくということにかけては会社のほうが早いです。だか
ら、NPOと企業がどれだけ連携できるかという問題もあると思います。 |
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竹中
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成毛さんは早くからNPOの役割に目を向けられていましたよね。 |
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成毛
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これまでは、国が皆から税金を集めて必要なところに再配分するというシステムでやってきました。ところが、各省庁バラバラにものごとを考えていて、しかも複雑化しているので、どこにどれだけ配分すれば一番平等になるか、わからなくなってしまっています。同時に「もっと政府の役割を小さく」という時代の要請もあります。そんな中で、政府にも企業にもできないことの受け皿になるのが、NPOだと思います。
それに合わせて、再配分のシステムも変える必要があります。たとえば、400万円税金を払っていた人は、それを200万円にしてもらって、もう200万円は自分が支援したいNPOに寄付するというような形にしたらいい。そうすれば、もう少し住みやすい世の中になると思うんですけどね。 |
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竹中
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そうですね。いま中央省庁の縦割りの話が出ましたけど、プロップの活動はまさにそれに直面してきました。「重度のチャレンジドが」というと、まずは厚生省の話なんですけど、「パソコンを使って」と言えば通産省の話になり、「ネットワークで」と言えば郵政省の話になり、「納税者に」と言えば大蔵省の話になる。そういう活動をしているので、どこに「あんたらはウチの管轄だからね」と言われても困るんです。
だから、企業や個人に、いままで税金として納めていたお金の一部を「こういう目的のためにプロップに」といって出してもらえるようになったら、とてもありがたいです。そういう形で、いろいろなNPOが出てくればいいと思います。日本はまだ、欧米に比べてNPOが社会のニーズに応えている規模が小さいと思います。 |
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成毛
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それと、欧米ではNPOをもっと広い意味で補えていますよね。学校や病院はもとより、町内会みたいな組織もそうです。たとえば、カナダのカルガリー市の話があります。カルガリー五輪の時にできたボランティア団体が、その後もいろいろ町おこし活動を続けて、その結果、カルガリー市の経済成長率はカナダの中でトップクラスになっているんです。観光収入が上がっていますし、なにより市民が前向きになっているんですよね。 |
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竹中
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プロップも前向きにやっていきますので、今後ともよろしくお願いいたします。今日は、ありがとうございました。 |
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