[up] [next] [previous]
  

OLマニュアル 2005年1月号より転載

 

「不運の種」が「幸運の花」を咲かせる!

 
 

竹中ナミの「ラッキーウーマン」への道

 
 

VOL1 マイナスをプラスに変えよう!

 

プロップ・ステーション代表 竹中ナミ

竹中ナミの写真

●たけなか なみ
24歳の時、重症心身障害児の長女を授かったことから障害児医療・福祉・教育を独学する。平成3年、就労支援活動「プロップ・ステーション」を創設。「チャレンジド(障害者)を納税者にできる日本!」をスローガンに活動を開始。軽快な関西弁トークと「苔が五重に生えた」心臓を武器に、チャレンジドが誇りをもって働ける社会を目指して、政官学業へ独自の人的ネットワークを広げつつ活動を推進。[近況]最近、幼いチャレンジドのご両親が揃って相談に来られることが増えました。30年前には「障害児が居ることを家族の恥」とするような「文化」が厳然とあったことを思うと、時代の変化をとても嬉しく思うと同時に、若いご両親が「チャレンジドが活躍できることが当たり前の日本」を創っていく原動力になると確信するナミねぇです。

 


娘は障害をもって生まれた

 私は今、プロップ・ステーションという団体で、チャレンジド(障害をもつ人)がコンピュータ技術を使って就労できる環境を作るべく、日々奮闘しています。「チャレンジド」というのは最近の米語で「神から挑戦という課題、あるいはチャンスを与えられた人」を意味します。

 私がこの活動を始めたのは、娘に重度の脳障害があったことがきっかけでした。
 30年ほど前、医者から宣告された時は、娘に障害があるとどう大変なのかよくわかりませんでした。私の周りにはそういう障害のある人はいませんでしたし、今のように情報もありませんでしたから、具体的なイメージが掴めにくかったのです。また、私には娘にとって兄にあたる息子もいてその子は普通に育っていましたから、よけいにピンとこなかったのでしょう。

 これは大変なことなんだ、と自覚したのは父に娘の話をした時です。父は「この子を連れて死んだる。この子がいてはお前が不幸になる」といったのです。父にそこまでいわれて、世間が障害をもって生まれた子供を育てることをいかに大変だと思っているのかが、初めてわかりました。

 当時は、授かった子供に障害があるとわかったとたん、子供を連れて病院の屋上から飛び降りる母親がけっこういたそうです。普通だったらたしかに子供の障害という問題を受け入れたり、乗り越えたりするのに相当な時間がかかるのでしょう。しかし私の場合、ひと言でも泣き言をいおうものなら父親が本当に死ぬかもしれない。父にそんなことをさせないためにも、娘の障害を受け入れ、楽しく暮らさなければならないと思ったのでした。

 

マイナスこそプラスの種

 もう一つ、いつまでもクヨクヨしていてはいけない、と思った理由があります。それは、障害という世間ではマイナスだと思われていることに私がこだわり、娘の存在をマイナスだと思ってしまったら娘は悲しむに違いない、と思ったからです。

 皆さんが自分の親から「お前は生まれてこないほうが良かった」などといわれたら、どうでしょう。私だったら、辛くて辛くて、きっと耐えられません。ですから自分の大切な家族のことは、どんな状況でもプラスだと思わなければならない。「思いたい」ではなく、「思わなければならない」のです。

 マイナスをプラスに変えていこう−そういう目線で物事を見るようにしたとたん、私の生き方は変わりました。どこまでプラスに転じることができるかはわからない。でもそういうスタンスに立つことが、生きるうえではとても大切なことだと実感したのです。

 実際に、私は娘の障害について、娘はただ単に成長のスピードが遅いだけだと考えるようにしました。息子が1歳でできたことが、娘は10歳になってできる。人間というのは、じつにいろいろなスピードで成長するんだ、そんな風にプラスに考えるようにしたのです。これをマイナスの見方をすると、「これができない」「あれができない」ダメダメダメ…となってしまう。

 プラスの見方をしてスピードの問題として捉えると、早いスピードなのか遅いスピードなのか、それはもう価値の問題ではないんですね。個性の違い、存在の違いになるのです。

 世間で「これが正常」とされていることも、人々のものさしの範囲内にあるというだけのこと。幅が狭ければそこから外れた人はみんな異常になりますが、広ければどうでしょう。つまり、自分たちがどれだけ幅の広いものさしをもてるかが問われているのであって、娘の障害が問われているのではない。このことが、プラスの見方をすることによってわかったのです。

 今の日本は、嫌なことや元気がなくなることが多いけれど、ものの見方一つだと思います。それを教えてくれたのは娘。次回からもう少し詳しくお話ししていきます。

 

タカハシカズエさんのイラスト



プロップのトップページへ

TOPページへ