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読売新聞 2006年8月16日より転載

 

4年ぶり労作 「幸せ贈りたい」

 
 

難病と闘い2作目の絵本

 
 

枚方・くぼりえさん「およぎたいゆきだるま」

 

くぼりえさんの写真
新たな創作に挑むくぼさん(枚方市の自宅で)

 全身の筋肉が委縮する難病「ウェルドニッヒ・ホフマン病」と闘いながら、絵本を描き続ける枚方市在住の絵本作家、くぼりえさん(31)が、4年ぶりの新作「およぎたいゆきだるま」(ひさかたチャイルド、24ページ、1260円)を発表した。首から下の筋力がほとんどないため、体をコルセットで支え、筆を持つ右手の指先を少しずつ動かしながら描いた労作。くぼさんは「これまでも長い時間をかけながら描いてきたから、苦にはならない。年齢や障害の有無に関係なく、読んで幸せになれる作品をどんどん描いていきたい」と話している。

 

 くぼさんは、生後間もなく発症。絵本好きは子どものころからで、短大卒業後の1995年6月から、障害者の自立支援をしている福祉団体主催のパソコン教室でグラフィックデザインを学んだ。99年には絵本作家を養成する京都の塾を半年間通った努力家だ。

  2002年9月、車いすの少女がお母さんの誕生日祝いにケーキを作る様子を描いた「バースデーケーキができたよ!」でデビュー。読んだ子どもたちからは、車いすを特別視せず、楽しいストーリーに共感する声が寄せられた。

  以降も積極的に作品を描き、今回が2作目となる。冬のある日、幼い姉と弟が作った雪だるまが突然動きだし、「海水浴に行きたい」と涙を落とすと、一面が夏の海となり、一緒に海へ潜っていくという物語。

  原体験は小学3年の沖縄旅行だった。テレビに映る真っ青な海を見て「入浴剤で色をつけている」と言うくぼさんに、両親が「本物の海を見せたい」と計画。父に抱えられながら見た、色とりどりの魚が生き生きと泳ぐ海中の光景を作品に描いた。

  くぼさんは「1作目の時より、楽しい気持ちを素直に表現できるようになった。絵本を通して自分の可能性をもっと広げたい」と創作意欲を燃やしている。

 




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