リレーエッセイ 「チャレンジドの夢」

 杉本 睦子さんの場合

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杉本さんカット「Challenged Art展について」(その1)

 バーチャル工房発足のきっかけとなった、Challenged Art展(昨年10月開催)の作品制作にまつわる思い出を、2回連載で書いてみたいと思います。
 “Challenged Art展”、、、テーマが‘Challenged’に決まりみんなで話しあっているうちに、私には雪解けの中で花が一輪咲いている情景が浮かんでいました。“雪が解けかけているとはいっても雪の中を割って出てくるのって大変だろうなぁ”そう考えているうちに、何か私達に似ているかもしれないと思いはじめました。“雪を社会の壁”、“花を障害者”にみたて、そして、花だって土や水や太陽,その他いろいろなものによって生かされている、私達も人の優しさなどがなければ、きっと生きてこれなかったと思いだし、それらを妖精に擬人化して描いていこうと構想は決まったのですが、今まで絵などそんなに描いたことがなかったので、作品展を開くと聞いたときには私にも作品展に出展するような絵が描けるにだろうかと正直不安になりました。でも、やってみないとわからないせっかく与えられたチャンスだし、やってみてできなければあきらめればいいやという気持ちで描きはじめました。
 まずは、妖精の下絵探しからはじめました。私の想像した妖精がなかなかなくて、思ったとおりの絵がすいすい描けたらと何度思ったかわかりません。本屋や文房具店,ファンシーショップなどを何軒もまわり、やっとみつけたのは、かわいい羽と輪をもった天使の絵でした。その天使をトレースして、輪を触角にかえ、羽も鳥のようなものから、まるく妖精に見えるようにかえました。でも、みなさん初めて見ると天使に見えるみたいです。そして、グラデーションや輪っかなどをつけて何種類か妖精をつくりました。次に花ですが、これは楕円ツールやペンツールなどを組み合わせてつくりました。これにもちょっとしたエピソードがあります。初め雪の中から花が出ている写真をスキャンして、それにできた妖精を合成させようと安易に考えていたのですが、持っていった写真は、本のカットだったので、画質が汚いので無理といわれ、全部自分で描くことになりました。それから一番苦労した雪解けの背景です。都会育ちであまり雪を触ったことがない私の中に雪はフワフワしていてすぐに解けてしまうという固定観念があり、雲か霧にしか見えないものばかり描いていました。みなさんが次々と作品を仕上げていくなかで、私1人だけが取り残されたようになり、うさぎなどを描いてみたりしたのですが、どうしても雪には見えませんでした。それで今バーチャル工房のリーダーであり絵本作家を目指しているくぼりえさんに相談すると快く雪の描き方を教えて下さり、やっと完成したのでした。

つづく

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