challenged分科会レポート


第4回Challenged分科会

日時  1995年4月25日

場所  読売コンピュータスクール

テーマ 通信ネットワークを活用したchallengedの就労への道

講師  丹直利 日本障害者雇用促進協会
        障害者職業総合センター研究員


 丹さんとプロップとは、1993年に竹中と坂上が日本障害者雇用促進協会・障害者職業総合センターを訪問して、FLANKER.No7で紹介させていただいたなど、数年来のおつきあい。
その後、1993年に同センターがインターネット接続し、インターネットを利用しての障害者の就労について研究されておられるそうです。現在は、センターの情報をインターネットで発進できるように準備を進めています。

*インターネットと障害者雇用

  インターネットは、通勤の困難な重度障害者の就労の機会を増やす可能性がありますが、現状では、電話代が高く、コストがかかりすぎるのが問題です。ただ、このコストが安くなる可能性があり(注1)、国の政策としても在宅勤務を進めている部分があります(注2)。


注1 日本電信電話(NTT)はマルチメディア時代をにらんで、コンピューター通信専用の独立した公衆回線網を96年末までに構築する方針を決めた。費用のかかさむ交換機を使わない接続方式を採用することで、距離や時間にかかわりない新しい通信料金での利用が可能となる。

注2 「重度の視覚障害者、脳性マヒ者等雇用に就くことがとくに困難な重度障害者については、自営業を含めその職業的自立を図ることが重要であり、職域の拡大、職業能力開発、障害者に対する相談等の施策の充実に努める。
また、重度障害者である短時間労働者の身体障害者雇用率制度等における特例措置の事業主への周知を図るとともに、在宅勤務、フレックスタイム制等多様な勤務形態による雇用促進を図るための施策の充実を図る。

 また、第三セクター方式による重度障害者雇用企業の育成や重度障害者多数雇用事業所の設置促進を行うこと等により、重度障害者の雇用の場の確保を進める
。また、これと併せて、授産施設等の入居者がその能力に応じて、一般の雇用の場に就労することを促進するため、職業リハビリテーションネットワークの整備等を図る。

 さらに、障害者の高齢化に対処するため、加齢に伴う職業能力の変化等に関する調査研究に努めるとともに、高齢化によって職業能力の低下がとくに懸念される重度障害者について、そのニーズに応じた勤務形態の工夫等により職業の安定が図られるよう施策の充実を図る」(障害者雇用対策基本方針より)
「重度障害者については勤務形態において配慮を図ることがその雇用の促進に効果的であることから、短時間勤務、在宅勤務、フレックスタイム制等の多様な勤務形態の活用を図る」(障害者対策に関する新長期計画より)


*センターの接続の状況

  センターのインターネットは千葉大学に専用回線で接続されています。回線使用料は月4万円、接続に必要な機器であるルータは、両端で300万円でしたが、今では20万円弱になっています。研究の中で情報発信をしてみる予定ですが、職業安定所以外が職業紹介をすることは法律で規制されているため、職業紹介情報を発進することは難しいです(注3)。


注3 「公共職業安定所は、障害者の雇用を促進するため、障害者の求職に関する情報を収集し、事業主に対して該当情報の提供、障害者の雇入れの勧奨等を行うとともに、その内容が障害者の能力に適合する求人の開拓に努めるものとする。」(障害者の雇用の促進等に関する法律より)


 ここで会場では、実際にインターネットにアクセスしてみました。

*インターネットの問題点

  実際にインターネットを仕事に使うとなると、盗聴が問題になってきます。つまり、会社の機密データが盗まれる可能性があるのです。
ただこれは、通常の電話にもあてはまることではあります。また、違法な画像をやり取りするなどの、違法行為が出てきています。
また、日本に関して言えば、インターネットがアジアの発展途上国に急速に普及してきているので、情報発進のアジアの核が、日本ではなく、他のアジアの国になる可能性があります。とくに、英語圏の国では、アメリカなど、他の国々と英語で直接情報交換ができるので、日本語の壁のある日本より容易にインターネットを普及することができます。しかし反面、国境を超えての就労の可能性もあります。

 インターネットを紹介したビデオ(テレビCM)の上映です。日本とアメリカの子供たちがインターネットで交流している姿がなかなか微笑ましいです。

*在宅勤務の例−山崎さん

  実際にコンピュータを使って在宅勤務を行っているプロップの山崎さんの紹介です。山崎さんは、1年半前からプロップでデータベースの勉強を始め、その知識を生かして学校管理データベース、貿易会社のデータベース作成の仕事を行いました。
受注などの注文主とのやり取りも通信でできるようになれば、通信だけで仕事を完成させることも可能です。なお、山崎さんについては、「人クローズアップ」で詳しく紹介していますので、そちらもご覧ください。

 最後にプロップ顧問: 中野秀男先生(大阪市立大学教授)から、プロップのインターネット接続についての現状報告があり、閉会となりました。


第5回Challenged分科会

日時  1995年7月4日

場所  読売コンピュータスクール

テーマ challengedネットワーキングの未来像その3

        インターネットの扉を開けよう!

講師  中野秀男 大阪市立大学教授 学術情報総合センター準備室

デモ  小船隆一 三菱電機・市民コンピュータ研究会(JCA)


 「プロップ・ネットの話題から」でも紹介していますように、いよいよプロップ・ネットでインターネット・メールが使えるようになりました。
今回のchallenged分科会では、これを記念して、日本のインターネットの第一人者であり、プロップの顧問でもある中野秀男先生に、「インターネットとは何か?」を、分かりやすくお話していただくと共に、JCAの小船隆一さんに、プロップ・ネットでインターネット・メールの交換する様子をデモンストレーションしていただきました。

*インターネットとは?

  インターネットとは、ドメインと呼ばれる組織をつなぐネットワークです。
現在ドメインは世界に8万以上あり、今回、プロップもこのドメインの一つとしてネットワークに加わったわけです。インターネットの接続されたコンピュータなら、世界中のどのコンピュータとアクセスできるわけですが、これはどういう仕組になっているのでしょうか。

例えば、プロップ・ネットからインターネット・メールを送る場合、利用者はプロップ・ネットのホスト局にアクセスするだけです。
そこから先はどうなっているのでしょうか。プロップ・ネットの場合は、ここからプロップ内にあるUNIXマシンに接続されており、このマシンがさらに関西ネットワーク相互接続協会(WINC)にあるマシンに接続されています。このネットワークがさらに続いており、世界中のマシンにアクセスできるわけです。

 ドメインには、ドメイン名が与えられます。プロップの場合は、prop.or.jpです。一番最後のjpは、日本を表わし、その前のorの部分は組織の種類を表わし、

・ad 計算機ネットワーク管理組織
・ac 学術機関
・co 企業
・go 政府機関
・or 団体

という意味があります。
その前のpropがプロップを表わします。その前に個人の名前と@がついて、個人を識別します。
個人の名前は世界中に自分を紹介する「顔」になりますので、慎重に決めたほうがいいです。
私は、男性は名字、女性は名前を付けることをお薦めします。

*インターネット接続の種類

  インターネット接続には、いくつかの種類があり、それぞれ受けられるサービスや料金が違います。以下にそれぞれと、比較の意味でパソコン通信を加えて表にして紹介します。

*インターネットが拓く社会

  最近は電話器も多機能になり、いろいろなことができるようになってきました。
しかしインターネットは計算機を介するので、もっといろいろなことができます。持ち運びできる端末器があれば、歩きながら電子メールを読んだり、仕事をすることもできるようになるかもしれません。インターネットを通じて会話すると、参加する人の好きな時間に話ができますし、距離を感じることもありません。

 また、いろんなモノをインターネットにつなぐと、生活がかなり変わってきます。
現在すでにアメリカでは、自動販売器をインターネットに接続して、個々の自動販売器の在庫を管理しています。いちいち人が自動販売器を見に行かなくてもいいのです。
冷蔵庫にインターネットを接続すれば、冷蔵庫の中味を見て、足りないものをその場ですぐにインターネットから注文することもできます
。車にインターネットを接続することも外国の自動車メーカーで考えられています。心臓のペースメーカーをインターネットに接続して、病院に情報を届けるようにすることも可能です。

 インターネットが生活の中に入り込んでくると、流通も変わってくるでしょう。
インターネットで本を買う場合、始めは最初の部分だけの料金を払ってテキストを送ってもらい、続きが読みたければ、その分の料金を追加して払って読む、というような形態になるかもしれません。

*デモンストレーション

  続いて小船さんによるプロップ・ネットのインターネット・メールの交換のデモンストレーションが行われました。
まずこちらから3人の方にインターネット・メールを送りました。ともに今回のデモのために会場に持ってきたパソコンからUNIXマシンにメールが送られ、UNIXマシンからWINCに電話回線を通じてメールが送られます。

このUNIXマシンは、プロップ・ネットのインターネット・メール・サービスが実際に行われるときは、プロップ・ネットのホスト局の隣に設置されるものです。
また、UNIXマシンからは、実際に運用されるときは1時間に1度自動的にWINCに電話をかけますが、今回は手動で電話をかけています。つなぎっぱなしにできると便利なのですが、電話代がかなりかかります。

 さて、メールを送った相手から返事が来るまでの間に、WWWを使ってWINCにあるFLANKERのホームページを覗いてみました。
FLANKERの表紙がパソコンの画面に現われた瞬間には、画面を覗き込んでいた会場の皆さんから歓声が起こりました。また、その後で質疑応答も行われました。

 分科会の終了直前に圓尾さんから返事のメールが届き、インターネット・メールのやり取りをできたところで、終了となりました。


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