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SOHO・月刊CYBIZ(1999年11月号)より転載 |
会社にいたらできなかった SOHO新"仕事人"大集合!! 身体の障害を乗り越え SOHOだから私はできた! |
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寝たきり宣告をはねつけ、ゼロから始めて"大黒柱"に
どんなことをしても妻を養う! サーバー環境を自分で構築できるまで、まだまだスキルUPするぞ
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一時の絶望から立ち直ったのは 妻とパソコンに出会ったおかげ |
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19歳で交通事故にあい、頸椎損傷によって第一種一級という重度の障害者になった山崎博史さん。現在はプログラマーやパソコンセミナーの講師として活躍している。 中学卒業後は暴走族のリーダー。全力でつっぱった少年は大人になるのも早く、17歳で"族"をやめ、電気工事・建築関係の会社に勤める。しかし、2年後、運転中に信号無視の車を避けて信号機に衝突して、「一生寝たきり」の宣言を受けた。自殺を考えた一瞬もあったという。 そんな山崎さんの転機は25歳のとき。妻となる景子さんとの出会いだった。「同じ中学で同学年。お互いに顔だけは知っていた程度」だったが、再会した2人は結婚を考える仲に。最初は妻の実家に反対されたが、山崎さんが仕事をするという条件でOKが出る。28歳のときだった。 ちょうどその頃、ラジオで社会福祉法人プロップ・ステーション(略称プロップ)が行う、障害者自立のためのパソコンセミナーの案内を聞き、山崎さんはすぐに電話を。出会った当時をプロップ理事長の竹中ナミさんはこう振り返る。 「山ちゃんは、何をしてでもお金を稼いで家庭を持ちたいという強い意思を持っていました。おそらく、彼にはパソコンの仕事以外に、希望をかなえる道はなかった。彼の偉かったところはその現実を受け入れ、ゼロからパソコンに食いついていったことです」 セミナー1週目はキーボードの配列につまずいたが、2週目には完璧。3週目には、50万円のパソコン一式を購入した。仕事に使えるスキルを必ず身につける覚悟だった。そして、半年の初級セミナーを終え、プログラムを学ぶ上級セミナーへ。 「内容の濃い実践的な授業でした。作業内容を説明するプレゼンの仕方まで練習するんです」 宿題を忘れると授業が中止されるほど、期限や約束を守るなど、社会人としての基本姿勢も厳しく叩きこまれたという。 受講し始めて1年半後に修了。その後手がけた貿易会社の在庫管理システムで、初めてプログラマーとしての収入、20万円を得た。「これでやっていけるな」と寿司の出前を取って家族で祝ったそうだ。 |
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体験をもとにセミナーを工夫。 当面の目標は収入の波の安定化 |
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プロップはパソコンと通信環境を活用して、「チャレンジド(challenged: 障害を持つ人を表す新しい米語から)」の自立と社会参画。就労の促進を目的に活躍している団体。山崎さんも、プロップがコーディネートするプロジェクトに次々と関わっている。とはいえ、SOHOを始めて5年の中で1年近くは仕事がなく、貯金で食いつないだこともある。 「入ったお金を、一度に全部返済に当てたりしないで、将来を考えながら、生活資金の計画を立てるようになりました」 最近は、高齢者やリハビリ中の障害者にも使いやすい「人にやさしいパソコンを提供するプロジェクト」に参加。データ作成、サーバー管理、電話サポート、ユーザー向けのセミナーなどを引き受けている。週に1度は、大阪府羽曳野市主催の障害者・高齢者向けのWindowsセミナーの講師も務め、「お年寄りなどはパソコンを持っていない人がほとんど。毎週、最初から全部おさらいにならないように、何を教えるか絞り込むのに気を配っています」と、ゼロから学んだ自身の体験が講師の仕事に生かされている。 「曲がりなりにも経済的自立を果たし、夫婦の生活を支えられるようになったのは大きな自信です」 まだ収入の波が大きいので、当面の目標は安定した収入を得ること。 「そのためには、当たり前のことですが、受けた仕事をまず完璧にこなすこと。仕事相手との連携も大切ですね」 今後の仕事の課題は、「ちょっとしたプログラムもサーバー環境で使うことが前提になってきていますから、環境を自分で構築できるくらいにならないと仕事を取れない。まだまだ勉強ばっかりです」。 気負うことなく、スキルと実績を積み上げていく毎日だ。 |
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「いざ!」に備えて、先輩のコツをいただき!! SOHOだから、この仕事ができた! ベッドで皮膚を休めながら、仕事の段取りも |
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打ち合わせやセミナーで外出もするが、「ふだんは家で仕事をしているので、自己管理が大変」と山崎さん。「まず実績ありき」のSOHOの身ゆえ、ついつい根をつめてしまうことが多いが、車椅子にすわったままでは皮膚によくない。だから、基本的に午前中と夕食後は同じ部屋のベッドで体を横にし、常に椅子に接する皮膚を休めるのが日課だ。 |
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