高齢者や障害者らが、情報技術(IT)を使って街中を不自由なく移動できるようにする「自律移動支援プロジェクト」の本格的な実証実験が、4月から神戸市で始まる。事業を推進している国土交通省は「10年後には社会に定着させたい」としており、ユニバーサル社会の実現を後押しする動きとして注目を集めそうだ。
このプロジェクトでは、道路や電柱、住所表示板など街角の様々な場所に、大量の情報を蓄積した「ICタグ」を貼り付け、利用者がタグに近づくと、専用の携帯端末がエリア情報などを音声などで提供するシステムを作る。
実験では、三宮駅とポートアイランドを結ぶ道路や繁華街など計3万箇所にICタグを貼り付けた上で、外国人や障害者などから利用希望者を募集し、携帯端末を貸し出す。車いすの利用者らにも携帯端末を使ってもらい、その感想などをもとに、さらにシステムの改良を進める。事業費は約6600万円。
このシステムを使えば、目の不自由な人や外国人に限らず、地図などがなくても、携帯端末を使って、目的地まで行けるようになる。飲食店やデパートの営業時間や特売の情報、周辺の観光情報のほか、将来は、災害地の避難場所の情報なども簡単に手に入るようになるという。
本格的な実証実験に先立ち、国土交通省は昨年3月、有職者らでつくるプロジェクト推進委員会(委員長=坂村健・東大大学院教授)を設立。昨年9月には、神戸市でプレ実験を行い、端末の作動状況などを確認した。
推進委員会には、IT関連企業を中心に約60社と23の自治体がサポーターとして参加、産学官連携で実用化に取り組む体制が整った。
同省は関心を持つ自治体と連携し、2006年度以降、全国各地で実用化したい考えだ。