障害者のためのもう1つのイベント |
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パソコン・ボランティア・
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チャレンジド・ジャパン・フォーラムのなかでも、「障害者とネットワーク」について考えるイベントがある。日本障害者協議会が主催する「パソコン・ボランティア・カンファレンス」である。3月15日から16日にかけて開催されたこの会議では、「パソコン・ボランティアと障害者電子ネットワークの挑戦」をテーマに、草の根で活動している障害者支援組織の講演やパネルディスカッションなどが行われた。
●草の根の非営利組織が集う場
チャレンジド・ジャパン・フォーラムは障害者のネットワークのなかでもとりわけ「就労」をテーマとした課題で展開している。これに対してパソコン・ボランティア・カンファレンス(PVC)は、障害者がネットワークを使うまでの「アプローチ」の部分も議論されているのが特徴だ。そのために、まず障害者が「パソコンを使う」ために必要な入力デバイスについての問題点まで議論された。
また、チャレンジド・ジャパン・フォーラムではプロップ・ステーションという大きな非営利組織が中心になってその事例を発表していたのに対して、PVCは各地の草の根の障害者支援団体が多数集まって、事例を紹介している。
●バラエティーに富んだ併設イベント
さまざまな催しが併催されているのもこのイベントの特徴だ。ネットワーク利用に関する総合相談センターやパソコン通信紹介ブース、障害者向けの入力デバイスを紹介するアクセシビリティーブース、福祉機器作りが体験できる工作ブースなど、実に多彩である。インターネットの体験コーナーもあった。
●さまざまな会議が開かれた
会場では日本筋ジストロフィー協会の矢澤健司氏、障害者就労支援組織「Cybird」の東北大学の坂爪新一氏、高齢者・障害者の立場でマルチメディアを考える会の大島真理子女史、神奈川県総合リハビリテーションセンターの伊藤英一氏が、BBSの紹介や政策提言などをテーマに、講演を行った。また、記念シンポジウムとして横浜市総合リハビリテーションセンター企画研究室係長の畠山卓郎氏、ニフティサーブ障害者フォーラムの青木与志夫氏、ピープル福祉工作クラブの関根千佳女史、ルーテル学院大学の清原慶子教授、日本障害者協会の薗部英夫氏によって、「パソコン・ボランティアの挑戦」と題して、障害者の現状とネットワークの可能性について議論された。
現在では、ネットワークと障害者についてもっとも大きな団体はプロップ・ステーションだと言えるが、各地の支援団体の動きも、このようなイベントを通してこれから盛り上がっていくだろう。
インターネットは障害者の可能性を広げる |
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チャレンジド・ジャパン・フォーラムのように、障害者のネットワーク利用をテーマとしたイベントはまだ少ないのが現状だ。今回の同フォーラムでは初めての一般公開であり、ネットワークを利用してどのように収入を得るのかということが具体的に議論された。そのうえでは、大変大きな第一歩だと言える。
前ページの阪本さんのように「コンピュータをまだ使えない人にいかに使ってもらうか」という問題に関しては、確かにほとんど触れていない。ただ障害者が実際に壇上に立って「このような収入の方法があるのだ」という道筋を示したのは画期的であると言ってよい。まだ本当にネットワークを使った就労の現場という事例は少ない。だからこそ、このような事例を、イベントを通じて広めることに意味がある。
今回のフォーラムで、障害者をとりまく環境は、コンピュータネットワークで確実に変わってきたということが実感できた。ただ、障害者とネットワークとのつながりのおいて、考えなければいけないことはまだ多い。障害の種類もいろいろあるし、障害の度合いも人によってさまざまだ。語られるべきことは、まだたくさん残っている。
たとえば、今回のフォーラムではインターネットがコミュニケーションの道具として有効かどうかという話はなかったが、家から出るのが困難な人にとって、情報を入手したり友人と語ったりするためのツールとして、インターネットは有効だろう。就労の側面もそうだが、インターネットの「いながらにして」いろいろなことができるというメリットは、障害者が社会に参加するうえで大きな武器となるに違いない。
プロップ・ステーション
問い合わせ
TEL 06-881-0041
URL http://www.prop.or.jp/
(今回のフォーラムに関する情報は7月末現在掲載していないが、いずれ掲載される予定)