作成日 1998年12月吉日

 

日本の皆様へ

サムハルAB 代表取締役       

イェルハルド・ラーション

 サムハルは、1980年に創立され、現在28のグループ会社と32,000人の従業員を擁するスウェーデンで最も大きい企業グループのひとつに成長しました。親会社であるサムハルABは、スウェーデン王国が所有する政府直営の企業です。サムハルの経営コンセプトは、職に就く上でハンディの有る人々に対し、意義のある、職業として雇用の機会を提供することにあります。

 これは市場に受け入れられる商品を製造し、サービスを提供することによってなし遂げられるものです。 サムハルの目標の一つに、障害を持つ人々のために一般的な労働市場における仕事を見つけるということがあります。この点で、サムハルは世界でもユニークな企業であるといえましょう。

 サムハルは、今発展の第三段階に至り、四つの企業グループに基づく、多面性のある組織母体となっています。この新しい組織が、将来的にサムハルの取引先に対するビジネスの適応能力の武器となるでしょう。 サムハルは自然と、リハビリテーションと職場への適応といった分野では長く確かな経験を持つようになりました。今サムハルは、このノウハウを外の世界とわかちあうことができるのです。端的にいうと、サムハルは経営コンセプトをビジネスコンセプトにしてきたということです。私たちは、慢性疾病を持つ人々へのリハビリテーションサービスや、障害を持つ人々のニーズに合うよう職場を適合させるための情報を提供しています。

 当グループの取引先の殆どは、スウェーデンの企業です。 サムハルはイケア、IBM、エレクトロラックス、エリクソン、ABB、ボルボ等の企業と取引のあるスウェーデンで最も大きい下請け企業なのです。又、サムハルオリジナル商品も開発しておりスウェーデン国内だけでなく国外でも販売しています。例えば介護機器、家具、スポーツ用品を近隣のヨーロッパ諸国の他、アメリカ、日本に向けても輸出しています。

 輸出額は総販売額の20パーセントに達しており、今後も一層輸出を増加させるよう努力してまいります。

 当グループは又、サービス業においても発展してきており、将来的にも沢山の雇用の機会を望むことができます。今日グループの従業員のうち20パーセント以上がサービス業に従事しています。サムハルのビジネスの中でも最も急速に成長している分野です。

 サムハルは、品質を向上させるための努力によって発展してきました。すべての従業員は高品質な商品、サービスを提供できるよう広範なトレーニングを受けています。それによって満足のいく結果が得られており、サムハルグループの幾つかの工場はISO(INTERNATIONAL STANDARIZATION ORGANIZATION・国際規格委員会) 9002によって承認を得ています。

 90年代においてもこういった努力を続けて参ります。

 ご覧のようにサムハルは、製造業、サービス業といった多くのビジネスエリアにおいてプロフェッショナルに活動する変化に富んだ企業です。それに加えて、サムハルは別の興味深いコンセプトも持っています。他の企業の為にライセンス契約ベースでの生産も行っているのです。この解決策によって、ヨーロッパ以外の企業が、昨今、最も重要なポイントである市場統合の動きのあるヨーロッパの市場と直接コンタクトできるようになるのです。

 日本企業との間も家具などいくつかの分野で大きな成功をおさめております。

 又、現在日本代表事務所を通じて、サムハルを多方面よりサポートして頂く為に、サムハルサポーティンググループ(SSG)の設立を企画しております。それらの活動を通じ、サムハルグループの代表者と致しまして、日本企業・社会と我々グループの関係が多方面に渡って実り多き関係が深まる事を心より願ってやみません。
 



 
拡大するハンディキャッパー
ソサエティー日本

 ● 身障者の雇用

 労働省の身体障害者実態調査(1987年)によると、日本の身体障害者(18才以上)の数は、241万8,000人と推定されています。これは、18才以上の人口千人比で26.7人、すなわち千人のうち約27人が身体上に何らかの障害を持っていることになります。

 身体障害者の数は、医学の進歩と反比例して年々増加しており、1980年の調査の197万7,000人に対し、22.1パーセントの増加を示しています。

 労働省の身体障害者など雇用実態調査によると、雇用されている身体障害者数は、33万4,000人となっており、全身障者のわずか13.8パーセントにすぎません。

 身体障害者雇用促進法によると、従業員63人以上の民間企業は、従業員の1.6パーセントは身障者を雇用することが義務づけられており、また、事業主に対し、各種の助成措置も施されています。しかし、現状では、行政指導の甘さ、また、事業主から見ると会社の利益に直結しない身障者のための設備投資の困難さなどから、雇用は促進されているとは言えません。

 このような状況を打破し、身障者が平等に雇用機会を与えられる社会を築き上げていくことは、現在の日本人の課題であると考えられます。
 
 

● 急速な老齢化

日本に於ける老齢化は急速に進んでおり、2010年には65才以上の人口が20パーセントを越える状況になると予想されております。

 老齢化社会も広義な意味でのハンディキャッパー社会になるという方向性は間違いのない事と思われます。
 
 

● 急増する外国人労働者

外国人労働者は急速に増え続けており、不正労働者迄含めますと30万人を越える数であります。

 益々の国際化する社会の中で日本の労働市場を外国人という文化的、言葉的、技術能力的に日本で就労にハンディのある人々への対応が社会としても企業としても求められる時代となってきております。

 以上のような状況は今後の日本社会の中で益々顕著になっていくものと思われます。

 しかし、残念ながらこの状況に対する施策はまだ充分とはいえないのが現状です。


 

サムハルグループ日本代表の挨拶

サムハルグループ日本代表  

西 野   弘

 日本にサムハルグループの代表事務所としての業務が開始されてから9年になります。そして、私共がこの業務を初代の方から引き継いでちょうど5年になります。

 サムハルグループとしては、設立当初より海外の有力企業との関係樹立に重きを置いてきました。それは単に、サムハルと海外の企業とのビジネスの上での関係だけでなく、福祉先進国と言われて久しいスウェーデンに於ける身障者雇用の新しい試みを海外に知ってもらう事も大きな目的の一つでした。

 高度な成長を遂げてきた欧米各国及び日本も、大きな転換期の中で低成長の時代に対応する為の新しい社会及び企業のシステムの構築が求められています。

 日本も例外でなくバブル経済崩壊後の社会・企業・個人の次世紀に向かっての新しい在り方が求められていると思います。特に日本は、人口も多く高齢化も急速に進むなか社会生活に於ける何らかのハンデを負った方々に対する個人・企業・社会の認識が不充分なのが現状であります。

 サムハルはその設立において真に社会のあらゆる層の方々の賛同と協力を得て正に官民が一体となって設立をした世界でも希有な企業体であります。
 それはまた、新しい挑戦でもあり、ハンデを真正面からとらえたなかで企業として、世界に通用する商品とサービスを目指して、内に籠もる発想でなく大きく社会へ飛躍する企業として現在に至っております。

 日本に於ける活動も、色々な方々の協力と努力が実り、年々その関係が深まって参りました。また、今回、チャレンジド・ジャパン・フォーラム国際会議でサムハルのご紹介ができることをたいへんうれしく思います。

 最後に私ども代表事務所と致しまして、サムハルグループにご興味を持って頂けたことをこの場をおかりして感謝致しますと共に、これを機に何か新しい関係が生まれますことを祈念して挨拶とさせて頂きます。

 



 

スペインで活躍するONCE

 
レポート:森口堅二郎

 
ONCE:National Organization of the Spanish Blind Organization
     Nacional de Ciegos Espanole ・
    http://www.once.es

 

1.ONCEとは

 ONCEの主なゴールは、全盲の人、視力障害のある人すべてを統合し、彼らが一個人として一般社会において自主性を得ることを手助けすることである。このゴールを達成するために、約50,000人以上の会員に対して、ONCEはほとんどが無償に近い多くの援助を引き続き行っています。

 この中には、基本的な視覚のリハビリから経済的な援助、彼らが文化、スポーツに親しむことができるための特別な教育並びに就職の増進などが含まれます。これらの社会的サービスが存在しなければならない必要性があります。

 ONCEは、1938年に設立し、社会奉仕の改善、身体障害者の雇用促進の中でのリーダーとしての活躍、福祉国家としての役割などについて、最近著しい改革を成し遂げています。

 会員により運営されているONCEは、スペインにおいての宝くじ事業で安定した地位を維持しており、収入は経済的、ならびに社会的な利益を生み出すために、企業へ投資をいろいろと行っています。また、連帯というポリシーで、他の障害者の集団が遭遇しているあらゆる困難の排除や、雇用促進のためのONCE財団の活動ができるように資金を提供しています。
 
 

2.ONCEの援助活動

・Social Services(社会サービス)

ONCEは公共機関が一般的に行っているもの以上に、特別なサービスを提供しています。我々のサービスは、障害者の組織としてはユニークな個人が不可欠であるという基本理念が基礎となっています。
 
 

3.ONCEの組織

ONCEの組織は、基本的なサービスを行うセンターが33ヵ所あり、これらがネットワークし、11の特別なセンターとあわせて、約50,000人の会員に対応できるようになっています。

 ONCE管理本部は、会員に対して Social Services 部門をもっており、これらの活動に対して1,100名の個別なプロが従事しています。
 
 

4.ONCEの予算(1996年)

(単位:百万ペセタ=80万円)
収 入  
クーポン(宝くじ)収入
412,137 (3,300億円)
その他収入
  26,047 (   208億円)
総計 
438,184 (3,508億円)
支 出  
賞金分 
203,965 (1,632億円)
宣伝及び制作費 
  13,927 (   111億円)
人件費(社会保障を含む) 
134,736 (1,078億円)
設備投資及び償却費
  18,461 (   148億円)
組織代理店等の運営管理費 
    2,940 (     23億円)
社会サービス事業 
  64,155 (   513億円)
*社会サービス事業予算   
ONCE財団 
  12,358 (     99億円)
教育活動
    8,622 (     69億円)
職業訓練及びリハビリ 
    4,255 (     34億円)
技術機器に関する活動
    7,565 (     60億円)
文化・レクリエーション活動
    4,452 (     36億円)
宣伝啓蒙
    2,968 (     24億円)

 
 
 
 

5.メンバーシップとなる条件

 次のような条件が満たしている全盲、視力障害者は、ONCEのメンバーになることができる。

・条文8 第一の条件は、スペインの国籍を有する者で、ONCEの会員になることを望むもので、ONCEが認可した検眼医の検査の結果、両眼ともに視力回復が不可能であるという確かな診断があること。

a) 視力矯正をしても、視力が0.1または、それ以下(ウェカー測定による)

b) 視角が10度以下のもの

・会費は無料。 会員になりたい場合、300のONCEセンターで受け付けられ、情報、相談など、現在受けられるサービスの内容について相談することができる。
 
 

6.会員(1995年12月現在)

男性 26,336名  女性 23,959名
 
 

7.クーポン事業

ONCEの社会的な事業として行っており、ONCEを象徴するものとなっている。

 クーポン(宝くじ)の販売員として、21,398人(内ONCEメンバーが14,492人、その他の障害者が6,906人)となっている。 スペインの宝くじ市場のうち、ONCEのクーポンは10.5%を占めている。

 このクーポンの販売で得た全収入の中から約半分は賞金として確保し、25%は運営経費とし、20%は社会サービス事業費、3%がONCE財団の活動資金にあてられ他の障害者援助に使われている。
 
 

8.ONCEの組織

政府の法律によってONCEは設立されており、組織としては民主的な手続きによって運営がなされている。

 ジェネラル・カウンシル、17の地域カウンシル、国内の各自治区に一つずつのカウンシルがある。

 ジェネラル・カウンシル(総本部)のもとに、ONCEは3つの運営本部で構成されている。
 

 
 

9.ONCEの歴史
1938年12月13日 ONCE誕生。
1939年10月28日 ブローブラインド・クーポンの発売を内務省が許可。
1981年5月22日 ONCEの民主的な選挙が行われる。政府がONCEに対して、独占販売権を与える。
1984年   クーポンの市場調査を開始。
1985年12月27日 "Big decree 偉大な法令"として知られるローヤル法令2385/85の公布。
1988年 ONCE Foundation 設立。 
1991年3月15日 ローヤル法令3588/91で、ONCEに運営面を委託。

  


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